サーキュラーエコノミー

ホーム>カーボン&サーキュラーポータル>サーキュラーエコノミー>プラスチックオフセットのポイント

2021年06月18日 (金)
サーキュラーエコノミー
解説

プラスチックオフセットのポイント

プラスチックオフセットは、カーボンオフセットに続く新たな環境金融商品として、英米を中心に活発化の兆しを見せている。
本稿では、そのプラスチックオフセットについて解説する。

 

プラスチックオフセットとは何か

プラスチックオフセットとは、カーボンオフセットと同様に、プラスチッククレジットを購入するか、プラスチック廃棄物を扱う団体や環境プロジェクトに直接資金を提供することによって、企業(もしくは消費者)がプラスチック消費を相殺または補償できるというシステムである。

 

基本的な相殺方法の概要は、以下のとおりである。

 

はじめに、企業のプラスチック廃棄物の総量を価値に換算する。この計算方法は、プラスチックオフセットのプロバイダーが提供している。通常、PETやポリプロピレン(PP)などの価値の高いプラスチックはリサイクルに回され、そのまま廃棄されることは少ない。しかし、ビニール袋や包装用プラスチック等の安価なものは、リサイクル価値がほとんどなく、リサイクルされずに廃棄されることが多い。この廃棄分を、価値に換算する。仮に廃棄するプラスチックの量が10トンでその価値を10万円とした場合、この10万円を相殺(オフセット)する、ということになる。

具体的な相殺は、発展途上国などでプラスチックを回収するプログラムやイニシアチブ、あるいは水路や海洋へのプラスチック流出を防ぐためのインフラ整備を行うプログラムやイニシアチブへ投資することによって行う。または、上記のプログラムやイニシアチブに対して部分的に資金を提供し、相殺したいプラスチック価値に対するクレジット(債権)を購入する方法が一般的なものである。

 

企業は、10トンのプラスチック廃棄物を出しその価値が10万円に相当する場合、10万円分のクレジットを購入することで、「プラスチックニュートラル」と宣言することができる。現時点では、回収されたプラスチックの価値の妥当性を保証する国際的な統一基準はないが、各プロバイダーが各々の基準で計算したものを提供している。この点は問題点でもあり、後述する。

 

実際に発生および回収したプラスチックの量で相殺するのではなく、発生したのとは別の場所で行われているプラスチック回収プログラムへの投資やクレジットの購入により、自身が廃棄したプラスチックの価値を相殺する手法であり、スキームとしてはカーボンオフセットと類似のものといえる。
クレジットの購入方法はいくつかあるが、企業活動によって廃棄されるプラスチックの量や廃棄の頻度によって、年単位、あるいは月単位でクレジットを購入する場合が多い。

上記のようなクレジットを購入することで、企業はプラスチックニュートラルとなり、提供する製品やサービスは「プラスチックニュートラル」なものとしてラベリングできる、ということになる。

 

しかし、実際に発展途上国で回収された投棄プラスチックが、ケミカルリサイクルによって再生材となるのは一部であり、多くは燃料やその他の用途に使われる。そのため、埋立処分と自然界への投棄を減らす目的では相殺されるが、再生材までリサイクルすることが必須条件とはなっていないのがこのスキームであり、プロバイダーもその点は説明している。

代表的なプロバイダーには、アメリカ・ニューヨークを拠点とするRePurposeとワシントンDCのVerra、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のPlastic Collectiveなどがある。


現在のプラスチックオフセットの問題点

現在のプラスチックオフセットの最大の問題点は、カーボンオフセットと異なり、オフセットのための統一された「基準」がなく、標準化がなされていないということである。

企業によるプラスチックの消費量や価値の測定にも統一基準がなく、現状は様々な方法で行われている。各プロバイダーが独自に評価・算定した上でクレジットを販売し、「プラスチックニュートラル」の保証をしており、完全に公正な評価が行われているとはいえないのが実態である。

この問題に対し、上記プロバイダーのうちVerraは、認証のための会計およびクレジット基準を合理化することを目的とした、プラスチック廃棄物削減基準を設定している。
また、IUCN (国際自然保護連合) は、さまざまなプラスチックフットプリントのレビューに基づき、プラスチックフットプリントの標準化ツールの開発を進めていると報じられている。


プラスチックオフセットは成功するのか

プラスチックオフセットのプログラムは2-3年前から提供がはじまった新しい金融商品である。今は初期段階で、実際の普及率も明確な数値が示されたものはない。そのため、今後の普及には懐疑的な見方もある。

しかし、温室効果ガス排出(Carbon Emission)の先物価格が急激に上昇しはじめた2018年頃からカーボンオフセット向けのプログラム(プロジェクト)が急増し、現在は新たなプログラムが相次いで欧米のプロバイダー企業で企画されていることから、プラスチック規制に対応するコストが増した場合には、このスキームは選択肢の1つとなると見られている。

 

背景にあるのは、厳しさを増すプラスチックに対する規制である。
欧州ではいくつかの欧州指令により、使い捨てプラスチックの禁止やプラスチック包装材料へのリサイクル材の利用、さらに将来のプラスチック包装税がすでに決められている。


アメリカでも、州によって欧州指令と同じような規制を課す所が増えている。
アメリカでは連邦議会にThe Break Free From Plastic Pollution Actが再提出され、プラスチックに対する連邦レベルでの規制強化が検討されている。(この詳細については、本サイトの4月21日の記事をご参照ください。)

昨年、米ニューヨークを拠点とする海洋投棄プラスチック削減を主事業とした「サーキュレートイニシアチブ (The Circulate Initiative: TCI)」 が、 現在ある32 のプラスチックオフセットの基準、認定、そしてクレジットプログラムを調査し、それぞれの長所と短所を評価した。
その上で、現在のプログラムがクレジット購入企業によるプラスチック戦略の目標達成に役立つかどうかを評価している。(詳細については、下記のリンクをご参照ください。)

 

解説
プラスチックオフセット市場にはクレジットの認証方法に関する市場全体または国際的な基準 がまだないため、グリーンウォッシングを助長し易いとの批判がある。また、プラスチックのリサイクルや削減を推進する本来の規制目的を、クレジット購入によって解決する点への批判も多い。

ただし、企業が現在予定されている規制に対応するためには、短期間に多額のコスト負担が必要であり、さらに、プラスチックのリサイクルや代替材料の技術開発には現在進行形のものが多く、プラスチックオフセットは短期的な解決策として選択肢の1つとなると考えられている。

一方で、プラスチックオフセットのプロバイダー企業もプログラムの実施母体も、金融商品開発に優れた英米を主体とした企業がほぼ独占しており、その点でも問題が多いと言える。

 

Carbon Emissionの取引価格が急上昇している現在、カーボンオフセットの新たな商品開発とプログラムの実施が活況を呈しているように、プラスチックオフセットも規制の進捗と共に大きな市場になる可能性を秘めている。


【参考資料】
The Circular Initiativeによるレポート「A Sea of Plastics Claims and Credits: Steering Stakeholders Towards Impact」

RePurpose社

Plastic Collective社

Verra社

Verra社によるプラスチッククレジットの説明

RECOMMEND