2020年3月に欧州委員会が発表した「新循環型経済行動計画」の概要を4回にわたって紹介する。第2回目は「持続可能な製品政策の枠組み」の概要を掲載する。
持続可能な製品政策の枠組み
①持続可能な製品設計
製品による環境影響の最大80%は設計段階で決定しているが、「資源採取、製造、使用、廃棄」という直線的モデルでは、生産者には循環型製品を生産するインセンティブがない。製品の多くは簡単にリユース、修理、リサイクルができず、使い捨て製品として製造されている。
EUのイニシアチブや法律は、既に一定程度、義務的もしくは任意的ベースで製品の持続可能性に対応している。とりわけ”Ecodesign Directive”は、エネルギー効率やエネルギー関連製品のサーキュラリティの規制に成功しており、EUエコラベルやEUグリーン公共調達(GPP)基準ではより広範に対象がカバーされている。一方で、EU域内で販売される全製品の持続可能性を高め、サーキュラリティを実現する包括的な制度は存在しない。
欧州委員会は、気候中立性・資源効率性向上・サーキュラーエコノミーに適合した製品を製造し、廃棄物を削減し、持続可能な事業展開を標準的なものにするために、持続可能な製品政策の法制化を提案する。中核となるのは、”Ecodesign Directive”をエネルギー関連製品以外にも拡大し、この枠組みを可能な限り広い範囲の製品に適用し、サーキュラリティを実現することである。
欧州委員会は、持続可能性原則の構築やその他適切な手段を通じて、以下の規制を検討する:
・製品の耐久性、リユース性、アップグレード、修理、製品中の有害化学物質への対処、エネルギーおよび資源効率向上
・製品の性能及び安全性を確保の下、リサイクル原料の使用量増加
・リマニュファクチャリングと高品質リサイクル
・炭素および環境フットプリントの削減
・使い捨ての規制と早期の陳腐化対策
・売れ残った耐久消費財の破壊禁止の導入
・製品のサービス化(Product-as-a-service)促進、所有権およびライフサイクルを通じた性能責任の生産者への帰属
・デジタルパスポート、タグ付け、ウォーターマーク、などを含む製品情報のデジタル化
・高いパフォーマンスをインセンティブに結びつけること等、様々な持続可能性パフォーマンスに応じた褒賞
エレクトロニクス、ICT、繊維、家具、鉄鋼・セメント・化学製品などの高影響中間財を優先セクターとする。
さらに、欧州委員会は新たな持続可能な製品政策を効果的かつ効率的に適用するために以下の支援を行う:
・バリューチェーンおよび製品情報のデータを有する”Smart Circular Applications”のための共通の”European Dataspace”を構築
・ 各国当局の協力を得て、共同の検査および監視活動を通じ、EU市場の製品に適用される持続可能性要件を強化
②消費者および公共調達エンパワーメント
消費者に権限を付与し、コスト削減の機会を提供することは、持続可能な製品政策の枠組みを構築するにあたって重要である。欧州委員会は、製品寿命、修理サービス・部品・修理マニュアルの有無等の情報を製品の販売時点で消費者が確認できるようにEU消費者法の改正を提案する。持続可能性ラベル・ロゴや情報ツールの要件設定により、グリーンウォッシングや早期陳腐化からの消費者保護をより強化する最低要件を設定する。
さらに、新たな「修理権」の構築と横断的な「物質権」について検討する。消費者の物質権とは、スペア商品の有無や修理サービス、ICTやエレクトロニクスにおいてはアップグレードサービスなどを含む。より循環性の高い商品の保証制度については、”Directive 2019/771”の修正を検討する。また、企業が環境主張するにあたって”Product and Organization Environmental Footprint”メソッドを使用して立証することを提案する。当メソッドのEUエコラベルへの統合をテストし、EUエコラベル基準に耐久性、リサイクル性、リサイクル含有率をより体系的に盛り込む。
公共機関の購買力はEUのGDPの14%を占めるため、持続可能製品に対する需要の強力なけん引役として期待できる。これに対応するため、グリーン公共調達(GPP)の最低義務基準とセクター別法制度の目標を提案し、公的購入者に不当な行政負担を与えることなく、段階的にGPP導入の報告義務を課す。さらに、ガイダンス、トレーニング、実践の普及を通じたキャパシティ―ビルディング(組織的な能力の構築)、および、GPPを導入している公共購買者間の交流のための”Public Buyers for Climate and Environment”イニシアチブへの参加促進の支援を引き続き実施する。
③生産プロセスにおけるサーキュラリティ
サーキュラリティは気候中立性や長期的競争力に向けた産業転換には不可欠な要素であり、バリューチェーンや生産プロセスを通じた大幅な省資源、付加価値創出、経済機会の実現を可能にする。欧州委員会は、”Industry Strategy”の目標との相乗効果により、産業界におけるさらなるサーキュラリティの促進を、以下を通じて実現することを提案する:
・”Industrial Emissions Detective”の見直しにあたって、産業プロセスにおけるサーキュラリティをさらに促進するための選択肢を評価。”Best Available Techniques”参照文書へのサーキュラーエコノミー実践の統合を含む。
・産業界主導の報告・認証システムの開発により産業共生を促進。
・”Bioeconomy Action Plan”の導入を通じて、持続可能かつ循環型バイオベースセクターを支援。
・資源のトラッキング、トレーシング、マッピングのためのデジタル技術の利用の促進。
・EU認証マークとして、”EU Environmental Technology Verification”スキームに登録することにより、確実な検証システム経由のグリーン技術採用を促進。
新中小企業戦略は、中小企業間における循環型産業連携を促進するため、研修、”Enterprise Europe Network”におけるクラスター連携に関する助言、”European Resource Efficiency Knowledge Center”を通じた知識移転の上に構築される。
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