プラスチック食品包装代替材料の開発が進む3つの背景
欧州では、EU指令2019/904によって、2024年12月31日から、食品及び飲料容器に拡大製造者責任(EPR)が適用されることが明記された。
同指令による拡大製造者責任には、生産者が廃棄物管理と清掃のコストを負担することが含まれている。また、再利用可能なプラスチック代替品を認識できるよう、各国で一般市民に意識向上を図る対策をとるよう規定している。
上記EU指令以外にも、リサイクルされないプラスチック包装廃棄物への課金制度も現在法制度化に向けて議論が進められている。
食品包装用のプラスチックは、リサイクル材料を製品に再利用することが困難である。衛生管理や品質基準の点から、リサイクルプラスチック材料を利用するにはコストと技術的な課題があまりにも多いからである。
食品包装の場合、包装していた食品の種類が半固形物、粘度のあるもの、残留物の洗浄が難しいものなど一定ではない。そのため、機械的なリサイクルでは、リサイクル材料を製品パッケージに戻すことができる程の品質を確保することができない。
熱や科学的な分解を用いるケミカルリサイクルが1つの問題解決策ではあるが、こちらは条件が整わない限り、採算性に問題点が多い。企業にとっては、投資規模が大きい上に、大量の廃棄物を確保しなければ、採算に乗らないことが既に分かっている。
現状では、バージン材を作る石油化学製品メーカーと共同でのプロジェクトに将来性があるのみで、独立したプロジェクトでの採算性については課題が多い。これについては、プラスチック・ケミカル・リサイクル・ヨーロッパの参画企業の財務諸表を参照すると、ある程度現状が推測可能である。
重要なのは、彼らのビジネスモデルの目的は、もっと他にあるということである。それについては、また別の機会で解説したい。
上記のように、拡大製造者責任、課金制度の導入、リサイクル材料利用時のコスト増の3点により、現在、欧州を中心にプラスチック食品包装の代替材料の開発が急速に進んでいる。
食品メーカーにとっては、プラスチック包装を使い続けることで将来発生するコストやカーボンフットプリントへの影響を考えた場合、代替品の選択肢を持つことが急務となっている。
技術的には、包装する食品により必要な気密性及び柔軟性・弾力性の確保、耐水・耐油性能、耐熱・耐寒性能、耐久性能、さらに包装材を食品にパッケージする機械システムの対応など、課題が多岐にわたる。
そのため、現状では、各メーカーの特定商品への対応を入口として、開発が進められている。
既に発表されている代替材料の例
以下に、現在欧州で開発が進められている代替材料の事例について、企業別に紹介する。
Mondi:イギリスの包装材料メーカーである同社は、食品を含むプラスチック代替の包装材を開発している。
耐破裂性、柔軟性、印刷適性、保護性能など、特定の機械特性を備えた再生可能材料で、紙へのコーティング技術により、油や水蒸気に対する特殊なバリアを形成し、シール性を確保している。製品名は、Aegis Papersと呼ばれている。
Sappi:欧州の大手製紙メーカーである同社は、菓子用に紙べースの多層ラミネート包装材を開発した。ドイツの包装用機械製造会社のSyntegon社製の機械に専用アタッチメントを取り付けるだけで、既存の包装ラインで対応可能、としている。
Kraft Heinz Company:マカロニパスタで有名な同社は、電子レンジで使える紙ベースのカップを開発・テストしている。廃棄カップは、たい肥化できるという。
PalPuc:スウェーデンで紙ベースの食品トレイを開発製造している同社は、航空産業や外食産業向けに食品包装やサービスを提供するベルギーのdeSter社と戦略的なパートナーシップを結んでいる。今後、航空機で使用されるトレイをプラスチックから特殊な紙に変更する。同社は、セルロース繊維を乾式成形する独自の技術を開発している。
FreeFrom Packin:収縮性の高い紙をベースとした包装材を開発しているスウェーデンの同社は、85%を紙ベースとした、伸縮性のある新しい紙ラミネート材料を開発した。開発までに6年をかけた製品、と紹介している。
このように、欧州では様々な規制が整備されるにつれ、食品包装用のプラスチック代替材料の開発は、今後もますます発展することは間違いないと考えられる。
【参考資料】
Mondi
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