プラスチック資源循環促進法(プラスチック新法、以下プラ新法)が4月1日に施行された。同法では、①設計・製造、②販売・提供、③排出・回収・リサイクルの各ライフサイクルにおいて、プラスチックの資源循環を促進するための措置事項が定められている。今回は③排出・回収・リサイクルのうち、排出事業者における取り組みについて解説する。
「排出事業者による排出の抑制・再資源化等」の概要
小規模企業者等を除くすべての排出事業者(事務所、工場、店舗等で事業を行う多くの事業者が対象)にプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制・再資源化等に取り組むことを求めるもので、判断基準・取り組み内容が示されている。②販売・提供の項目と同様、主務大臣が必要に応じて指導及び助言を実施し、取り組みが著しく不十分な場合(多量排出事業者のみ)には、勧告・公表・命令を行う仕組みである。排出事業者は再資源化事業計画を作成し、主務大臣の認定を受けることで、廃棄物処理法上の廃棄物処理業の許可がなくても再資源化事業を行うことができる。
プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が前年度250トン以上の場合は多量排出事業者に相当し、排出の抑制・再資源化に関する目標設定、および目標達成のための計画的な取り組みの実施も求められる。
また、以下の場合は小規模企業者等となり、主務大臣が作成する「判断基準」の対象外となる。
- 常時使用する従業員の数が20人以下の、商業・サービス業以外の業種に属する事業を主たる事業として行う個人・会社・組合等
・常時使用する従業員の数が5人以下の、商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として行う個人・会社・組合等
「排出事業者のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進に関する判断の基準の手引き」におけるポイント
排出事業者が取り組むべきとされる項目は以下のとおりである。
(1)排出の抑制・再資源化等の実施の原則
(2)排出の抑制に当たって講ずる措置
(3)再資源化等に当たって講ずる措置
(4)多量排出事業者の目標の設定・情報の公表等
(5)排出事業者の情報の提供
(6)本部・加盟者における排出の抑制・再資源化等の促進
(7)教育訓練
(8)実施状況の把握・管理体制の整備
(9)関係者との連携
(10)約款の定め
ポイント①排出量算出の対象
事業活動に伴って排出されたプラスチック産業廃棄物が該当する。消費済み廃棄物および消費前の製造残渣等のどちらの産業廃棄物も対象となるが、一般廃棄物や単一素材等の有価物は含まれず、例えば、下記が対象物・非対象物として挙げられる。
- 一般的なオフィス:事業活動の際に排出される文房具など。飲食に伴う弁当がらなどは、自治体によって扱いが異なる。産業廃棄物であれば対象となるが、一般廃棄物として処理するのであれば対象外となる。
・工場や店舗:事業活動に伴って生じるプラスチック製端材や緩衝材等など。ただし、有価物として売却されるものは対象外となる。
・排出事業者から排出される有価物:排出事業者から委託された有価物について、中間処理業者が再資源化処理を行い残渣が出た場合、委託元の排出事業者ではなく、再資源化等を行った中間処理業者の排出量に含まれる。
ポイント②排出量の算出方法
外部に処理委託した産業廃棄物だけでなく、排出事業者が自らその処理や再資源化等を行った量も排出量に含まれる。算出方法は、下記のように廃棄物の取り扱い方法によって異なる。
- 脱水等の減量操作を加える場合:脱水等の操作を行う前の排出重量で算出する。ただし、生産工程内に脱水等の操作がある場合、生産工程から排出された時点の重量となる。
- 排出量を体積ベースで管理している場合:重量換算係数(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター)を用いて算出する。
総量の算出方法:排出量の総量は、以下①~④項目の集計値である。
①自ら再資源化等を行った量
②自ら埋め立て処分した量
③自ら中間処理した量(熱回収・再資源化・埋立など)
④直接外部へ処理委託した量
実務的な算出方法の具体例は以下のとおりである。
- 帳簿等を活用する場合:工程管理表や在庫管理表といった帳簿等で管理している、プラスチック産業廃棄物の量を計算する。原材料の一部にでもプラスチックが利用されていれば、その製品全体の量が対象となり、すなわちプラスチック使用比率の按分はしないものと考えられる。
- 産業廃棄物管理票(マニフェスト)を活用する場合(外部に産業廃棄物の処理を委託している場合に限る):マニフェストに記載する「廃プラスチック類」の量で計算する。マニフェスト上、「廃プラスチック類」と「金属くず」の「混合物」として重量を記載している場合であって、排出事業者の責任で合理的に説明できる値で按分することが可能なら、「混合物」の量から「金属くず」の量を除いても構わない。按分できない場合は、「混合物」の量を排出量として計算する。ただし、上記a.の通り、生産工程外で減量操作を加えた場合、減量する前の重量を用いる。
ポイント③再資源化等で求められる処理方法
プラ新法の目的上、プラスチックのマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルといった高度リサイクルが優先され、熱回収は再資源化を実施することができない場合にのみ可能となる。
ポイント④排出事業者が公表する情報
排出事業者および多量排出事業者が公開すべき項目は表のとおりである。
(4)(5)排出事業者の情報
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(4)多量排出事業者 |
(5)排出事業者※ |
公開頻度 |
毎年度 |
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特記事項 |
目標設定:排出の抑制・再資源化等の目標を定め、計画的に取組む |
ー |
公開内容 |
①前年度の排出量 |
|
②目標の達成状況に関する情報 |
②排出の抑制及び再資源化等の状況に関する情報 |
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公開手段 |
インターネット等(IR・サステナビリティレポートなど) |
※(5)排出事業者:多量排出事業者および小規模事業者等以外の排出事業者
なお、多量排出事業者が設定する目標には、明確な数値基準や期間の区切りはないが、達成するための取り組みを「計画的」に行うことが同時に求められるため、実現可能な目標値の設定が必要である。
【参考資料】
「『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』の普及啓発ページ」環境省
排出事業者のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の 抑制及び再資源化等の促進に関する判断の基準の手引き
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