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中国におけるEV向け充電設備の現状【前編】

〈目次〉

  1. 中国におけるEV向け充電設備の台数
  2. 充電設備の技術
  3. 公共充電設備不足の現状
  4. 公共充電設備不足の要因

1.中国におけるEV向け充電設備の台数

2022年1月18日に中国電気自動車充電設備促進連盟が発表した「2021年中国におけるEV充電設備の運営状況」によると、2021年末時点で、中国の家庭用充電設備と公共充電設備の総保有台数は261.7万台に達し(前年対比170.1%)、充電総電力は111.5億kWhに達した(前年対比158.0%)。

2020年に比べ、充電設備の増加量は93.6万台で、そのうち公共充電設備の増加量が34万台(前年対比189.9%)、家庭用充電設備は59.7万台増加しており(前年対比423.9%)、EVの充電需要が急速に増加し続けていることがわかる。

充電設備の種類別にみてみると、2021年末時点の公共充電設備114.7万台のうち、直流(DC)充電設備が47万台、交流(AC)充電設備が67.7万台、交直流一体充電設備が589台となっている。

しかし、公共充電設備の整備状況には地域差があり、2021年の実績によると、充電設備台数の多いトップ10地域は広東、上海、江蘇、北京、浙江、山東、湖北、安徽、河南、福建で、これらの地域に建設された公共充電設備の台数が、全体の71.7%を占めている。

2.充電設備の技術

この6年余りの間に、EVの急速充電技術は著しく進展した。かつては、通常3~4時間程度の充電時間が必要だったが、現在では最速30分でフル充電できるようになっている。急速充電技術がEVの所有者に大きな利便性をもたらしたことも、EVが急速に個人消費者に認められ、普及した重要な要因である。
現在、急速充電技術には2通りの方法があり、1つは「高出力」技術、もう1つは「高電圧」技術である。「高出力」技術はテスラが独自に開発したもので、「V2」と呼ばれるスーパーチャージャーの最大出力は150kw、さらに進化した「V3」の最大出力は250 kW まで向上した。「高電圧」技術については、現在は400Vにとどまる充電設備が主流だが、一部のメーカーでは既に800 V対応の設備を提供している。

3.公共充電設備不足の現状

2015年11月18日、発展改革委員会エネルギー局工業情報化部と住宅都市農村建設部が共同で発表した「電気自動車充電基礎施設発展指南(2015-2020年)」 では、2020 年までに、約500万台のEVの充電需要を満たすために、EV向け充電設備の台数を480 万台以上にする目標が設定されている。

しかし実際には、2021年末時点の中国のEV保有数が640万台であるのに対し、充電設備は約262万台で目標台数の約半分にとどまっており、予想を超えてEVが普及したのに対し、充電設備の建設が間に合っていないのが現状である。特に冬季は、携帯電話の電池の減りが早まるのと同様に、低温によりリチウムイオン電池内の導電性が悪くなり、航続距離が他の季節と比べて短縮してしまうため、充電需要が増加するが、特に高速道路や農村地域での充電設備の不足が顕著となっている。

4.公共充電設備不足の要因

公共充電設備が不足している主な要因としては、季節や条件によって充電需要が異なることなどが考えられ、例えば下記の3つが挙げられる。

1.季節による充電需要の違い
そもそも、大都市における商業施設などEVの充電需要が高い地域では、土地の賃借料が高く、充電設備を運営する企業にとっては運営コストが割高となり、大規模な充電設備を建設するのが難しいのが現状である。さらに、EVは夏と秋の充電頻度が比較的低いのに対し、前述のように春や冬の低温下では充電頻度が高くなるが、最も充電頻度が高まる冬季の充電需要に応じて充電設備を設置した場合、それ以外の季節で採算が合わなくなるため、企業はそのような投資は行わないのである。

2.平日と週末(及び祝日)による充電需要の違い
平日は高速道路で走るEVが比較的少なく、また農村地域でEVを保有している場合は家庭用充電設備で賄えるため、平日は地域の公共充電設備の使用頻度が低い。しかし、週末や祝日になると、都市部から農村部へ向かう旅行や帰省 のために利用されるEVが大幅に増加し、充電の順番を待つ長蛇の列が見られる状況が発生してしまう。しかし、週末や祝日の需要に合わせて充電設備を運営すると、平日は週末ほどの需要がないため、赤字状態に陥ってしまう。

3.新規格と旧規格EVによる充電需要の違い
現在マーケットで流通しているEVの中には、急速充電設備に対応していない車種があるため、充電設備を運営する企業は、一ヶ所の充電スポットに設置する充電設備全てをいきなり急速充電設備にすることはできず、旧規格のEV車種の充電需要と両立させる必要がある。そのため、限られた数の充電設備の中、異なる規格のEV所有者の需要を満たす充電設備の数は、より不足しているように感じると考えられる。

【後編】では家庭用充電設備の不足問題について解説する。


【参考資料】
关于印发《电动汽车充电基础设施发展指南(2015-2020年)》的通知
电动汽车充电基础设施发展指南 (2015-2020 年)
快充的不同路线和技术升级,给车主带来的充电烦恼和车辆贬值损失
2021年中国新能源汽车产销及公共充电桩数量现状分析

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