CDPは、企業や自治体の環境情報を収集、評価、公表する国際的な非営利組織であり、2024年度は、気候変動、フォレスト、水セキュリティなどの環境テーマを統合した質問書が導入された。フォレスト関連の質問は、持続可能な原材料調達や森林破壊防止への取り組みを評価する内容となっており、2024年は過去最高の3,851社が回答し、前年より3倍以上の伸びであった。
目次
- CDP2024質問書(フォレスト)の概要
- モジュール別の評価向上のポイント
2-1 モジュール5:事業戦略(フォレスト関連設問)
2-2 モジュール8:環境パフォーマンス(フォレスト) - グローバル・スタンダードとの整合
- まとめ
1.CDP2024質問書(フォレスト)の概要
CDPフォレストの質問書では、情報開示が求められる7つの主要コモディティのうち、4つ(木材製品、パーム油、大豆、畜牛品)が採点対象となる。2024年の採点方式では、コモディティ別のスコアではなく、フォレスト全体で単一のスコアが算出され、各コモディティに付与されたポイントは総合スコアに均等に加算される。また、気候変動、水セキュリティと同様に、フォレストの質問でも2024年から「エッセンシャルクライテリア」が導入され、これはリーダーシップレベルに達するための必須要件となった。Aスコアを獲得するための条件である「Aリスト基準」には、高得点の獲得に加え、フォレスト関連リスクの包括的な情報開示と管理が含まれる。
2.モジュール別の評価向上のポイント
2-1 モジュール5:事業戦略(フォレスト関連設問)
CDPのスコアアップにおいては、以下の設問に対して具体的かつ詳細な回答を提供し、フォレスト関連の取り組みが事業戦略全体に統合されていることを示すことが重要である。また、定量的なデータや具体的な事例を用いて説明することで、より高いスコアを得られる可能性が高まる。
シナリオ分析
森林を含む環境課題に対するシナリオ分析を実施し、その頻度、時間軸、考慮するリスクやリスク要因、選択根拠を明確にする。また、分析結果がビジネスプロセスに与える影響と、他の環境課題への波及効果を説明する。(モジュール5.1~5.1.2)
財務計画
森林に関する環境上のリスクと機会が組織の戦略や財務計画に与える影響を評価する。環境要因が企業の意思決定や財務的側面にどのように反映されているかを詳細に報告する。(モジュール5.3~5.3.2)
バリューチェーン・エンゲージメント
サプライヤーを環境への依存や影響に応じて評価し、重要なサプライヤーを特定する。また、特定されたサプライヤーに対する環境要求事項の遵守の義務付けや直接的なエンゲージメントの割合を示す。(モジュール5.11~5.11.9)
2-2 モジュール8:環境パフォーマンス(フォレスト)
以下の項目に対して具体的な取り組みを行い、質問書に詳細かつ正確に回答することで、環境パフォーマンス評価の向上につながる。また、情報収集体制の整備や、サステナビリティ経営の推進も重要なポイントとなる。
コモディティ量
森林減少の要因となる7つのコモディティのうち、特に木材製品、パーム油、大豆、蓄牛品の4つの生産量・調達量データについて、総コモディティ量、開示量、除外量などの内訳を詳細に報告することが求められる。スコアの向上には、企業のバリューチェーン全体にわたるデータ収集・管理体制の整備が不可欠である。(モジュール8.1~8.2.1)
トレーサビリティ
バリューチェーンの各段階を通じて森林減少に影響を与えていないことを確認するため、コモディティの原産地までのトレーサビリティを確保することが求められる。生産単位、調達地域、原産国/地域、加工施設/最初の輸入業者等の地点ごとの調達量の報告が必要となる。認証製品の調達比率を向上させることも重要な取り組みとなる。(モジュール8.8~8.8.1)
森林減少および自然生態系の転換がない(DCF)/森林減少がない(DF)
企業の森林減少および自然生態系の転換に対する取り組みと、その進捗状況を評価するために、森林減少と自然生態系の転換がない(DCF)、または森林減少がない(DF)状態の評価の詳細が求められる。完全なDCF認証を提供する第三者認証制度、完全なDF/DCF認証を提供しない第三者認証制度、DCF/DFステータス決定に使用された生産部門モニタリング、および調達地域の監視に関する情報の詳細を回答する。(モジュール8.9~8.9.4)
3.グローバル・スタンダードとの整合
CDPフォレストの質問書は、複数のグローバルスタンダードと整合性を持つように設計されている。CDPフォレストに回答することで、複数の国際的な報告要件に効率的に対応できる可能性がある。
IFRS S2(気候関連開示)
CDPは2024年の質問書でIFRS S2号との整合性を強化している。
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)
CDPフォレストの質問は、CDPはTNFDフレームワークと部分的に整合しており、今後完全な開示ができるよう取り組んでいる。海洋や土地利用などの分野も組み込む予定である。
EUDR(欧州森林破壊防止規則)
CDPフォレストの質問書は、EUDRの要求事項と整合性がある。具体的には、EUDRが求める3つの主要ステップ(商品に関する土地の明示、リスク分析・評価、リスク緩和措置)に対応する質問が含まれている。
AFi(フォレストのためのアカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアチブ)
CDPフォレスト質問書の個々の質問は、AFiの基本原則と直接的に関連付けられており、各質問とAFi基本原則との関連性をガイダンスに明示している。
4.まとめ
CDP2024では、3つの質問書が統合され、より包括的な評価が行われた。CDPフォレストでは、今後森林減少ゼロへの取り組みや自然生態系の転換フリー(DCF)に関する報告が強化される見込みである。企業はより広範囲な森林保全活動や生態系保護の取り組みを報告することが重要となる。詳細な環境情報を開示し、具体的な数値目標を設定して達成することで、高スコアを獲得する可能性が高まる。
【参考資料】
・CDP Guidance & Questionnaires
・CDP Forests Scoring Essential Criteria 2024
・開示基準やフレームワークとの整合
・EUのEUDR(森林破壊フリー製品規則)の概要
・Accountability Framework initiative
・CDPフォレストレポート2023
・CDP Charting the Change: Disclosure Data Dashboard
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