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企業サプライチェーンにおける森林保護法の動き

 2019年7月、イギリスが政府内にグローバル・リソース・イニシアチブ・タスクフォース(Global Resource Initiative Taskforce)という組織を立ち上げた。通称、GRIと呼ばれている。GRIは、イギリスが、国際的なサプライチェーンにおける環境負荷低減のアクションを、どのようにリードするか、その基盤を作る為に組織化された(参照:GRI)。

 このタスクフォースは、Legal & General、 Cargill、McDonald’sを含む様々な大手企業と、NGOのForest Coalition、金融サービス団体であるThe Green Finance Institute、そしてWWF(世界自然保護基金)の3団体によって構成されている。

 2020年8月25日、GRIの提案を基に、イギリス政府は、サプライチェーンにおける森林保護を法制度化する為の協議を開始する、と発表した(参照:イギリス政府発表内容)。

 内容を端的に記すと、大企業の原料調達、製品製造、流通、販売、回収において、森林破壊をもたらす行為や活動があった場合は、罰則(罰金)を科す、というものである。

 具体的には、違法に森林破壊された土地で栽培された原料や製品は、使用、利用、及び流通が禁止される。企業は、例えば、ココア、ゴム、大豆、パーム油等は、森林を保護する現地の法律に沿って生産されたものであることを書面で示す必要が生ずる。

 イギリス政府は、8月末から6週間をかけて、専門家や企業等の利害関係者からの意見を求め、協議を行う予定である。

 本事案、すなわちサプライチェーンにおける企業の森林保護義務の原則は、イギリス単独の政策ではなく、EU、しいては世界的な流れの発端、として捉える事が重要である。

 最近、EUタクソノミーの環境目的の一つに、森林保護と密接に関係した「健全な生態系の保護」が定義され、融資の具体的な条件として規定された。

 イギリス政府は、GRIタスクフォースの会長に、イアン・チェッシャー卿(Sir Ian Cheshire)を任命している。

 イアン氏は、環境活動家であると同時に、バークレイズ銀行グループの理事会のメンバーであり、英国バークレイズ銀行の会長だ。そして、ロンドン株式市場に上場している、サステイナブル投資を専門とするマハーデンPLC (Menhaden PLC)という投資会社の取締役会の議長でもある。

 マハーデンPLCの子会社で投資行動を行うマハーデン・キャピタル・マネージメントLLP(Menhaden Capital Management LLP)は、CDPの署名投資機関(investor signatory)である。

 これにより、様々なCDPのデータ(ESGスコアや様々な企業の環境開示情報)にアクセスし、CDPの条件に沿った投資活動を行っている。

 CDPの署名投資機関は、現在世界で500を超え、その保有資産は106兆ドルにのぼる。環境データ開示の会社の時価総額の合計は、世界の50%を占める、とCDPは表明している(参照:CDP登録投資機関)。

 イギリス政府の動きは、単なる企業による森林保護義務ではなく、その先の、企業プロジェクトやその融資へのアクセスにもつながる、大変重要な原則への布石とみなす事が妥当だ。

 バークレイズは、配下のバークレイズキャピタルを通じ、世界でも最も早く二酸化炭素排出量取引のサービスを開始した金融機関であることも記しておく。

 欧州を中心に、欧米では、温室効果ガス削減とそれに深く関連する森林保護が、企業活動における投資の必要不可欠な条件になりつつある。

 企業は、サーキュラーエコノミーに関わる様々な欧米の枠組み、あるいは法制度化について、十分な情報を入手・分析し、早めに対策を打つことが必要となっている。

【引用元】

-GRI(Global Resource Initiative taskforce: greening the UK’s environmental footprint)

-イギリス政府発表内容

-CDP登録投資機関

-CDPホームページ