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広域認定制度の経営メリットと具体的な取得プロセス

2023年8月28日の記事『広域認定制度活用による製品の広域収集のススメ』にて、製品メーカーにとってサーキュラーエコノミー(循環経済)への取り組みのファーストステップとなる製品の広域収集に焦点を当て、広域認定制度の活用状況と動向を解説した。本稿では、その内容をさらに深掘りし、広域認定制度の経営メリットと具体的な取得プロセスに焦点を当ててわかりやすく解説する。特に、脱炭素社会の実現に不可欠な再生可能エネルギー関連製品、中でもリチウムイオン電池への適用に注目し、その戦略的な優位性を詳述する。

目次

  1. サーキュラーエコノミーの鍵を握る「広域認定制度」の戦略的活用
  2. 広域認定制度がもたらす4つの経営メリット
  3. 広域認定取得のロードマップ
  4. 活用例:再生可能エネルギーとリチウムイオン電池の戦略的リサイクル
  5. 企業の未来を拓く、戦略としての広域認定制度

1. サーキュラーエコノミーの鍵を握る「広域認定制度」の戦略的活用

近年高まる環境要請に応えるため、製品メーカーには拡大生産者責任がますます求められるようになっている。法規制への対応はもちろんのこと、環境配慮型製品の設計、サプライチェーン全体でのトレーサビリティ確保、そしてリユース・リサイクルを前提としたサービス設計など、多岐にわたる課題への同時進行的な取り組みが求められる時代である。これらの要求を一度に満たすことは現実的ではなく、企業は戦略的に優先順位を設定し、段階的な移行を進めることが重要である。
そのファーストステップとして、製品メーカーが取り組むべき喫緊の課題の一つは、製品の広域収集と適正処理であると考えられる。この課題を解決し、企業の事業活動と環境保全を両立させるための有効な手段が、環境大臣が認定する「広域認定制度」である。これは、製品の製造・販売事業者が自ら製造した製品が廃棄物となった場合に、複数の都道府県をまたいで広域的に回収・処理を可能にするという、廃棄物処理法に基づく特例制度である。

2. 広域認定制度がもたらす4つの経営メリット

広域認定制度の活用は、単なる廃棄物処理の効率化に留まらない。企業の持続可能性を高め、競争優位性を確立するための重要な経営戦略となり得る。具体的には、以下の4つのメリットがもたらされる。

①事業効率の最適化とガバナンス強化
広域認定を取得することで、都道府県ごとの廃棄物収集運搬・処分業の許可が不要となる。これにより、複数の地方自治体との間で発生していた煩雑な手続きや契約が不要となり、管理業務が飛躍的に効率化される。また、全国の拠点から排出される廃棄物の処理を一元管理できるため、社内のガバナンスが強化され、コンプライアンスリスクを大幅に低減することが可能となる。

②企業価値の向上とステークホルダーエンゲージメント
環境大臣からの認定は、企業の廃棄物管理における高い専門性と責任感を示す。これは、消費者、取引先、投資家といった多様なステークホルダーからの信頼を獲得するための重要な要素となる。ESG投資の重要性が高まる中、広域認定は企業の非財務情報価値を高め、ブランドイメージの向上に直結する。

③新たなビジネスモデルへの転換
広域認定制度は、製品のリサイクルを促進し、サーキュラーエコノミーへの移行を加速させる。回収した製品から資源を回収・再利用することで、原材料調達コストの削減や、付加価値の高いリサイクル製品の創出が可能となる。これにより、廃棄物処理というコストセンターを、新たな収益を生み出すプロフィットセンターへと変革させる潜在力を秘めている。

脱炭素関連市場での戦略的優位性
政府の推進する脱炭素政策において、広域認定は非常に重要な位置づけにある。認定取得は、環境負荷低減への積極的な貢献を示すものであり、各種補助金制度や長期脱炭素電源オークションにおいて、要件の一つとなるケースが増加している。これにより、企業は市場における競争力を高め、新たな事業機会を獲得する優位性を得られる。

3. 広域認定取得のロードマップ

広域認定取得のプロセスは、多くの専門知識を要し、体系的な計画策定が不可欠である。以下に示すステップは、単なる手続きではなく、事業の信頼性と実行可能性を確立するための重要なフェーズとなる。

ステップ①事前準備と計画策定
廃棄物の種類、排出量、収集ルート、そしてリサイクル・処分方法まで、事業全体を俯瞰した広域認定計画を策定する。特に重要なのは、排出事業者が自ら処理を行うという制度の趣旨に基づき、委託先の選定、運搬ルートの構築、施設処理能力の確保など、計画の実行可能性を徹底的に検証することである。

ステップ②環境省への申請と審査対応
ステップ①で策定した計画を、環境省が求める申請書類に落とし込み提出する。この段階では、計画の実現性、環境保全への配慮、安定的な事業継続性などが多角的に審査される。計画の不備や、追加で必要な情報については、環境省や連携パートナーとの綿密なコミュニケーションを通じて、一つ一つ丁寧に解決していく必要がある。

ステップ③認定後の運用と報告
認定取得はゴールではなく、計画に基づいた適正な運用が求められるスタート地点である。計画の変更が生じた場合は、その都度、環境省への届出が必要となる。また、定期的な処理実績の報告義務も発生するため、内部管理体制を構築し、透明性を確保することが不可欠である。

4. 活用例:再生可能エネルギーとリチウムイオン電池の戦略的リサイクル

脱炭素社会の実現に向けて、太陽光発電や風力発電の導入が進む中、発電量の変動を調整するための電力貯蔵システム(Energy Storage System, ESS)の需要が急増している。これらのシステムに不可欠なリチウムイオン電池は、そのライフサイクル全体での環境負荷管理が喫緊の課題である。
広域認定制度は、この課題に対する最適なソリューションを提供する。全国に分散設置された使用済みリチウムイオン電池を、広域認定を活用して効率的に一括回収し、有価金属を高度に回収・再利用するリサイクルプロセスへとつなげることが可能になる。
これは、廃棄物処理のコストを低減するだけでなく、リサイクルされたコバルトやニッケル、リチウムといった希少金属を再び市場へ供給し、電池製造などへ活用していくクローズドループサプライチェーンの構築に貢献する。この取り組みは、資源の枯渇リスクを低減し、サプライチェーンの安定性を高めるという点で、企業の競争力に直結する戦略的な取り組みとなる可能性を秘めている。

5. 企業の競争力を高める、戦略としての広域認定制度

本稿では、広域認定制度が単なる廃棄物処理の効率化に留まらず、企業の経営戦略そのものに深く関わるものであることを解説した。煩雑な管理業務の効率化やコスト削減に加えて、企業のブランド価値向上、新たなビジネスモデルの創出、そして脱炭素関連市場での優位性獲得といった、多岐にわたるメリットをもたらす制度である。
特に、リチウムイオン電池をはじめとする再生可能エネルギー関連製品のライフサイクル管理においては、その戦略的価値は非常に高い。広域認定制度を適切に活用することで、企業は資源循環の担い手となり、持続可能な社会への貢献と、経済的成長を両立させることが可能になる。

【参考資料】
広域認定制度関連 | 環境再生・資源循環 | 環境省

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事例:広域認定制度の活用による廃マットレスの回収100%再資源化


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