基本的方向性(案)提示の経緯
日本国政府は、循環型社会形成推進基本法に基づき、循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため循環型社会形成推進基本計画を定め、概ね5年ごとに見直しを行っている。現行の第四次基本計画は2018年に閣議決定され、概ね2025年までに国が講ずべき施策を示している。
この中に、ライフサイクル全体での徹底的な資源循環の素材別取組として、資源・廃棄物制約・海洋プラスチックごみ問題・気候変動・各国の廃棄物輸入規制等の幅広いプラスチックに係る課題に対応する「プラスチック資源循環戦略」の策定とその施策の推進が盛り込まれ、2019年5月に戦略が策定された。
これと並行して経済産業省は、今後の循環経済政策の基本的な方向性を提示するべく2018年より研究を重ね、2020年5月に「循環経済ビジョン2020」を取りまとめた。
上記を踏まえ、「プラスチック資源循環戦略」の具体化のためにプラスチック資源循環小委員会*1が2020年5月より開催され、環境省・経済産業省が一体となってスピード感を持った議論が進められており、第4回目の開催となった7月21日では「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性について(案)」が示された。
基本的方向性(案)の概要
- リデュースの徹底
- ワンウェイのプラスチック(一度だけ使用した後に廃棄することが想定されるプラスチック)製容器包装・製品の排出抑制のために、軽量化等の環境配慮設計、過剰な使用の削減、代替素材への転換を促すための環境を整備する
- 効果的・効率的で持続可能なリサイクル
- 環境配慮設計の視点を整理し、設計の転換を促す環境を整備する
- 環境配慮設計、再生素材・代替素材利用などのイノベーションが促進される公正・公平なリサイクルの仕組みを検討する
- 家庭から排出されるプラスチック製容器包装・製品をまとめて回収・リサイクルする
- 自治体とリサイクル事業者で重複している選別等の中間処理を一体的に実施することが可能となる環境を整備する
- 事業者が消費者からプラスチック製容器包装・製品を円滑に自主回収・リサイクルできる環境を整備する
- インセンティブをはじめ事業者が実施する様々な回収量向上策を支援する
- 代替素材の利用促進
- 再生素材の需要の拡大とそれに見合った供給体制の確保を推進する
- バイオプラスチック導入ロードマップを策定し、施策を展開する
- 分野横断的な促進策
- 普及啓発・広報や環境教育を進め、消費者のライフスタイル変革を促す
- 先進的企業・地方公共団体・NGOなどを支援する
- プラスチック資源循環分野のESGガイダンスを策定する
- 環境負荷低減に資する製品の普及を政府調達で後押しする
今後の流れ
2020年末または2020年度末には基本的方向性の最終案がまとまり、その後具体的な施策が順次実行されていくと思われる。
この方向性に対して企業はどのように取り組むべきか
【ブランド・メーカーなど】
- 消費者の環境意識の高まりやライフスタイル変革に訴求するため、環境配慮設計や代替素材への転換を通じたリデュースやリサイクルへの取り組みを、これまで以上に加速する
- その取り組みを直接消費者にアピールできる自主回収について、個社またはグループで行うことを検討する
- 自主回収の実施や再生素材への転換について、静脈産業の現実を理解し、実現への道筋を共に検討できるリサイクル事業者をパートナーのなかに含める
【リサイクル事業者】
- 廃プラスチックに関して一廃・産廃の垣根を超えた事業展開の可能性が出てきているので自治体と連携して行う一次中間処理またはその先の二次中間処理について、財政的な自治体の体力も視野に入れながら検討を始める
- 廃プラスチックの資源価値およびかさ比重の観点から、輸送コストが事業性を決める大きな要因になる可能性が高いため、この点をいかに効率化または集約化できるか研究を開始する
- 中間処理後の再生資源を安定的に販売できる取引先の確保も非常に重要な要因になるため、再生素材に関心を持つ企業との関係構築を模索する
廃掃法や個別リサイクル法などの既存スキームや慣習との調整をいかにつけ、効果的で具体的な策が生み出されるのか、今後も随時お伝えしていく。
*1 正式名称は、中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ合同会議
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