サーキュラーエコノミー

ホーム>カーボン&サーキュラーポータル>サーキュラーエコノミー>世界のリチウムイオン電池リサイクル産業の最新動向

2022年03月11日 (金)
EV
解説

世界のリチウムイオン電池リサイクル産業の最新動向

本稿では欧米で過去3ヶ月間に発表された主なリチウムイオン電池(以下、LIB)のリサイクルの計画について紹介する。


Market Research Future(MRFR)が2021年6月に発行したLIBリサイクル市場の予測レポートによると、世界のLIBリサイクル市場は、2030年までの平均年間成長率が21.43%にも達するとされており、原材料の不足を補いサーキュラ―エコノミーに関する各種規制に対応するため、各社ともリサイクルへの投資が活発になっている。

 

<本稿で紹介する企業>

  • Veolia(フランス)
  • Asend Elements(アメリカ)
  • American Manganese(カナダ)
  • Li-Cycle(カナダ)
  • Redwood Materials(アメリカ)
  • Umicore(ベルギー)
  • Stena Recycling(スウェーデン)
  • Daimler(ドイツ)
  • Britishvolt(イギリス)
 
各社の動向(2021年11月末~2022年2月末)

 

  •  Veolia(フランス) 

廃棄物管理の世界的な大手企業であるフランスのVeoliaは、英国で自動車用LIBのリサイクル工場を設立することを2022年1月10日に発表した。計画は英国Veoliaによるもので、2022年第3四半期に小規模でテスト稼働、2024年には処理能力を年間1,000トンにまで伸ばす予定である。
Veoliaは、化学メーカーのSolvay、自動車メーカーのRenaultとの提携をフランス国内で発表しており、英国でのLIBリサイクル事業進出の理由は、2024年に英国で発生する自動車用LIB廃棄物が年間5,000トンに達するとの予測が出ているためである。

Veolia to build EV battery recycling plant in UK's West Midlands(S&P Global Commodity Insights)

 

  •  Ascend Elements(アメリカ)

米国の新興企業であるAscend Elements(旧:Battery Resourcers)は、北米で最大規模のLIBのリサイクル工場を設立する計画を2022年1月5日に発表している。工場はジョージア州で開設するもので、投資額は4300万ドル(約45億円)にのぼり、2022年8月に操業を開始する予定である。同社の特徴は、同社が特許を取得している「Hydro-to-Cathode™」という工程により、前駆体とカソード活物質を生産することである。同社は元々、米国マサチューセッツ州のウースター工科大学の研究員が設立した会社で、すでに10年の歴史を持つ。同社は2023年に前駆体とカソード活性材料の生産施設を建設する拡張戦略を発表しており、これらの拡張のために既に9000万ドル(約105億円)を調達している。同社の主要株主の1社は英国のJaguar Land Rover(親会社はインドのTataグループ)で、すでに北米Hondaとカソード材料の提供に関して契約を結んでいる。本格的な商業利用に乗り出すため、Li-CycleやAmerican Manganese(後述)のように、上場して一気に資金を調達し拡大するタイミングが2022年になりそうである。

Battery Resourcers Earns a Place on the '2022 Global Cleantech 100 List'(Ascend Elements)
Ascend Elementsウェブサイト

 

  • American Manganese(カナダ)

カナダの独立系企業であるAmerican Manganeseは、カナダのベンチャーキャピタル市場から米国のナスダックに上場、資産規模を20倍以上、キャッシュを10倍以上にし、商業施設に着工している。同社はLIBに特化した湿式製錬の会社で、昨年度の収支は1300万ドル(約15億円)の赤字だが、資金は世界のお金が集まる米国メジャー市場であるナスダックを通じて調達している。2022年2月時点で、同社の技術である「RecycLiCo™」による実証プラントの整備を進めているほか、イタリアの電気自動車向け新興バッテリーセルメーカーのItavolt SpAと業務提携を結び、同社がイタリアのスカルマーニョに建設予定のギガファクトリーに併設した商業プラントの開発を計画している。また、2021年には韓国、日本、インド、カナダ(許可通知)で特許を取得している。

American Manganeseウェブサイト

 

  • Li-Cycle(カナダ)

カナダ最大のLIBリサイクル会社であるLi-Cycleは、2021年8月にNY証券取引所に上場した。獲得した資金を活用して一気に拠点を3倍増する計画も発表しており、欧州でのウェビナーや政府系会議でも盛んに講演し、プレゼンスを強めている。2022年1月には、ノルウェーでの工場設立や米国オハイオ州のUltium Cells(米国GMとLG化学の合弁会社)のLIB製造工場に併設するリサイクル工場(BM※1製造工場)の設立を発表した。同時期に公開した四半期報告書によると、売上が前年同期の50万ドルから440万ドルに大幅に増加しているものの、純損失も、前年同期の約440万ドルに対し、約2億500万ドルと大幅に増加している。これは、事業の拡大に伴う人件費とネットワーク開発費の増加、さらに上場に関わる費用の増加、としている。売上も440万ドルに大幅に増加してはいるが、リサイクルサービスからの収益は約10万ドルと、まだまだ事業として収益を上げる段階にはないようである。それでも、オフテイク契約による量とネットワークの確保に膨大な資金を投入しなければ、この事業で先頭に立てない、ということが示されている。
※1 Black Mass:コバルトやニッケルを含む濃縮滓

Li-Cycle Holdings Corp. Reports Financial Results for Fourth Quarter and Full Year 2021; Significant Progress in Advancing Spoke and Hub Network Strategy(Li-Cycle)

 

  • Redwood Materials(アメリカ)

元Teslaの幹部が設立した米国のLIBリサイクル新興企業であるRedwood Materialsは、欧州への進出を2022年2月4日に発表している。欧州に少なくとも2工場を設立する計画で、投資額は明確にされていないが、今後数年間で数十億ユーロ(数千億円)と伝えられている。具体的な場所は決まっていないが、候補としてはスカンジナビア半島、イギリス、東ヨーロッパ、もしくはドイツとなっている。米国では、Teslaのギガファクトリーに隣接する地区でのリサイクル工場の設立計画がすでに進んでいる。また、同社はカリフォルニア州でFordとVolvoと協業して廃棄LIB、廃棄ニッケル水素(NiMH)電池を回収することも2月17日に発表している。同社はリサイクル工場をネバダ州に設立予定だが、カリフォルニア州で、自動車ディーラーや解体業者とも直接連携する予定である。

Redwood Materials creates the first pathways for end-of-life electric vehicles; kicks off in California(Redwood Materials)
Redwood Materials Expands into Europe(Redwood Materials)

 

  • Umicore(ベルギー)

ベルギーのUmicoreは、フランスのAutomotive Cells Co.(ACC)とLIBリサイクルについての契約を締結したことを2022年2月11日に発表している。ACCは、フランスの石油化学会社Totalの子会社で、バッテリー技術開発企業のSaft、新興のモビリティー企業であるStellantis、自動車メーカーのOpelの3社によるベンチャー企業である。契約内容は、Umicoreが開発した次世代リサイクル技術をACCのフランスのパイロット工場で利用するものである。
Umicoreの次世代最新リサイクル技術については、以下が報告されている。

- コバルト、ニッケル、銅の抽出効率が向上。95%以上の回収率
- リチウムの大部分を回収する初の技術
- 搬送・輸送の自動化による手作業の最小化。工程の堅牢性と効率の向上


同技術は、2022年中には導入される予定である。Umicoreは、2011年よりすでにLIBリサイクルに取り組んでおり、同技術は次世代の新技術であると伝えている。また、同社は2月16日に2021年の決算を発表しており、Energy&Surface Technologies事業での電気自動車向けカソード材料の販売量の増加、さらにリサイクル部門により、大幅な収益増となった。リサイクル部門は2020年すでに過去最高レベルの収益を出していたが、それを上回る結果となっている。リサイクル部門は、引き続き2022年も強力なパフォーマンスを発揮する予定であることが述べられている。

Umicore introduces new generation Li-ion battery recycling technologies and announces award with ACC(ACC)
Full Year Results 2021(Umicore)

 

  • Stena Recycling(スウェーデン)

スウェーデンの廃棄物管理およびリサイクル企業であるStena Recyclingは、スウェーデン南部の港町であるハルムスタッド市に新たにLIBのリサイクル工場を設立し、スウェーデンのエネルギー庁から約770万ドル(約9億円)の支援を受けることが2022年2月9日に発表されている。新工場の処理能力は年間約10,000トンで、EV用だけでなく、その他の用途のLIBもリサイクルする予定である。また、バッテリーを収集する「バッテリーセンター」を欧州域内の各地に設立する予定となっている。この投資は、2025年以降に徐々に施行される予定の欧州電池指令※2に対応することが目的であると伝えられている。
※2 改正欧州電池指令では、2027年にはリサイクル材料の含有率やカーボンフットプリントの情報開示が義務化される。

The Swedish Energy Agency Supports Stena Recycling's Major Investment In Battery Recycling(Stena Recycling)

 

 
自動車メーカー、電池メーカーがLIBリサイクルに取り組む事例


欧州ではLIBリサイクルを専門とする独立系企業は資金確保の問題から規模拡大が難しく、OEMメーカーであるMercedes、Volkswagen、Renaultは自社で、LIBメーカーであるNorthvoltも自社でLIBリサイクルに取り組むことを発表している。自動車メーカーそのものがリサイクル会社を設立するということは、材料確保と新たに法制度が変わる欧州電池指令を見込んだものと推測できる。

 

  • Daimler(ドイツ)

計画段階として伝わっているが、ドイツの大手トラックメーカーであるDaimlerは自社と子会社のMercedesのためのLIBリサイクル工場の建設を行う予定である。工場はフランスとの国境沿いのクッペンハイム市に建設予定で、稼働は2023年を予定している。このリサイクル工場(新会社)は、Licular GmbHという名称で、Daimler Truck AGとMercedes-benz AGが50%ずつ出資する。Volkswagenに続き、自動車メーカーが本格的なLIBのリサイクルに進出し、さらに専門の独立会社を設立するという方針である。ただし、Daimlerはこの新会社の活動範囲の詳細を明らかにしていない。

Daimler battery recycling plant to be in Kuppenheim(electrive.com)

 

  • Britishvolt(イギリス)

英国の新興LIBメーカーであるBritishvoltは出資者であるGlencoreと共同で、LIBのリサイクル工場を設立することを2022年2月3日に発表している。場所はイングランド南東部のノースフリート(ケント)で、将来的には再生可能エネルギーを100%使用し、2023年半ばまでに稼働する予定である。このリサイクル工場はGlencoreが所有する金属採掘会社、Britannia Refined Metalsの施設内に設備を入れる形で設立される。処理能力は、年間最低10,000トンとなる。製品バッテリーを作るギガファクトリーは、イングランド北東部のブライス地区で現在建設が進められている。

Britishvolt and strategic partner Glencore strengthen relationship and agree to build battery recycling ecosystem in the UK(Britishvolt)
Britishvolt and Glencore to build plant capable of recycling lithium-ion batteries(The Guradian)

 

今後さらなる拡大が見込まれるLIBリサイクル産業市場でのポジション確保のため、リサイクル企業は自動車メーカー、電池メーカー、電池材料メーカー、化学メーカーらとの提携を模索する。新規参入したリサイクル企業の多くは、ギガファクトリー計画を持つ電池メーカーらと提携し、工場ができる前にLIBの確保に動いたり、提携した電池メーカーのギガファクトリーに自らのリサイクル工場を併設したりする事例も少なくない。自動車メーカーや電池メーカーが自ら大規模なLIBリサイクル事業を始める例もある。2022年もLIBリサイクル産業の動きから目が離せない。

RECOMMEND