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中国における廃ゴムタイヤの再生利用の現状

中国は世界一のゴム消費国とゴム輸入国であり、世界最大のゴムタイヤ生産国でもある。中国国家統計局のデータによると、2020年と2021年の中国におけるゴムタイヤの生産量はそれぞれ8.18億本と8.99億本に上った。年間で排出される廃ゴムタイヤの発生量は2000万トンに達する寸前であるにもかかわらず、そのうち、有害物質を含むガスなどを排出しないよう適正な無害化処理がなされている割合は、6割未満にとどまる。

ゴムタイヤは素材の性能が向上するにつれて、強度と耐摩耗性が増し、老朽化しにくい方向に進化しており、廃棄後、少なくとも数十年は自然分解できないといわれている。中国においては、年々増加する廃ゴムタイヤの排出量がもたらす汚染問題は、プラスチックによる「白色汚染」よりも処理しにくい「黒色汚染」をもたらしている。そのため、今後廃ゴムタイヤをどのように利用していくかは、カーボンニュートラルを目指す背景の下で、資源の総合的な利用を実現するにあたり、重要な課題となっている。

中国では「第13次五カ年計画」期間中(2016年ー2020年)、廃ゴムタイヤのリサイクルにおいては、大きな成果が成し遂げられた。リサイクルに携わる多くの企業が、現場で粉塵のオーバーフローや排ガスを抑えた環境配慮型のグリーンモデルチェンジを実現したのである。その一方で、多くの中小企業はグリーン政策による要求をクリアできないことが原因で強制的に閉鎖されるなどして、結果として廃ゴムタイヤの処理拠点数が減少した。また、廃ゴムタイヤ由来の再生ゴムの市場集中度が高まったことで、処理効率は良くなったものの、廃ゴムタイヤの回収率自体は実質的に低下した。このように、資源の循環利用による廃ゴムタイヤの環境汚染問題解決への道のりは、依然として遠い。

廃ゴムタイヤの主要な再生利用方法


現在、中国の廃ゴムタイヤの主な再生利用の方法としては、ゴムチップとゴム粉末への再生(以下、ゴム再生)、リトレッドタイヤへの再利用、熱分解処理によるリサイクルがある。

①ゴム再生

最も幅広く利用されるのはゴム再生であり、これは、廃ゴムタイヤを専用の抜き取り機や磁選機に通し、金属のワイヤーやメッシュを取り除いてから、複数回に分けて異なる粒度に破砕し、ゴムチップやゴム粉末と呼ばれる再生ゴムを生産するという仕組みである。再生ゴムは、天然ゴム、合成ゴムに続いてゴム工業にとって不可欠なゴム資源となっており、その使用量は毎年増加している。世界の再生ゴムの生産量のうち、73%が中国に集中している。

②リトレッドタイヤへの再利用

リトレッドタイヤというのは、古くなったタイヤを廃棄する代わりに、走行により摩耗したトレッドゴム(路面と接するタイヤのゴム層)を新しく貼り替え、タイヤの機能を復元して再使用するタイヤのことであり、更生タイヤとも呼ばれている。しかし、中国ではここ数年、リトレッドタイヤの利用は減少傾向にある。理由は、物流量の増加により、トラックの過積載とスピード違反による事故が増加しており、新品タイヤに比べリトレッドタイヤが比較的事故を起こしやすいと考える関連政策の影響を受けたことによる。

③熱分解処理

熱分解は、主にゴムタイヤの分解設備に依存する技術であり、設備の高温加熱を利用してゴムタイヤを分解し、ガソリン、カーボンブラック(原料の油を不完全燃焼させて得られる、主にゴムの補強材としてゴム部品などに使われる非常に軽い煤状の化学品)及び可燃性ガスを回収する方法である。設備によっては、連続生産により一つの設備で破砕、選別が可能で、ゴム、ワイヤー、繊維を完全に分離することができる。グリーンモデルを実現した企業の生産ラインでは、前述のとおり現場に粉塵のオーバーフローや排ガスが抑えられ、クリーンな生産が実現できている。

中国では前述のとおり、廃ゴムタイヤによる環境問題が深刻であるが、世界最大のゴム・再生ゴムの生産国として、生産現場の環境配慮や、リサイクルの技術も進化してきている。深刻な「黒色汚染」克服のためにも、今後も企業によるリサイクル技術の発展が望まれる。

【参考資料】
废轮胎废橡胶综合回收利用项目,你了解多少?

万容科技:用热解技术将困扰世界的“黑色污染”变为“黑色金矿”

轮胎撕碎机到底有什么用?

リトレッドタイヤとは(ヨコハマタイヤリトレッド株式会社)

カーボンブラック協会ウェブサイト