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サーキュラーエコノミー実現の壁となる廃プラの有害化学物質

今年2月、国際汚染物質廃絶ネットワーク(IPEN:有害物質などの汚染物質の排除という共通の目的に特化したNGOの世界的ネットワーク。以下、IPEN)は、各国が安全なプラスチックのサーキュラーエコノミーを実現するにあたり、多くの困難に直面しているとする旨の研究結果を発表した。

この研究によると、多くの国において、多品種かつ大量に発生するプラスチック廃棄物(以下、廃プラ)が必ずしも安全に処理できていないことが判明した。また、商品パッケージなどについては、プラスチック成分の明記を求める法律が不完全なことから、有害化学物質が各国に流入している可能性が高いことが確認された。

上記の研究結果をもとに、IPENは、有害化学物質はサーキュラーエコノミーの実現を阻害し、人々の健康を脅かすことから、すでに世の中に出回っている有害化学物質を含むプラスチックについて、回収の中止を促す公共政策の制定を各国に呼びかけている。同時に、プラスチックメーカーは有害化学物質を含むプラスチック材料の発生源であるため、プラスチックのライフサイクルで発生したすべての結果に対して、経済責任を負うべきであると提言している。

有害化学物質を含む製品の調査について

廃プラの資源循環を促進するため、IPENは前述の研究において、中国、インドネシア、ロシアの3ヶ国における、近年のプラスチック生産量、輸入量、使用量及びその傾向、また、廃棄物を管理するシステムの状況について調査を行った。調査の結果、この3ヶ国では大量の廃プラを安全に処理するために最低限必要な一連の措置は取られているものの、安全面には未だ多くの課題が存在しており、特に、回収する廃プラの中に有害化学物質が含まれていることが、大きな問題の一つであることが分かった。

また、同3ヶ国を含む国々で市場に出回っているプラスチック製品及び合成繊維製品に含まれる有害化学物質について、主に下記3項目に対して研究を行った。下記の製品に有害化学物質が含まれていると推測された理由は、汚れ防止や防水などの機能を強化するためのに添加剤、もしくは、有害な化学添加剤を含む廃プラ製品を回収して製造される再生原料などが使用されているためで、研究は、一般的に注目される化学成分に焦点を当て実施されている。

  1. 中国、インドネシア、ロシアの再生プラスチック製品における臭素系難燃剤(BFR)
  2. 中国、インドネシア、ロシアの衣服に含まれる、「永遠に残る化学物質」と呼ばれるパーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)
  3. バングラデシュ、ブータン、中国、インドネシア、マレーシア、ロシア、スリランカ、タンザニアの哺乳瓶内のビスフェノールA(BPA)

有害化学物質を含む製品が発展途上国に流通してしまう原因

上記の研究により、廃プラをリサイクルすることで、すでに国際的な条約で使用が禁止されている有害化学物質が、廃棄物から新しい製品に移ってしまうことが分かった。しかし、人々の多くはそれらの成分の有害性を理解していないため、知らずのうちに悪影響を受けてしまっていることになる。例えば、今回の研究では、中国、インドネシア、ロシアから集められた73のサンプルが、「ストックホルム条約」で禁止されている臭素系難燃剤(BFR)を含んでいることが分かった。サンプル中に検出された臭素系難燃剤(BFR)は、出所の異なる廃プラから再生プラスチックとして再生産され、おもちゃや髪飾り、オフィス用品、キッチン用品などの製造に用いられている。中国、インドネシア、ロシアでは、臭素系難燃剤(BFR)の使用が法律で禁止されておらず、これらの物質を含む再生プラスチックを生産しており、同時にこれらの物質を含む製品を輸入している。また、そもそもプラスチックを効率的にリサイクルする都合上、一部の臭素化難燃剤には禁止令の免除がある他、廃棄物に含まれる有機汚染物質に関しては、「ストックホルム条約」と「バーゼル条約」に規定されている濃度の制限値も、厳しい値とはいえないという実状がある。こういった事情により、有害化学物質である臭化難燃剤(BFR)はリサイクルされ、新製品にも混入され、汚染物質を含む製品が発展途上国に輸出されているのである。

IPENによる呼びかけ

以上のような現状をふまえ、IPENは主に次のような内容について呼びかけている。

  1. 世界的にプラスチックに関する政策を強化し、プラスチックの必須用途に焦点を当て、商用に使えるプラスチック素材の範囲を限定すること。また、使用量を減らすとともに、新規プラスチック製品における有害化学物質の除去、既存プラスチック製品中の有害化学物質の除去に力を入れ、化学成分の表示を強化すること。
  2. 人々の健康と環境保全のために有害な廃プラの循環を阻止するため、有害化学物質を含む廃プラの回収・利用、燃料としての使用、焼却を禁止すること。
  3. プラスチック税制度やデポジット制度などを通じて、プラスチックメーカーや化学メーカーに対し、製品による社会、経済、環境被害に関する経済責任を負わせること。


サーキュラーエコノミー実現のためには、世界で大量に発生する廃プラの効率的な回収とリサイクル技術が不可欠である。しかし実際には、いかにリサイクルするかだけではなく、上記のように、どのような化学物質が含まれているかについても課題があるのが現状である。人々の健康と環境の保全、双方に配慮した、真のサーキュラーエコノミー実現への道のりは長い。


【参考資料】

报告丨有毒物随“塑料回收”进入循环经济,中国数据不乐观

有機臭素系難燃剤を対象とした製品ライフサイクルにおける 化学物質の挙動と制御に関する研究−中核研究プロジェクト2 「資源性・有害性をもつ物質の循環管理方策の立案と評価」 から−(国立環境研究所)

Plastic Poisons the Circular Economy(IPEN)

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