サンフランシスコに拠点を置くBrightmark社は、2.6億ドルを投じてインディアナ州のAshleyに先進的な廃プラスチック処理施設を建設中である。プラスチックから燃料へのリサイクルを実現する米国初の商業規模の工場で、年間10万トンの混合プラスチックを、超低硫黄軽油(ULSD)、ナフサおよびワックスとして再資源化する。
プラスチックのリサイクルにおいてはNo.1のペット(PET)とNo.2の高密度ポリエチレン(HDPE)以外のNo.3(ポリ塩化ビニル)、No.4(低密度ポリエチレン、No.5(ポリプロピレン)No.6(ポリスチレン)、No.7(その他のプラスチック)はリサイクルが困難であり、ほとんどが埋め立てや焼却処理されている。Ashleyの施設では、これまで廃棄されていたNo.3~No.7のプラスチックのリサイクルが可能になる。ケミカルリサイクルの流れは、(1)プラスチックを回収し、粉砕、金属除去、乾燥、ペレット化(2)ペレットに加工されたプラスチック原料を加熱し、無酸素状態のまま蒸発(3)発生したガスを冷却して炭化水素を回収し、商用の超低硫黄軽油、ナフサおよびワックスを生成、というように大きく3段階に分かれている。10万トンの混合プラスチックから1800万ガロンのULSDおよびナフサ、500万ガロンのワックスが再生産されるという。
Brightmark社は、2025年には工場新設時の約10倍にあたる年間100万トンの混合プラスチックの処理を目指している。2021年までに米国内に更に2拠点を建設する計画があり、各拠点に5億~10億ドルの投資を予定している。新施設を建設するにあたり、年間20万トンのプラスチックのスクラップ、鉄道や幹線道路にアクセス可能な30~100エーカー(約3万6千~12万2千坪)の土地、天然ガスや電力事業会社からのサポートなどに関する地元、地域、州の支援を募っている。
インディアナ州Ashleyの施設では、原料を同州内のみならずオハイオやシカゴの都市部を含む半径170マイル(約270㎞)から調達する。原料のほとんどは材料回収施設(MRFs)から搬入されるが、直接施設に持ち込みを希望する多様な業種の製造業者に対応することも検討している。使用済みプラスチックの調達元との地理的な距離は広範囲にわたるため、回収されたプラスチックを圧縮し高密度にして輸送することにより、コストを削減する事も重要であるという。
Brightmark社の共同創設者でCEOのボブ・パウエル氏によると、建設を計画している新たな拠点において重要視しているのは、大量のプラスチックの調達と並んで、市場へのアクセスである。例えば、インディアナ州の施設は、ロンドンを拠点とするエネルギー事業者BPの最大の石油精製拠点の近くに位置しており、当リサイクル施設にて生成された燃料のオフテイク契約(長期供給契約)を締結している。
パウエル氏によると、Brightmark社はハブアンドスポーク方式(ハブ拠点に荷物を集めて各地の集配拠点別に仕分けをすることで、全国へ効率良く配送できる)のビジネスモデルを検討している。回収されたプラスチックを選別、破砕、ペレット化する前処理施設を遠隔地に建設し、ここからペレットを鉄道車両で効率的に輸送して、各地のプラスチックのリサイクル施設で追加的な処理を行う。できるだけ持続可能な方法で地域社会の使用済みプラスチックを回収することを目指している。
また、プラスチックのリサイクルによる燃料の生成は、温室効果ガスの削減効果もあり、従来型の原油の採取と比較すると温室効果ガスを14%削減する。Ashleyのリサイクル施設においては、毎年1.52億メートルトンの温室効果ガスが相殺されるという。
【参考資料】
Reimagine the possibilities
Brightmark seeking 2.4 billion pounds of US mixed plastics
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