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中国におけるEV向け充電設備の現状【後編】

【前編】では、中国におけるEV向け充電設備の台数、技術、公共充電設備の現状について解説した。【後編】では、家庭用充電設備に焦点を当て、設置時の正規の手順、手順に沿って設置する際に生じる課題及び設置困難によって起きる問題について解説する。

〈目次〉

  1. 家庭用充電設備設置の正規の手順
  2. 家庭用充電設備の設置にあたり発生する課題
  3. 家庭用充電設備の設置困難によって起きる問題

1.家庭用充電設備設置の正規の手順

中国において、家庭にEV用充電設備を設置するにあたっての基本的な手順は、以下のとおりとなる。

    1. 申請者が固定の駐車スペースを確保した上で、申請者名義のEV購入意向表明書、身分証明書、不動産管理会社の同意書、駐車スペース周囲環境の図面を、メーカーもしくはディーラーに提出。
  1. 購入するEVを販売するメーカーもしくはディーラーによる提出書類の確認後、電力会社が駐車スペースの現場を調査し、設置可能か否かの判断を行う。
  2. EV購入契約書及び電気使用申込書を電力会社に提出後約一週間で、電力会社から設置に関する提案が行われ、申請者は、提案で指示される手続きを期限内に行う。
  3. メーカーもしくはディーラーに、約3営業日で充電設備を設置してもらう。
  4. 電力会社に、設置工程に関する記録書類を提示したうえで、検収が行われる。問題がなければ、電力会社が充電設備にメーターを取り付ける(メーターの取り付けは無料)。

2.家庭用充電設備の設置にあたり発生する課題

1. 古い団地では管理会社からの同意を得るのが困難

比較的新しい団地であれば、EV充電設備の設置を考慮した設計が、その団地を開発した段階で組み込まれているため、管理会社の同意を得ることは、さほどハードルの高い問題ではない。それに対し、築年数の経っている古い団地では、EV充電設備の設置を想定した構造になっていないため、通常の電圧(220V)よりも高い電圧(380V)を使用するEV充電設備の場合は、安全面で発火リスクがあり、消防署の定期検査で問題視されるだけでなく、万が一の事故の際には罰金などの罰則があるため、簡単に同意を得ることができないという課題がある。

2. 設置費用に明確な基準がなく、異常に高額な請求を受ける場合がある

これも、比較的古い団地でしばしば見受けられる問題である。1つの団地内で管理されるマンションや一軒家(中国では、1つの団地の中に低層マンション、高層マンション、一軒家が混在していることがある)が使える電力の負荷の総量は、不動産建設開始時に既に決められており、もしEV充電設備を設置することにより、必要とする総電力負荷が現時点で耐えられる負荷をオーバーする場合は、その増加分のための新たな設備を設置しなければならない。その費用は設置を申請する者が負担する必要があり、費用の額については管理会社が決定しそれに従うこととなるが、少なくとも1万元(約18万円)はかかるといわれている。さらに、このほかに管理会社から追加の管理費を徴収される場合がある。

3. 他の住民からクレームを受け、トラブルに巻き込まれる恐れがある

EV充電設備を設置する場合、既存の駐車スペースを拡大したり、改装したりする必要がある可能性がある。たとえ周囲の駐車スペースの広さ自体に変化がなくても、空きスペースだった場所が以前より狭くなったり、充電ケーブルが邪魔になるなど、他の駐車場使用者が駐車しにくくなる恐れがある。その場合は、駐車に影響を受けた住民が管理会社にクレームを入れ、交渉をすることになるが、両者とも妥協しない場合は、その後のトラブルに繋がりやすい。

3.家庭用充電設備の設置困難によって起きる問題


このように、正規の手順で手続きを行い充電設備を設置しようと試みても、上述のように管理会社からの同意が得られないことなどを理由に、無許可で充電設備が設置されるケースが発生している。この場合、電力会社によるEV充電用のメーターの設置が行われず、家庭電源用のメーターが使用されることになるため、EV充電時の過負荷により、最悪の場合火災が発生する恐れがある。


また、固定駐車スペースがないために、そもそも上記の正規の手順に沿って申請できない場合も、無許可で充電設備を設置する一つの要因となる。この場合、常に充電設備に近い位置に駐車できるとは限らないため、長い充電ケーブルを使うことで通行道路を跨ぐなどして人や車の走行を妨げたり、転倒を招くなど事故につながる恐れがある。

前編】から解説してきたとおり、中国ではEVと充電設備の台数が順調に増加しているが、公共設備、家庭用ともに、課題も多く存在している。脱炭素化に向け世界的にEVの普及が進む中、日本も諸外国の事例を学びながら、課題に取り組むことになるであろう。

【参考資料】

电动生活 安装私人充电桩到底有多难

小区里的私装充电桩为何屡禁不绝?竟能绕开物业“报备”

2022两会|全国人大代表吴翔: 加快推动居民区电动汽车充电设施发展

全国人大代表沈方勇: 将电动汽车充电桩建设纳入老旧小区改造

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