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2022年01月07日 (金)
脱炭素化
解説

米Verraの民間認証クレジットVCSと自主的炭素市場グローバルダイアログの概要

本稿では、世界で最も市場に流通している民間認証クレジットであるVCS(Verified Carbon Standard)を運営管理する米国のNPO「Verra」に焦点を当て、VCSの概要、Verraが支援する自主的炭素市場グローバルダイアログ(Voluntary Carbon Market Global Dialogue)の最終報告書「ビジョン及びアクション・アジェンダ」の内容について紹介する。

 

自主的炭素市場の拡大

世界では、脱炭素の流れを受けて自主的炭素市場が拡大しており、米国の環境NGO「Forest Trends」の最新レポートによると、自主的炭素市場の市場規模は2019年の約1億tCO₂から、2020年には1.88億tCO₂、2021年8月時点では2.39億tCO₂と、急激に拡大している。EU-ETS(EU Emissions Trading System:欧州連合域内排出権取引制度)に代表される規制上の取引には原則として使用できないが、ネットゼロ達成といった目標を掲げ、自社の排出量をオフセット(相殺)してアピールしたい企業が主に購入している。世界の炭素取引市場における取引額のシェアでみると、EU-ETSの88%(2020年)に対して、自主的炭素市場は現在1%(3.2億ドル、2019年)にも満たないが、今後の拡大が見込まれている。TSVCM(Taskforce on Scailing Voluntary Carbon Markets、自主的炭素市場の拡大に関するタスクフォース)の報告書によると、2030年までに現状の最大15倍に、2050年までに最大100倍に拡大するとのシナリオもある。

 

民間認証クレジットVCSの概要

世界で最も市場に流通している民間認証クレジットは米国の国際NPO「Verra」の発行するVCSである。2018年の民間認証クレジットの年間取引量における主要4クレジットのシェアは、VCSが66%、GS(Gold Standard)が20%、CAR(Climate Action Reserve)が3.2%、ACR(American Carbon Registry)が1.6%であった。VCSは2005年に設立された認証基準で、森林や土地利用に関連するプロジェクト(REDD+※1を含む)や、湿地保全による排出削減プロジェクトなど多様なプロジェクトが実施されている。VerraはVCSを含めて7つの認証制度を有している。例えば、地域社会や小規模農家への利益、生物多様性の保全などの付随的な便益を備えたプロジェクトについては、CCB(Climate Community & Biodiversity)プロジェクトとして認証する取り組みをしており、市場での人気も高い。なお、Verraはプラスチック廃棄物ゼロを目指す3R Initiativeとも連携し、プラスチックを管理し削減する枠組みを2021年2月にリリースしている。VCSは現在、カリフォルニア州の排出量取引制度、国際民間航空部門における温暖化対策などでの利用が認められている。

 

Verraが支援する自主的炭素市場グローバルダイアログ

自主的炭素市場を巡るVerraの動きの一つに、「自主的炭素市場グローバルダイアログ(VCMGD)」がある。

VCMGDの目的は、VCMの気候変動対策としての活用のあり方について、開発途上国におけるステークホルダーの共通のビジョンを定め、開発途上国の声をVCMの最適な設計及び展開に関する議論の中心に届けることである。2021年6月~10月にかけて調査チームが350以上のステークホルダーと協議を行い、最終報告書「ビジョン及びアクション・アジェンダ」を作成した。調査チームは、Climate Focus、IRID(Indonesia Research Institute for Decarbonization)、Transforma、South-South-Northなどによって構成される。最終報告書は、「安定した気候、自然への敬意、すべての人々が安全で健康で豊かな生活を送るために保証された権利によって定義される持続可能な未来への移行をVCMによって加速させる」ことをビジョンに掲げ、ネットゼロ排出量を達成するための6つの推奨事項をアクション・アジェンダとしてまとめている。主な内容は以下のとおりである。

 

1. 政府はさらなる気候緩和対策としてVCMを活用できる

  •  政府は国内のVCM関連プロジェクトの状況を把握し、データベースを作るべきである
  • 投資を呼び込むため、セクターあるいは地域に優先順位をつけるべきである
  • 海外からの直接投資を積極的に促進すべきである

 

2. 政府、企業、クレジット制度は明確かつ透明性のあるアカウンティングを促進すべきである

  • クレジットのアカウンティング方法に関する定義と共通認識を構築すべきである
  • 相当調整※2の適用範囲・方法を明らかにすべきである
  • 明確かつ透明性のある気候変動対策に関する報告方法を策定すべきである

 

3.クレジット購入者及び投資家は幅広いベネフィット及び持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を備えたVCMへの投資を優先すべきである

  • クレジット購入者及び投資家はGHG削減の波及効果を生むプロジェクトを優先すべきである
  • SDGsへの貢献が認証されたプロジェクトは、GHG削減を超えたポジティブな社会的・環境的インパクトを持つ可能性が高い
  • SDGsへの高いベネフィットを有するプロジェクトへの先行投資を促進すべきである

 

4.VCMは先住民及び地域コミュニティ(Indigenous Peoples and Local Communities: IPLCs)の権利を強化し、エンパワーすることができる

  • IPLCsが独自の条件でVCMに参加することを承認すべきである
  • 公正なベネフィットの共有を保証すべきである
  • IPLCsの土地及び権利の獲得を促進すべきである

 

5.政府と民間パートナーはセクター及び広域規模でのVCM取引の構築に協力すべきである

  • プログラムレベル及びセクターレベルでのイニシアティブを構築すべきである
  • アカウンティングフレームワークを統合するため、REDD+における戦略である「ネスティング※3」を支援すべきである
  • セクターレベルでのクレジット発行の方法論を構築すべきである

 

6.政府、企業、炭素市場のファシリテーターは地域・国レベルのVCMダイアログを実施すべきである

  • エンゲージメントのためのプラットフォームを構築すべきである
  • 能力向上のためのイベントを開催し、技術的・方法論的なニーズを特定すべきである
  • NDC(国別削減目標)実施に関する知識のギャップを埋めるべきである

 

自主的炭素市場はその取引規模が拡大する半面、クレジットの品質や透明性への疑念も膨らんでいる。クレジットの質を高めるためには、クレジット発行量の算定基準の統一や規格化が必要との意見がある。Verraの動きをウォッチすることで、今後の自主的炭素市場の変化を読み取れるかもしれない。

 

※1 REDD+:途上国が、森林減少・劣化の抑制により温室効果ガス排出量を減少させた場合や、あるいは森林保全により炭素蓄積量を維持、増加させた場合に、先進国が途上国への経済的支援(資金支援等)を実施するメカニズム。一方、支援した先進国も気候変動抑制への貢献が評価される。

※2 相当調整:クレジットを獲得した国が自国の排出量からクレジット量を減算し、クレジットを移転した国が自国の排出量にクレジット量を加算すること。

※3 ネスティング:複数の小規模なプロジェクトを束ねて地域レベルでの活動とする取り組み。


【参考資料】

世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等を取り巻く状況(経済産業省)

カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会(第1回)カーボン・クレジットを巡る動向(みずほリサーチ&テクノロジーズ)

炭素市場エクスプレス ウェブサイト

「張りぼての脱炭素取引 CO₂削減量クレジット過大発行」(日経電子版)

The Voluntary Carbon Market as a Catalyst of Climate Ambition in Developing Countries -Vision and Action Agenda-(VCM Global Dialogue)

Voluntary Carbon Market Global Dialogue ウェブサイト

Verra ホームページ

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