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COP21の背景・概要・キーワード

COP21を起点に社会が大きく動きつつあります。ここでは、COP21の背景・概要・キーワードについてみていきます。

そもそもCOP21とは、気候変動問題の原因である大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を目標として1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」の第21回目の締約国会議(Conference of the Parties, COP)のことをいいます。

COP21では、「パリ協定」という協定が採択されました。これは、196か国・地域が参加する気候変動対策に関する初の世界的枠組みであり、参加国の排出量は、全世界排出量の9割超に上ります。京都議定書(COP3で採択)でカバーする排出量は全世界排出量の3割にも満たなかったことを鑑みると、その差は歴然であり、世界の気候変動対策は歴史的な転換点を迎えたといえます。COP21の背景とCOP21で採択されたパリ協定のポイントは下記の通りです。


【COP21の背景】

  • 気候変動分野に関する世界的な権威といえるIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change, 気候変動に関する政府間パネル)により、温室効果ガスの累積排出量が気候変動の原因となること(温室効果ガスは一旦排出されると長期間大気中に滞留する)、及び気候変動による深刻な被害(例:自然災害増加、農作物の収量激減、海面上昇による土地・国家消失、ひいては経済的かつ人的な多大な損害)を回避するためには、今世紀末までの気温上昇を産業革命前と比べて2℃未満に抑えなければならず、そのためには、今世紀中の脱炭素化(温室効果ガス排出ネット0)が必要であることがほぼ結論付けられていた(2050年時点では41%~72%削減)。
  • 上記の通り、人類が存続できる社会を維持するためには、全世界の排出量を早期にゼロに近づけていく必要があり、過去のCOPのように先進国に限定された議論にとどまらず、途上国を含む全世界的な新たな枠組みの合意が必要という認識が広まっていた。


パリ協定のポイント】

  • 法的拘束力を持つ枠組み。産業革命前からの気温上昇を「2℃未満」に抑えるという国際目標が明記。島嶼国が求める「5℃未満」も努力目標として明記
  • 世界全体の温室効果ガス排出量をできるだけ早く減少に転じさせ、今世紀後半には実質的にゼロにすること(脱炭素化)が盛り込まれた
  • 目標達成の義務化は見送られた。但し、途上国も含めた全ての国が5年毎に温室効果ガスの削減目標を国連に提出し、対策を進めることが義務づけられた。削減目標は提出するたびに改善されるべきとしたほか、排出量の実績等について専門家の検証を受けることも盛り込まれた
  • 途上国への資金支援に関し、先進国が拠出する目標額を協定自体には盛り込まず、法的拘束力のない別文書に、年間1,000億ドルを下限として新しい数値目標を2025年までに設定するとされた
  • 経済力がある新興国等も自主的に資金を拠出できるとしたほか、先進国は資金支援の状況を2年に一度報告する義務が盛り込まれた

近年のCOPでは、本会議が行われる会場の周辺で多数のビジネスイベントが行われます。これらビジネスイベントは、今後の社会的潮流という観点で、非常に重要な位置づけとなります。COP21では、過去に例のない規模で大企業のCEOクラスが集結し、自社のビジョンやカーボンプライシング等の政策に関する活発な議論が行われました。また、有力な機関投資家や金融機関も多数参加しました(但し、日本企業のCEOの参加やプレゼンテーションはほとんどなかった。アジア諸国の中では、中国やインドが存在感を示していた)。これらビジネスイベントでは、社会経済システムの抜本的な変革が必要であることや、座礁資産問題、カーボンバブル、化石燃料補助の廃止、再エネの徹底的な導入、科学的目標設定、カーボンプライシング、及びバリューチェーンにおける脱炭素化といったキーワードが再三提言されました。これらのキーワードは、今後の重要なトレンドといえます。さらに、各企業の気候変動対応を明らかにするレポーティングフレームワークの重要性も提言されました。

上記キーワードに関連する潮流や企業の取組みについて、本カーボンアドバイザーにて順次紹介していきます。