中国の自動車は輸入から輸出へ
従来のガソリン車の分野では、中国の自動車産業は海外の大手自動車メーカーのフォロワーに過ぎず、自動車は自国での生産よりも輸入がメインであり、生産する場合も、外資の自動車メーカーと合弁会社を作るなどにとどまり、中国は長年自動車の輸入国であった。
一方で、EVに関しては、中国が自国で生産した自動車を海外に輸出し、「Made in China」の実力を証明する機運が高まっている。
中国のEV業界は、国内に完全な産業サプライチェーンを構築しつつあり、また、高いリスクヘッジ能力を有しており、電気モーターや電子制御の分野においても世界トップレベルに達している。例えば、中国のBYD(比亜迪)社は、バッテリー、モーター、電子制御、車載チップなど、EV産業サプライチェーンにおけるコア技術を自社に備えている。
現在、中国で普及している一般的なEVの航続距離は400km以上に引き上げられ、バッテリー単体のエネルギー密度は300Wh/kgに近づいている。
2022年1月~4月のEV輸出状況
中国のEV輸出量は、2020年は22.3万台、2021年は31万台であったが、今年1月から4月までの輸出量は、すでに24万5000台となっており、前年同期比で約2倍となっている。特に、EV需要が急速に高まっている欧州向けの輸出量が顕著に増加している。
オランダ、ノルウェー、ドイツ、デンマーク、スウェーデンなどの国々では、相次いで「ガソリン車販売禁止」のタイムスケジュールが発表されており、政府はEVの購入に対する支援強化を図っている。例えば、ノルウェーではEVの購入者は購入税と輸入税のほか、25%の付加価値税が免除され、通行権(平日にバス専用通行帯を走行する権利)が与えられる。また、高速道路の通行料、都心部の駐車料金や渋滞課金(ロードプライシングの一つ)の値引きなど、その他の支援政策も用意されている。また、ドイツでは、EVの購入者は最大9000ユーロ(約126万円程度)の補助金を受け取ることができる。
巨大な市場の可能性に惹かれる形で、前述のBYD、上海汽車、 Xiaopeng(小鹏汽车)など中国のEVメーカーの多くが、海外進出のペースを加速させている。 BYDの電動バスとEVタクシーは、50以上の国と地域の300以上の都市に販売網を広げており、電動バスについては、欧州と日本ではそれぞれ2割と7割のマーケットのシェアを有している。
中国EVメーカーによる海外拠点の展開
現在、中国のEVメーカー及びサプライチェーンでは、安定的な製品供給の実現と物流コストの抑制を目的とした、海外工場の設立をはじめとする現地戦略が、共通して展開されている。例えば、奇瑞汽車(Chery)社は、欧州、北米、中東、ブラジルにグローバルな研究開発拠点及び10ヶ所の海外工場を設置しており、CATL(寧徳時代新能源科技)社は、ドイツ・チューリンゲンに欧州初のリチウム電池工場を建設している。
また、業界関係者によれば、中国のEVは、欧州市場での技術ライセンスが新たな収益ポイントになっているという。
例えば、吉利集団の2021年の有価証券報告書によると、同社では技術サービスやライセンス分野での収入が、前年の3.5倍となっている。
テスラ社のCEOであるイーロン・マスク氏は、先月30日に中国のSNS(Weibo)で以下のような投稿をしている。
Few seem to realize that China is leading the world in renewable energy generation and electric vehicles. Whatever you may think of China, this is simply a fact. 「中国が再生可能エネルギー産業と電気自動車で世界をリードしていることを認識している人は少ないように思える。中国のことをどう思おうが、これは事実だ。」
出典元:@Elon Musk(Weibo)
中国のEVメーカーの勢いは止められることなく、世界を席巻し始めているようだ。
【参考資料】