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TCFD提言改訂等への対応とISSBの動向(2/3)

前回の記事において、2021年10月にTCFD提言の附属文書が改訂され、TCFDが企業に推奨する開示内容の一部が明確化・拡充されたことを概説した。本稿では、このうち「移行計画」について、改訂版附属文書と同時にリリースされた補助ガイダンス「指標・目標及び移行計画に関するガイダンス」に基づき、その概要について解説する。

 

「移行計画」とは 

2021年10月改訂版TCFD附属文書において、温室効果ガス(以下「GHG」)排出削減を約束・宣言した企業等は「低炭素経済への移行に向けた計画」を説明すべきである、と明記された。これが「移行計画(Transition plans)」である。 

「移行計画」に必ず含めなければならない情報はルール化されていないが、GHG削減の具体的な施策や戦略等を含む広範な情報が含まれ得る。TCFDは「移行計画」の情報のうち、少なくとも以下の3点を含む主要な情報(key information)を気候関連財務情報の一部として開示することを奨励している。 

1.現在のGHG排出量・排出状況 

2.低炭素経済への移行を支える活動・行動(GHG排出削減目標、事業・戦略の計画的変更を含む) 

TCFDは、GHG排出削減目標には「目標年月日、スコープ、範囲」と「毎年の進捗状況」の情報を含めるべきと説明している。

3.低炭素経済への移行に伴う事業・戦略・財務計画への影響 

 

「移行計画」の開示対応の実際 

2021年に行われたTCFDのアンケート調査の結果では、回答企業の3分の2が移行計画を策定済み、または次年度中に策定予定という結果となっている。現時点(2022年10月現在)では、「移行計画」の開示まで実現できている日本企業はまださほど多くないが、CDP気候変動質問書2022においても「移行計画」の質問が追加されたことも追い風となって、今後は開示が増加することが見込まれる。 

現状では、開示されている「移行計画」の内容は、上述の1.及び2.の一部に留まっているケースが比較的多い。将来においては、3.の情報も含めた形での開示が進み、TCFDが想定している「組織の事業戦略の一環としての移行計画」という色彩を帯びていく可能性があると考えられる。 

なお、移行計画の作成・開示に際しては、TCFD補助ガイダンスが紹介する、優れた移行計画の特徴7項目及び移行計画に含めることを検討すべき21項目を、それぞれ参照することが望ましい(リンク先40~42頁)。 

次回は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が本年3月に公表した「気候関連開示基準案」の概要とTCFD提言との関係について解説する(11月掲載予定)

 

【参考資料】 

Annex: Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial DisclosuresTCFD、2021年) 

Guidance on Metrics, Targets, and Transition PlansTCFD、2021年) 

METRICS, TARGETS, AND TRANSITION PLANS CONSULTATION -Summary of ResponsesTCFD、2021年) 

 関連記事はこちら:

TCFD提言改訂等への対応とISSBの動向(1/3)

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