サーキュラーエコノミー

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2021年05月10日 (月)
サーキュラーエコノミー
解説

企業におけるサーキュラーエコノミー戦略策定と成功のポイント

企業がサーキュラーエコノミーで成功するためには、具体的な戦略項目、数値目標、ロードマップ、そしてそれらを定期的に公表する報告書の作成が不可欠となる。ただし、具体的に何を行えば良いのか明確な「ガイドライン」が存在せず、迷うことも多いのが現実ではないだろうか。仮に、ある企業が個別にロードマップや数値のコミットメントを設定しても、独自の戦略では対外的にも国際的にもあまり訴求力がない。

 

サーキュラーエコノミーには、マネージメントシステムのISOや国際会計基準のIFRSのような分野別のスタンダードが、現時点では存在しない。そのため、具体的な評価基準も分からず、対外的な訴求力を得る方法も曖昧な状況である。
しかし、特に欧米を中心に、サーキュラーエコノミーにも構築されつつあるデファクトスタンダードがある。本稿では、その中でも最も取り組みが進んでいるプラスチックのサーキュラーエコノミーを取り上げる。

 

エレン・マッカーサー財団の「New Plastics Economy Initiative」

現在欧米でプラスチックのサーキュラーエコノミーのデファクトスタンダードとなりつつあるものは、英エレン・マッカーサー財団の「ニュー・プラスチック・エコノミー・イニシアチブ(以下、New Plastics Economy Initiative)」である。

エレン・マッカーサー財団は様々な環境関連のイニシアチブを提唱しているが、 New Plastics Economy Initiative は世界的な企業が多数参加することでスタンダードとなりつつあり、現在、世界を代表する450社以上の企業がこのイニシアチブに署名している。

New Plastics Economy Initiative は、欧州政府が2018年1月に発表した、EUサーキュラーエコノミー行動計画の一部である「欧州プラスチック戦略」、その後に続くEU指令2019/904(シングル・ユース・プラスチック指令) 、EU委任規則2020/2174(プラスチック廃棄物出荷EU規則)の制定にも関わっており、利害関係者である企業や業界団体、政策立案者、投資家、NGO、有識者、市民との深い関与を経て、これらの指令や法律に基づき欧州政策と平行して策定された。

 

New Plastics Economy Initiativeには「ニュー・プラスチック・エコノミー・グローバルコミットメント(NEW PLASTICS ECONOMY GLOBAL COMMITMENT)」というガイドラインがあり、ガイドラインの内容はそれらの政策に準拠している。

サーキュラーエコノミーを企業戦略に積極的に取り入れ、成功事例となっている代表的な企業としては、スウェーデンのファッションブランド企業であるH&M Hennes & Mauritz AB、生活用品の世界的大手企業である英ユニリーバ、食品や乳製品の多国籍企業である仏ダノン、家具の世界的大手であるスウェーデンのイケア等が挙げられる。これらの企業は全て、このNew Plastics Economy Initiativeに署名し、ガイドラインに沿った目標やコミットメントとロードマップを公表している。

 

NEW PLASTICS ECONOMY GLOBAL COMMITMENTのうち、企業向けのガイドラインの概要を以下に記す。

 

1. ビジョンを共有する(詳細はガイドラインの付属書Iに規定:下記リンクをご参照ください)。
2. 産業別のコミットメント:
 a  包装品会社、小売業者、外食産業会社:
  i  2025年までに問題のある、又は不要なプラスチック包装を排除するための行動を取る。
  ii  2025年までに、必要に応じて、1回のみの使用から再利用モデルに移行するための措置を講ずる。
  Iii  2025年までに100%のプラスチック包装が再利用可能、リサイクル可能、または堆肥化可能になる措置を講ずる。
  Iv  使用するすべてのプラスチックパッケージ全体で野心的な2025年のリサイクル材料の使用率目標を設定する。
 b  原材料生産者: 2025年のリサイクルプラスチック使用(率)目標を立てる堆堆肥化可能なプラスチック生産者の場合は、持続可能な(堆肥化可能な)プラスチック比率を75%に増やす。いずれの原料も、管理された原料を使用する。
 c  収集、選別、リサイクル業者:2025年のリサイクル/堆肥化されたプラスチックの品質と量の目標を設定する。埋立や焼却されるプラスチック量よりも再生・堆肥化されるプラスチック量の割合を増加させる。
 e  耐久消費財の生産者:生産品における2025年のリサイクルプラスチック使用(率)目標を立てる。
 f  プラスチック業界へのサプライヤー:プラスチック業界の企業が各々のコミットメントを達成するために、サプライヤー自身のコミットメントを設定する。
 g  投資家:プラスチックのサーキュラーエコノミーを推進するために、2025年までに、企業、テクノロジー、その他の資産に有意義な金額を投資する。

3. プラスチックの再利用/リサイクル/堆肥化率向上に向けて協力することを約束する。
4. コミットメント達成に向けた進捗状況、および年次報告をする。


解説
企業のサプライチェーンにおいて、現代の国際社会ではISOの該当認証取得が必須事項であるように、サーキュラーエコノミーにおいても、国際的に認識されているデファクトスタンダードを利用することが必要になっている。

少々残念なことであるが、こうした「ルールブック」は欧米が作るものがほとんどで、日本にやって来る時には、既に国際的な既成事実としてほぼ完成されている。

特にプラスチックのサーキュラーエコノミー戦略は、各企業でのサプライチェーンにも影響が出ることが予測されている。欧州では、既にNew Plastics Economy Initiativeに署名している大手企業が、サプライヤーに対して同等の要求をするケースが増えている。

サーキュラーエコノミーでは、使用する技術の有効性やコストインパクト等、様々な事前調査が必要となる。そのため、まずはデファクトスタンダードをよく理解して、その上で必要条件を満たしていくという手法が望ましいであろう。

 

【参考資料】

エレンマッカーサー財団のニュー・プラスチック・エコノミー・グローバルコミットメント(NEW PLASTICS ECONOMY GLOBAL COMMITMENT)

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