12月13日にCDP2022のスコアが公表された。スコア発表を受け、次回CDP2023の回答に向けた検討を進める企業も多いと推察するところ、本稿では、CDP2022スコアの概観、及びCDP2023質問書の展望について説明する。
CDP2022スコア概観
気候変動、水セキュリティ、森林の3つの質問書全てにおいてAスコアを獲得した企業は12社(うち日本企業1社)、少なくともいずれかの質問書でAを獲得した企業(”Aリスト企業”)は、約330社であった(うち日本企業91社)。
*A~D-スコアを獲得した企業
出所:CDP公表資料よりブライトイノベーション作成
各質問書のAスコア獲得企業数は、気候変動では大きく増加(211社→283社(うち日本企業74社))となったものの、森林ではほぼ変わらず(24社→25社(うち日本企業4社))、水セキュリティでは減少した(118社→103社(うち日本企業35社))。また、2021スコアがA-~D-だった企業のうち、スコアが向上した割合は34%であった。
出所:いずれもCDP公表資料よりブライトイノベーション作成
CDP2023質問書の展望
CDP2023質問書は2023年1月に公表予定となっている。ここでは、CDP事務局がこれまでに示してきた情報を基に、CDP2023質問書で主にどのような点が強化・拡充・追加される方向性となっているか、要旨をお伝えする(注:予定であり、確定情報ではないことに注意)*1。
全分野共通
・自社の直接的な操業以外での取組に関する質問が拡充される(例:サプライヤーの森林ポリシー遵守状況の追跡)
・EUタクソノミー等、他の主要な開示基準等への対応・統合が図られる
気候変動分野
・低炭素技術へのR&D投資など、1.5℃社会に沿ったビジネスに移行していくための取組の実施状況に関する質問が強化される
・CDP2022で新規導入された生物多様性に関する質問についても拡充される(例:生物多様性センシティブエリア*2での活動内容)
水セキュリティ分野
・プラスチックによる水資源汚染の深刻化等を背景に、プラスチック関連の質問が新規導入される(例:自社バリューチェーンにおけるプラの使用・生産・廃棄の現状)。ただし、CDP2023では採点対象外の扱いとなる予定
・水質汚染物質・有害物質の排出の現状把握やそれらの管理・削減の取組に関する質問が追加される
森林分野
・森林伐採や自然生態系への悪影響の要因の1つと言われている畜牛品(牛肉や牛革など)について、質問が強化される(例:放牧地の拡大防止の取組、代替たんぱく質の利用)
・自然生態系の転換リスク低減に関するその他の質問も拡充される(例: DCF*3の内訳や認証取得状況)
以上がCDP2023質問書において強化・拡充・追加される可能性が高い主なトピックである。まとめると、下図のようになる。
CDP2023質問で強化・拡充・追加される可能性が高い主なトピック
出所:「CDP Signposting & Feedback Opportunity: 2023 CDP Questionnaires」(CDP、2022年)よりブライトイノベーション作成
*1:本稿は、全セクター共通の質問に関する説明に留めている(特定セクター対象の質問に関しては割愛)
*2:生物多様性センシティブエリア:生物多様性が影響を受けやすく、特に配慮が必要なエリアを指す
*3:DCF:”Deforestation/Conversion-Free”の略で、森林減少・自然生態系の転換に寄与しないことを指す
【参考資料】
CDP Signposting & Feedback Opportunity: 2023 CDP Questionnaires(CDP、2022年)
『CDPプラスチック情報開示』が始動 2023年から統合的な質問書に(CDP、2022年9月22日プレスリリース)
CDP expands global environmental disclosure system to help tackle plastic pollution crisis(CDP、2022年)
Just 1.3% of companies leading across all environmental issues, CDP disclosure scores reveal(CDP、2022年12月13日プレスリリース)
CDP2022スコア公表(CDP、2022年12月13日プレスリリース)
Companies A list 2022(CDPウェブサイト)
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