2025年11月および、2026年1月にCDPはCDP2026における変更の方向性に関する資料を公開した。水セキュリティ分野では、国際的なサステナビリティ開示基準との整合を通じた報告の合理化が進められると記載されている。本稿では、CDP2025水セキュリティの総括として、前年度からの主な変更点、カテゴリーウェイトやエッセンシャルクライテリアをふまえた高評価獲得のポイントを解説する。さらに、CDP2026水セキュリティ変更の方向性について、TNFDおよびGRI303(水と廃水)に触れながら、弊社の見解を述べる。
目次
- CDP2025水セキュリティの主な変更点
- CDP2025水セキュリティにおける高評価獲得のポイント
- CDP2026水セキュリティの変更の方向性
3-1.TNFDとの整合
3-2.GRIとの整合 - まとめ
1.CDP2025水セキュリティの主な変更点
CDP2025は全体の傾向としてCDP2024から大きな変更はなかった。水セキュリティにおいても同様であり、大幅な変更はなく、軽微な修正などに留まった。唯一特筆すべき変更点としては9.1「水関連データの中で開示対象から除外されるものはありますか」および9.1.1「除外項目についての詳細を記載してください」のエッセンシャルクライテリアの基準である。9.1および9.1.1では開示における除外に関して回答が求められるが、CDPが企業の提示する除外が正当なものであるかどうかを判断できるよう、エッセンシャルクライテリアにおいて除外の説明について可能な限り詳細に説明することが明確に記載された。CDP2024では 除外の理由や除外される量の割合に留まっていたが、CDP2025からは除外された水が使用されている事業活動、その事業活動に関連する環境影響、さらに除外される水が取水された河川流域やその地域で水不足や水質などの問題がないかどうか、などについても回答することが求められた。
一方で除外可能な事項も明確となり、例えば総水量の5%未満の雨水や社内の水・トイレ・衛生設備を指すWASHサービスに使用される水が該当する。CDPは除外の規模については、閾値の設定はしていないため、除外する水の割合だけでなく先述の通りに、関連する事業活動や該当地域の詳細な情報を可能な限り提供し、正当な除外であると認めてもらう必要がある。この基準はエッセンシャルクライテリアのAリスト基準であり、この基準を満たすことができない場合にはAスコアが獲得できなくなるため、丁寧な回答が求められる。
2.CDP2025水セキュリティにおける高評価獲得のポイント
CDP2025水セキュリティで高評価獲得を獲得するには、カテゴリーウェイトとエッセンシャルクライテリアをふまえた回答が必要であった。カテゴリーウエイトとはCDPのスコアリングにおいて、トピック別に設問をまとめた区分であるカテゴリーごとに相対的な重要性を反映するための、各カテゴリーに適用される配点上の比重のことである。なお、この配点比率はセクターごとに異なる。また、水セキュリティにおけるエッセンシャルクライテリアとは、リーダーシップレベルおよびAリストにおける必須基準を指し、各レベルに適用される基準を満たさない場合、最終スコアはBまたはA−以下となるものである。
カテゴリーウェイトやエッセンシャルクライテリアをふまえた、CDP2025水セキュリティにおける高評価獲得のポイントは大きく分けて4つあった。
まず1つ目は依存・影響・リスク・機会の特定・評価・管理であり、企業はそれらを実施するプロセスの詳細や優先地域の特定に関する情報を開示することが求められた。2つ目はバリューチェーンエンゲージメントである。環境への影響を軽減するために、企業はサプライヤー・ステークホルダー・その他のパートナーとどのように協力および協働しているかを示す必要があった。3つ目はウォーターアカウンティングである。水セキュリティのあらゆる側面において、企業が進捗をモニタリングし、追跡している必要があった。例えば、施設や事業所において、取水量、排水量、排水の質、安全に管理されたWASHサービスが提供されているかどうかなどを定期的にモニタリングし、その詳細な情報について開示するなどである。そして最後の4つ目は水関連の目標を設定することである。取水、水質汚染、WASHサービスのうち2つ以上に該当する目標を設定することが求められていた。
これらの4つのポイントをまだ具体的に検討ができていない企業は、CDP2026の回答に向けて開示の準備を始めることをお勧めする。
3.CDP2026水セキュリティの変更の方向性
2025年11月、CDPはCDP2026質問書における変更の方向性の資料を公開した。水セキュリティに関しては、国際的な基準との整合による報告の合理化としてTNFDやGRI303(水と廃水)との整合を強化するとされており、今後は水セキュリティに関する情報について、より広範かつ詳細なデータを開示していくことが求められると推測される。2026年1月に公開された同様の資料には、特に排水処理に関して処理レベルや法規制の遵守などについて、GRI303(水と廃水)との整合を高めると言及されていた。CDP2026だけではなく水セキュリティが今後どのような内容の開示が求められるのか、TNFDおよびGRIに触れながらCDPとの整合について弊社の見解を解説する。
3-1.TNFDとの整合
TNFDにはグローバル中核開示指標という指標が存在し、企業はこれらの指標をもとに企業の事業活動における自然への依存と影響や自然に関連するリスクと機会を定量的に分析することができる。水セキュリティに関する指標としては、排出された水の量や水不足の地域からの取水量、水に対する影響が小さい製品やサービスの有無に関する項目があるが、これらは既にCDP水セキュリティで開示が求められている。ただし、CDP水セキュリティでは排出された水の温度や排出された汚染物質の種類の情報は開示が求められていない。また、水不足(water scarcity)ではなく水ストレス(water stress)という言葉を使用し、水ストレス地域からの水消費量については触れていない。水に対する影響が小さい製品やサービスに関しても、CDP水セキュリティでは影響が小さいと分類した定義について問うに留まるが、TNFDでは収益の増加とその割合、およびその影響について問われる。また、CDP水セキュリティでは自然への影響が小さい製品やサービス(low impacts)という聞き方がされるが、自然に対して積極的にポジティブな影響を与える製品(positive impacts)という聞き方はされておらず、自然に対して正の影響を与えるのではなく負の影響を低減する姿勢に焦点が当たっている。
これらの開示水準および設問観点の違いについて、CDP2026では整合を強化するために細かな情報を求められる可能性がある。また、TNFDの開示指標にはセクター別の指標も存在するため、各セクターの特徴をふまえた水に関する定量的な情報の提供が求められる可能性についても、念頭に置いておく必要がある。
3-2.GRIとの整合
GRI303水と廃水には、水に関連する影響と、それらのマネジメント方法に関する情報を報告するために利用する開示事項が記載されている。多くの項目が既にCDP水セキュリティと整合しており、水源別の取水量や排水先別の排水量、水の消費量などの開示が同様に求められる。一方でGRIではより細かい開示を求める場合がある。例えば、水に関する目標では目標の内容のみならず設定プロセスについて説明する必要がある。また、水ストレスのある地域ではその目標が公共政策や地域の状況とどのように関係しているのかについて説明が求められる。さらに、水ストレスのある地域についてCDP水セキュリティでは取水量のみが質問されるが、GRIでは取水量を水源別に開示し、また消費量についても開示が求められる。すべての地域の排水量については、総排水量だけではなく、その内訳として淡水とその他の水に分けて開示する必要がある。またGRIではCDP水セキュリティでは問われていない水保管施設または貯水池に保持された水による影響やその水保管量の変化について開示が求められる。
TNFDと同様に、これらの開示水準や網羅性の違いについてもCDP2026では整合が進む可能性があることから、企業はより精緻かつ正確な情報の収集および管理を一層推進していく必要がある。
4.まとめ
CDP2025水セキュリティはCDP2024から大きな変更はなく、ウォーターアカウンティングや目標の設定などが引き続き重要視されるなか、開示の除外の正当性についてはより厳しく追及されるようになった。CDP2026では、TNFDやGRIとの整合が一段と進む見通しのため、今後は水セキュリティに関してより幅広く、かつ粒度の高い情報を収集・管理し、開示していくことが求められる。
【参考資料】
・CDP Essential Criteria 2025
・CDP Water Security Scoring Category Weightings 2025
・CDP2026質問書における変更点
・Preparing for CDP’s 2026 disclosure cycle
・Taskforce on Nature-related Financial Disclosures (TNFD) Recommendations
・CDP-TNFD Correspondence Mapping
・GRI Resource center