本稿では、2020年6月3日にリリースされた、GAIAによる廃プラスチックのケミカルリサイクルに関するレポートついてお伝えする。
GAIAについて
GAIA (Global Alliance for Incinerator Alternatives: 焼却代替のための世界連合)は、90か国以上の800を超える草の根団体・NGO・個人による世界規模の連合で、廃棄物と公害への解決策に取り組む草の根社会運動を強化することで、環境的公正に向けた世界的な動きを促進することを目的としている。世界4地域(アジア・北米・南米・欧州)に事務所があり、使い捨てプラスチック利用の低減、焼却炉・セメントキルンでのエネルギー回収のための廃棄物焼却処理の停止、資源循環の促進、リサイクル業労働者・清掃従事者の権利支援に関する活動を行っている。
ケミカルリサイクルに関するGAIAレポートについて
2020年6月3日にリリースされたケミカルリサイクルに関するレポート(Chemical Recycling: Distraction, Not Solution)では、副題に”解決策ではなく、目をそらさせるもの”とつけられているように、GAIAの立場からケミカルリサイクルの有効性・実現可能性に関して批判的に行った検証の結果が要約として紹介されている(検証結果の完全版も同日リリースされている)。
検証結果について
検証結果は、以下に紹介する5つの点にまとめられ、ケミカルリサイクルは化石燃料に依存した経済から循環経済に移行するための本質的な解決策にはなりえず、上流過程におけるプラスチックの製造および消費の削減に注力した、より成熟した実現性のある解決策を見つける必要があると結論付けられている。いわゆるリデュース(排出抑制)がリサイクル(再生使用)より優先順位が高いのは確かであるが、廃棄物が全くなくなることはありえず、またリサイクル過程でのメカニカルリサイクルには対象や再生の限度があるため、特に汚染された混合プラスチック廃棄物を中心に、他のリサイクル方法を補完する意味でケミカルリサイクルに注目が集まっているのが現状であり、この結論は少々拙速であると思われる。ただ、ケミカルリサイクルの殆どはまだ研究開発段階で、有効性や実現可能性はまだ十分に実証されていないことも事実であるので、この検証結果は今後ケミカルリサイクルが社会実装に向けて乗り越えなくてはならない重要な点を指摘していると考えられる。
1.ケミカルリサイクルは、有毒な化学物質を環境に放出する
プラスチックにはさまざまな毒物が含まれており、プラスチックを高温で処理するとさらに多くの毒性が生じる。毒物は製品と副産物の両方に残り、特に排出物が燃焼した場合、排気ガスと有毒な残留物として環境に放出される。
2.ケミカルリサイクルは、カーボンフットプリント(CO₂排出量)が大きい
ケミカルリサイクルのプロセスはエネルギー集約的であり、外部エネルギーに依存している。プロセスからの直接的な温室効果ガス排出と生成物の燃焼に加えて、ケミカルリサイクルは、プラスチック生産のための化石燃料の継続的な抽出を永続させることにより、気候変動をさらに悪化させる。
3.ケミカルリサイクルは、まだ大規模に機能することが証明されていない
ケミカルリサイクルは、商業規模の拡大には対応できていない。また、急速に増大する世界的なプラスチック廃棄物問題への取り組みにおいて主導的な役割を果たすこともできていない。商業運転はめったになく、プラントは、原料の処理から結果として生じるガスと油の洗浄とアップグレードまで、プロセスの各段階で技術的なハードルに直面している。溶剤ベースの技術は、熱分解やガス化に比べて成熟度が低い。
4.ケミカルリサイクルは、市場競争力がない
業界には重大な失敗の歴史があり、プラスチックからプラスチックへの再重合とプラスチックからの燃料生産のいずれも、コストのかかるエネルギー投入が必要。生成物は、ヴァージン材との市場競争力がない。
5.ケミカルリサイクルは、循環経済に適合しない
ほとんどのプロセスでは、生成物を燃料として燃やしてしまう。最先端のテクノロジーを使用しても、実際には新しいプラスチックになる廃プラスチックはほとんどない。そのため、ケミカルリサイクルは、ヴァージン材の生産に取って代わらない限り、循環経済においては居場所がない。
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