CDPは最も著名なESG評価制度の1つであり、水セキュリティ関連の開示を行う企業数も年々増加している。一方で、近年はより詳細な開示や目標設定が求められるようになってきている。
ここでは、CDP2024質問書(水セキュリティ)の振り返りと、評価向上のポイントについて解説する。
目次
- CDP2024質問書(水セキュリティ)の概要
- グローバル・スタンダードとの整合
- モジュール別のスコア向上ポイント
3-1 モジュール5:事業戦略(水セキュリティ関連)
3-2 モジュール9:環境パフォーマンス(水セキュリティ関連) - まとめ
1. CDP2024質問書(水セキュリティ)の概要
CDPによると、水セキュリティの質問には9,666社が回答した。2023年と比較すると倍増しており、水セキュリティの分野でも世界的な開示要求の高まりがうかがえる。
2024年の質問書では、以下の図のようにテーマ横断型の質問モジュール(1~6および13)と環境テーマごとの質問モジュール(水セキュリティはモジュール9)が設置されており、水セキュリティに関しては、テーマ横断型の質問モジュール5等においても、重要な取り組みを開示することが求められる水セキュリティ特有の設問がある。また、グローバル・スタンダードに整合するよう、質問が追加・改訂されている。
2. グローバル・スタンダードとの整合
CDP質問書は、グローバル・スタンダードといった国際的な情報開示規制・枠組みとの整合性が強化される流れにある。具体的にはESRS(欧州サステナビリティ報告基準)、IFRS(国際会計基準)、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)等がある。その一環として、2024年の質問書では水セキュリティに関連して、下表のような質問が追加、改訂された。2025年以降も引き続き、グローバル・スタンダードとの整合性が強化されていく見通しである。
【CDP2023から追加された主な質問】
質問No. | 質問内容 | 関連する枠組み |
1.24 | バリューチェーンマッピング | ESRS |
2.2.7 | 依存、インパクト、リスク、機会間の相互関係の評価 | ESRS、TNFD |
2.3 | 優先地域 | ESRS、TNFD |
3.1.2 | 脆弱な財務指標 | IFRS 、TNFD等 |
4.11.1 | 政策立案者との直接エンゲージメント | ESRS、TNFD等 |
【改訂された主な質問】
質問No. | 質問内容 | 関連する枠組み |
2.2 2.2.1 2.2.2 |
依存、インパクト、リスク、機会を特定・評価・管理するプロセス | TNFD、CEO Water Mandate等 |
4.1.2 | 環境課題に説明責任を負う役職または委員会 | ESRS、IFRS、TNFD等 |
4.2 | 取締役会の環境課題に対する能力 | ESRS、 IFRS、TNFD |
4.3.1 | 環境課題に責任を負う最上位の役職または委員会 | ESRS、IFRS、TNFD等 |
4.5 | 環境課題の金銭的インセンティブ | ESRS、IFRS等 |
4.6 4.6.1 |
環境方針 | ESRS、CEO Water Mandate等 |
4.11 | 政策、法律、規制に対する活動 | TNFD、CEO Water Mandate等 |
5.1.1 | シナリオ分析の詳細 | ESRS、TNFD等 |
3. モジュール別の評価向上ポイント
水セキュリティ関連で重要なモジュール5(事業戦略)とモジュール9(環境パフォーマンス)について、代表的な質問と、評価を向上させるためのポイントを解説していく。
3-1. モジュール5:事業戦略(水セキュリティ関連)
シナリオ分析と移行計画を含めた環境課題の事業戦略への組み込み、バリューチェーンエンゲージメントについて開示
3-2. モジュール9:環境パフォーマンス(水セキュリティ関連)
水関連の実績、目標とそれを達成するための計画・行動について開示
4. まとめ
CDPは2025年3月に、気候関連の質問群とESRSとの間の詳細な対応マッピングを発表するなど、国際的な情報開示規制・枠組みとの整合性を強化している。水セキュリティの分野にもこの動きは広がると予想され、より詳細なデータや具体的な目標の開示、バリューチェーン全体にわたる取り組みが求められていくと考えられる。そのため、企業は国際的な情報開示の基準も参照しながら、水に関する自社およびバリューチェーンにおける取り組み内容を精査し、CDP2025の回答に備えることが望ましい。
【参考資料】
・Charting the Change: Disclosure Data Dashboard – CDP
・CDP2024 コーポレート質問書概要
・CDP and EFRAG publish correspondence mapping between CDP question bank and European Sustainability Reporting Standard E1 – CDP
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