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2020年10月01日(木) サーキュラーエコノミー

サーキュラーエコノミーへの道のりを再考する【第2回】

 本稿の第1回目では、世界がサーキュラーエコノミーから遠ざかっているという現状を紹介した。第2回目の今回は、サーキュラーエコノミーにおける6つの課題について紹介する。

 

<供給の壁>

 市場の供給側を見てみると、従来のリニア型経済と比べサーキュラーエコノミーには複雑な要素がある。

 

ハードル1.「負の外部性」に価格付けがされない
 資源の採掘と使用には大気汚染や生物多様性の損失などの環境コストが発生する。このような環境に与える影響は現在の市場に取り入れられていないため「外部性」とされ、価格に反映されていない。環境の視点では、サーキュラーエコノミーと同じくバージン素材よりもリサイクルされた素材のほうがよいとされるが、この外部性が考慮されない限り、バージン素材を使用するほうが費用は安くなる。これによりサーキュラーエコノミーは従来のリニア型に比べ競争上不利な立場にある。

 

ハードル2.取引・運営コストが高い
 製品を消費者に販売した場合、消費者から製造者へ戻されるまでのバリューチェーン上で取引コストがかかる。取引コストには、製品の追跡、それを取りまとめるための適したパートナー探し、リバースロジスティクス(消費者から製造者への製品の物流)の管理、契約交渉などが含まれる。また、再利用やリサイクル活動の拡大はそれだけの労働力も必要となり、収集、選別、処分品の処理などの運営コストも高くなる。バリューチェーンが国際化している場合はなおさら複雑でコストも更に高くなる。このためバリューチェーン内、またはバリューチェーン間でサーキュラーエコノミーのための新たな連携や仕組みづくりができない状態にある。

 

ハードル3.市場規模が小さい
 サーキュラーエコノミーが機能するためには二次資源と中古製品の市場が必要となる。しかし需要・供給ともに不十分なためこのようなサーキュラー市場は現状ほとんど存在しない。サーキュラー製品に対する潜在的な需要はあるものの、知識不足やバリューチェーン上の連携の欠落により供給ができないことが理由の一つにある。また、サーキュラーエコノミーの重要な牽引力となる消費者からの需要が少ないことも大きな理由だ。


サーキュラービジネスモデル

 ここで、INGの報告書で適用されている5つのサーキュラービジネスモデルを簡単に説明する。従来のリニア型経済ではトランザクションと費用効率が主な利益の要因であったが、サーキュラーエコノミーでは新しいビジネスモデルが必要となる。

 

① 再生型サプライ:使い捨てに代わり、繰り返し再生し続ける100%再生/リサイクル可能、あるいは生物分解可能な原材料を用いるビジネスモデル。

② 回収とリサイクル:製品や副産物を資源やエネルギーに活用し、これまで廃棄物となっていたものを価値に変えるビジネスモデル。

③ 製品寿命の延長:製品を回収し再販、修理、改良などすることで、寿命を延長するビジネスモデル。

④ シェアリング・プラットフォーム:利用者(個人や企業)による製品の貸し借りや共有によって、より効率的な製品の利用を可能にするビジネスモデル。

⑤ サービスとしての製品(Product as a Service/PaaS): 顧客へ販売するのではなく、製品を利用してもらうビジネスモデル。製品の所有権は企業にあり、顧客はリースや、都度払いにより利用する。

 


<融資の壁>

 市場経済の供給の壁に加え、サーキュラービジネスモデルへの融資を妨げる金融市場の壁がある。

 

ハードル4.イノベーションリスク
 従来のビジネスモデルと比べ、サーキュラービジネスモデルはこれまでの実績がないため将来の利益を見込むのが難しい。このサーキュラーエコノミーの革新的な性質が投資のリスクを上げている。

 

ハードル5.見落とされがちなリニア型経済のリスク
 金融機関はサーキュラー型の融資や投資と比較してリニア型のリスクを十分に考慮していない場合がある。例えば座礁資産リスクや環境に関する規制強化リスクなど、サーキュラービジネスにはないリスクがリニア型経済にはある。しかし金融機関は短期的な利益にばかり注目してしまい、この重要な長期的リスクを見落とし、サーキュラービジネスへの投資を避けるケースがある。

 

ハードル6.PaaS(サービスとしての製品)モデルのリスク
 前述したサーキュラービジネスモデルの一つであるPaaSビジネスモデルでは、製品ではなくその機能性(サービス)を売っている。よって所有権はそのサービスを提供するサプライヤーにあり、消費者は製品をリースや使用料を通して利用する。このPaaSモデルは、前項の<供給の壁>にあるハードル2と3の解決策にもなる。

  • 製品の所有はPaaSビジネスによって一元化されているため、製品の追跡にかかるコストが減り、結果、サーキュラー戦略の取引コストが低くなる(ハードル2)。
  • PaaSビジネスモデルでは製品を所有しているのは製造者自身なので、予め製品の回収モデルが作られている。サーキュラー市場が存在しない理由がバリューチェーン上の連携(コーディネート)の欠落であるならば、その回収モデルに沿うことでPaaSビジネスが自然とコーディネーターの役割となり、市場を開くことができる(ハードル3)。

 しかしPaaSビジネスモデルは4つのエリアで従来型の販売モデルよりリスクが高くなる。

 

a. 使用リスクが高い
 製品やサービスの利用率が想定や従来の販売モデルよりも低い場合。PaaSビジネスモデルは、事業によって生み出す期待キャッシュフローが長期に拡散されているので投資回収期間が長期となる。通常PaaSでは、製品やサービスの契約期間は資産投資の回収にかかる期間よりも短く、利用者との契約が更新される保証はないので、将来のキャッシュフローの不確実性のレベルも高まる。

 

b. 担保価値が低い
 PaaSモデルの流動性リスクは高く、販売型のモデルに比べ担保価値が低い。PaaSモデルの主な資産は消費者へリースしたものであり、これが金融機関にとっての担保となる。しかし金融機関はリースされた資産に直接アクセスできないことから、担保価値は限られてくる。資産が以下のような場合、担保価値はより一層低くなる。

 i)比較的低価格で分散されるもの。リース品が低価格かつ大量に出回るような商品の場合は、資産の回収にコストがかかってしまう。

 ii)社会的必要性があるもの。融資先が倒産した場合でも、例えばその資産が生命維持のために必要である場合には、社会的圧力により資産の押収がしにくくなる。

 iii)法律により、自動的に所有権の帰属が変わる場合(付合)。例えばオフィスの天井につける照明はビルの一部とみなされ、適切な契約を結ばなければ照明の所有権はビルの所有者に属することとなる。

 

c. 信用リスクが高い
 PaaSビジネスは倒産や不払いなどで融資の回収ができなくなるという信用リスクが高い。製品をより利用しやすくするために、サプライヤーは顧客に一括で支払ってもらうよりも少額を定期的に支払ってもらうことで利用を続けてもらう。しかしこの方式をとることで、支払いを怠る可能性のある消費者がより利用するようになる(逆選択という)。

 

d. モラルハザードリスクが高い
 従来型の販売であれば、製品を売った段階で消費者に所有権がわたりモラルハザードリスクはなくなる。しかし顧客が商品の所有者でない場合、自分のものでないことから商品を雑に取り扱いがちになるというモラルハザードリスクが起こる。

 

 以上、サーキュラーエコノミーへの移行を阻む、市場の供給側における6つのハードルを紹介した。この課題をクリアするためには政策的介入が必要となってくる。次回はその政策について紹介する。

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