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RE100と再エネ調達の動向

2014年のRE100設立以来、2024年7月時点で日本の参加企業は88社となっている。しかしながら、具体的に何をするべきか、どのように再エネを調達するべきかといった相談をいただく機会が多くある。そこで本稿では、RE100の概要と主な再エネ調達方法について簡単に説明し、RE100技術基準改定の動向を紹介する。

〈目次〉

  1. RE100概要
  2. RE100で認められる再エネ調達方法
  3. RE100技術基準の動向
  4. まとめ

1.RE100概要

RE100(100% Renewable Electricity)とは、The Climate Group がCDP とのパートナーシップのもとで主催する、世界で影響力のある企業が事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする協働イニシアチブである。2024年7月時点、日本国内では88社、グローバルでは432社が参加しており、日本国内の地域パートナーである「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」が日本企業の参加を支援している。

RE100の参加要件は以下のとおり。
①消費電力量が年間100GWh以上(日本企業は50GWh以上に緩和されている)
 消費電力量が年間50GWh以下の場合は「再エネ100宣言 RE Action」を推奨
②自社事業で使用する電力(GHGプロトコルのScope2およびScope1の電力消費)の100%再生エネ化に向け、期限を切った目標を設定し、公表する
 例:「2050年までに100%、中間目標2030年60%、2040年90%」「2030年までに100%」等
③グループ全体での参加及び再エネ化にコミットする (一番上の親会社から見て、支配率50%以上の子会社全てが対象)

ただし、化石燃料推進、再エネ普及を妨害するロビー活動、化石燃料資産増加の取組み、人権侵害や犯罪行為等を行う企業、化石燃料、航空、軍需品、ギャンブル、タバコ産業にのみ属する企業、主要な収入源が電力関連事業の企業は参加対象外である。

RE100進捗状況の報告は、2023年よりCDPでの回答により行うこととなった。報告内容は、企業情報(売上など)、 目標(再エネ目標・戦略・ロードマップ)、 実績(消費電力量、再エネ購入量、再エネ発電量)で、 第三者監査の受審が推奨される(必須ではない)。

2. RE100で認められる再エネ調達方法

RE100で認められる再エネは、風力、太陽光、地熱、持続可能なバイオマス(バイオガス含む)、持続可能な水力の5種類である。水素やエネルギー貯蔵は、製造において再生可能エネルギーを使用する場合のみ再生可能となることから、再エネに含まない。

RE100で認められる再エネ調達方法は以下のとおり。
1)企業が保有する設備における自家発電
オンサイト、オフサイト、グリッド連系、オフグリッドを問わず、自ら保有する再エネ発電設備による再エネ供給。
日本国内では、オンサイトの太陽光発電自家消費、太陽光発電の自己託送の導入が主流である。

2)直接調達(発電事業者との契約)
2.1)物理的電力購入契約(物理的PPA(Power Purchase Agreement,電力購入契約))
需要家と発電事業者の間の契約により、第三者が所有する敷地内のプロジェクト(オンサイトPPA)、直接自営線で接続される敷地外のプロジェクト(オフサイトPPA(自営線))、系統に接続している敷地外のプロジェクト(オフサイトPPA(商用系統経由))からの再エネ供給。通常は長期間の契約となる。
日本国内では、太陽光のオンサイトPPA、または需要家と発電事業者の間にプロジェクトからの電力のオフテイクを担当する第三者(小売電力事業者)を加えた三者間のオフサイトPPA(太陽光、風力)が主流となっている。

2.2)金融(仮想)電力購入契約(金融/仮想PPA)
需要家と発電事業者との差金決済により、発電事業者が卸売市場に発電量を変動価格で販売するリスクを引き受ける見返りにエネルギー属性を受け取る契約。通常は長期間の契約となる。金融商品であり、需要家は事業用の電力を別途調達する必要があることから、以下に記述する4)電力と分離されたエネルギー属性証明(EACs)の調達の一形態である。
2022年以降、日本国内でもVPPA(Virtual Power Purchase Agreement,仮想電力購入契約)の導入事例が発表されている。

3) 電力サプライヤーとの契約
3.1)電力サプライヤーとのプロジェクト固有の供給契約
サプライヤーが需要家のために特定のプロジェクトから電力を調達する。サプライヤーは発電事業事業者との電力購入契約(PPA)を保持するため、通常は長期間の契約となる。

3.2)電力サプライヤーとの小売供給契約
需要家はサプライヤーへ追加的にkWhあたりのプレミアムを支払い、サプライヤーは需要家にEACs を譲渡する、または需要家のために償却する。供給のエネルギー属性についての透明性が比較的低く、一般的に契約期間は短い。
日本国内では、電力会社とのトラッキング付FIT非化石証書付の再エネ電力メニュー契約が普及している。

4 )電力と分離されたエネルギー属性証明(EACs)の調達
需要家は仲介業者や取引プラットフォームを通じてEACsを購入し、別途購入した系統電力と組み合わせることで、EACsの属性を持つ電力の消費を主張する。EACsは需要場所と同じ電力市場で発行されたものである必要がある。
日本国内ではトラッキング付再エネ非化石証書、J-クレジット、グリーン電力証書がRE100で認められている。

5 )受動的調達 (日本は該当しないため説明省略)
5.1) エネルギー属性証明(EACs)によって裏付けられた系統からのデフォルト再エネ電力供給
5.2 )再エネ電力の配分を行う仕組みがないが、再エネが 95%以上の市場の系統におけるデフォルト契約における再エネ供給

3.RE100技術基準の動向

市場の変化や新しい再エネ電力調達に対応するため、RE100は2年毎に技術基準を改定している。直近の改定は2022年で、2024年1月1日より以下の項目が適用された。
① 再エネ調達方法の改定
② EUにおける再エネ単一市場の定義変更
③ 再生可能電力購入のための15年間の試運転または再電力供給の日付制限の導入(=「15年ルール」)

2026年より適用される改定案は、以下のとおり検討中である。
①再生可能燃料と非再生可能燃料の混焼または混合に関する基準
RE100の技術基準では、5%の持続可能なバイオマスを混焼する石炭火力発電所や、50%の再生可能水素を消費する燃料電池によって生成された電力の再生可能部分を購入できる。一方で、再生可能燃料と非再生可能燃料の同時燃焼または混合は、気候リスクを引き起こす可能性があることから、再生可能燃料と非再生可能燃料の混焼または混合に関する基準を検討している。

②EACsが利用可能な市場の送電網から購入するすべての再生可能エネルギーに対してEACsを要求
RE100はEACs以外の契約手段による再エネ利用を認めているが、EACs以外の契約文書は標準化されておらず、効率的または透過的に再エネの情報を需要家に伝達できない可能性がある。そのため、EACsが利用可能な市場の送電網から購入する再エネについて、EACsの要求を検討している。

③施設の年齢制限に対するオリジナルオフテイカー免除を緩和するための証拠の要求
RE100 の技術基準では、系統から購入する再エネについて、運転開始または再給電から15年間の期限を指定している。「最初のオフテイカーとして企業バイヤーが保有する長期のプロジェクト固有の契約」の場合、15年間の制限を免除されるが、RE100 は「オリジナルオフテイカー」を定義していない。そのため、プロジェクトの稼働後に開始されるオフテイク契約や、プロジェクトの試運転前に署名されていないオフテイク契約の場合、本来のオフテイカーではない企業がオリジナルオフテイカーであると主張する可能性がある。そこで、「オリジナルオフテイカー」を「プロジェクトによって生成された再生可能電力を運転開始または再給電時に購入して使用する最初の企業」と定義する案が検討されている。

④技術基準のセクション 4 を変更する提案を募集
既存のものを修正、または既存のものを複数のタイプに分ける場合は、既存のものが適切ではない理由を提示する。新規追加の場合、既存の定義に当てはまらない理由を説明する。提案された調達タイプをレビューするために必要なすべての情報とともに、市場別の具体的な例を提供する。

4.まとめ

RE100は世界で影響力のある企業が事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする協働イニシアチブとして発足し、市場の変化や新しい再エネ調達に対応するため、2年毎に技術基準を改定してきた。日本政府もRE100技術基準やその他世界の情勢に対し、非化石証書市場への需要家の参加を認める、非化石証書の情報に運転開始日を追加する等の対応を行ってきた。その結果、国内の再エネ調達についても、太陽光設置、小売グリーン電力、J-クレジット、グリーン電力証書が主流であったものが、オンサイトPPAやトラッキング付再エネ非化石証書による調達が増加し、近年ではオフサイトPPA、VPPAも可能となっている。
今後の課題としては、非化石証書については需要増に伴う供給量不足や価格高騰、オフサイトPPAについては発電適地と需要地が異なること、系統の空き容量、部分供給見直しに伴う代替制度への対応、VPPAについては、発電事業者と需要家との間の契約内容の交渉や、会計処理等の課題が想定されるため、継続してRE100の基準や制度改正の動向を注視し、柔軟な対応が必要である。


【参考資料】
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)
JCLP よくあるご質問
RE100
RE100 ガイダンス・FAQ
RE100 Reporting Guidance 2024
Open consultation around proposed changes to the RE100 technical criteria

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