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日本企業12社、ケミカルリサイクル推進に向けアネロテック社に共同出資、新会社アールプラスジャパンを設立

 プラスチックのサプライチェーンを構成する12社が、業界を超えた連携により、米バイオ化学ベンチャーのアネロテック社が持つ使用済みプラスチックのリサイクル技術であるPlas-TCat技術の開発を支援する。共同出資会社は、サントリー、東洋紡、レンゴー、 東洋製罐グループホールディングス、J&T環境、アサヒグループホールディングス、岩谷産業、大日本印刷、凸版印刷、フジ シール、北海製罐、吉野工業所。

 プラスチックの包装材の再利用は世界共通の喫緊の課題である。Plas-TCat技術は、混合の廃プラスチック原料を、新規のプラスチック製造の際に使用される基礎化学品(アロマティクス、オレフィン)に転換することができる。リサイクルが困難な複数の層を有するコンポジットフィルムやスナック菓子のパッケージ、コットンやバイオマスなどの自然素材等、様々な素材やそれらの混合素材からプラスチックの原料を再生成できることになる。

 従来は使用済みプラスチックを中間原料に戻すための熱分解に多くの工程が必要であったが、Plas-TCat技術の使用によって、原料(ベンゼン・トルエン・キシレン・エチレン・プロピレンなど)に直接戻すことが可能になる。少ない工程数で処理することにより、CO2排出量やエネルギー消費量が大幅に削減される可能性がある。

 日本ではプラスチック廃棄物のリサイクル率84%のうち、57%をサーマルリサイクルが占めている。プラスチックをごみ焼却炉で燃やし、その熱をエネルギーとして回収するというものであり、回収された熱は火力発電や温水プールに利用されている。アールプラスジャパンではこれまで燃料として使用されていた廃プラスチックの再利用を目指すという。

 サントリーは2012年からアネロテック社と協働事業を開始し、Bio-TCatプロセスの開発を進めてきた。Bio-TCat は、100%植物由来のペットボトルを製造するプロセスであり、非食糧系バイオマス(ウッドチップ)からパラキシレンを含むアロマティクスを生成する。このプロセス技術を利用し適用したのがPlas-TCat技術である。

 2019年にサントリーグループは「サントリーグループプラスチック基本方針」を策定した。2030年までにグローバルで使用するプラスチックボトル100%の導入を目指す。全ペットボトルをリサイクル素材もしくは植物由来素材に移行させることで、新規の化石由来原料の使用ゼロを達成するとしている。

 サントリーMONOZUKURIエキスパートの執行役員でアールプラスジャパンの社長に就任した横井氏は、「志を同じくする企業と結成した会社から、画期的な新技術を広く発展させ、日本から、新しい課題解決策をしっかり示していきたい。世界のプラスチックの問題、海洋汚染の問題を日本がリードし、サーキュラーエコノミーの実現に向け世の中の役に立ちたいと強く思っている。」と述べている。

 アネロテック社は2016年にペットボトルの原料生成を行うTCat-8実証プラントを米国テキサス州のシルスビーに建設しているが、実証実験を経て、Plas-TCat技術は実用化に向けた開発段階に移行している。アールプラスジャパンは2027年までに商業プラントを建設し、使用済みプラスチック再利用の実用化を目指す。