海洋汚染やプラスチック廃棄物、気候変動等の環境問題に貢献すると期待されているバイオプラスチック。環境上のメリットがあるにも関わらず、その市場シェアは世界でわずか0.5%である。その理由の一つに、バージンプラスチックに対するバイオプラスチックの価格競争力の低さがある。
プラスチック原料の価格は、その原料である原油の価格に左右される。原油の価格が下がると、バージンプラスチックの価格も連動して下がる。
技術進展により価格差は徐々に縮まってきたとはいえ、未だ製造コストが高いバイオプラスチックは、原油安が続くと価格面では製造コストの安い石油系プラスチックに及ばない。原油価格が高騰すれば競争力を持つのだが、ここ数十年間の度重なる原油価格の下落の中、なかなかバイオプラスチックの普及の目途が立たない状況にある。
リーマンショックにより一時的な影響はあったものの、2013年頃までは中国をはじめとする新興国の経済発展や中東諸国の政情不安等により、原油価格は上昇傾向が続いていた。大企業を中心にバイオプラスチックの技術開発が積極的に進められ、このまま高騰すればバイオプラスチックの価格競争力が高まると期待されていた。しかし2014年頃、米国のシェールオイルの生産拡大に伴う原油価格の暴落は、バイオプラスチック業界にとって厳しい状況を招いた。2016年に米国のMetabolix社がバイオポリマー事業を韓国の企業へ売却し、アグリテック事業に注力する決断をした。2019年末にはイタリアのバイオプラスチックメーカーBio-On社が破産宣言をした。
昨今の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で経済活動が停滞し、化石燃料の需要減少により原油価格は再び急落した。だが過去と違うのは、飲食店からのテイクアウトの利用拡大や、感染拡大防止の観点から各国でエコバッグの使用禁止等により、世界的な使い捨てプラスチック廃止の流れが一転して需要が急増したこと、さらに欧州等において包装の石油系からバイオ系への切り替えが進んでいることから、バイオプラスチックにも一定の需要はあると考えられる。この状況下でどう動くかが今後のバイオプラスチック業界の鍵になる。
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