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2021年03月19日 (金)
デューデリジェンス
解説

EUデューデリジェンス法のポイント

 

2021年3月10日、欧州議会はEUデューデリジェンス法を求める採決を行い、多数の賛成で可決した。これにより、近い将来、サプライチェーンを含む企業活動におけるデューデリジェンスは、拘束力を持つEU法(EU指令)の規制下に置かれることになる。
本稿では、そのポイントを解説する。

 

EUデューデリジェンス法(指令)とは、企業に対し、事業活動およびサプライチェーンの全ての段階で、環境、人権、統治機構に対する公平性を担保することを求め、違反した場合は罰金、制裁、民事責任を課す、というものである。企業はその活動において、環境、人権、統治機構を遵守し、違反または違反に寄与した場合、説明責任とその他の法的責任を負うことになる。

 

今後の流れ:

欧州委員会は、2021年6月に法案(EU指令案)を提出する予定である。法制度化後、加盟国は、同指令を国内法に置き換え、施行する。

法律の執行権限:

EU加盟国の各国の当局が法律の執行を行う。当局は、調査権限を持ち、法律執行の責任を負う。

法律の対象範囲:

-EU加盟国の法律に準拠する、又はEUの領土内に設立された大企業
事業内容、企業の所有権者、企業の統治機構による制限はなく、全業種が対象となる。

-上場している中小企業
ただし、環境、人権、統治機構について潜在的、又は実際に起こり得る悪影響を与えるリスクのある企業のみが対象となる(大企業に対する広範囲のデューデリジェンス・プロセスの一部は免除される可能性がある)。

-EU市場で活動し、上記リスクの高い分野で事業を行っている企業
EU域外の企業を含み、企業規模に関係なく対象となる。

 

企業側に求められること:

企業は、環境、人権、統治機構について、潜在的、又は実際に起こり得る悪影響に関して、以下のことを行うことが求められる。

 

・効果的なデューデリジェンスを実施すること

・リスクを監視する方法を確立し、自社の事業と関係する活動が、潜在的又は実際に悪影響を及ぼさないか、監視・評価すること

・評価の結果を宣言書(ステートメント)として発行すること:宣言書には、企業活動における環境、人権、統治機構について、潜在的又は実際に起こり得る悪影響がないと評価したことと、それを裏付けるデータおよび情報、リスクの評価手法を盛り込む必要がある。この宣言書は、新たなリスクが発生した場合や新しい取引関係が締結された場合には、定期的に見直す必要がある。

・環境、人権、およびビジネス関係における統治機構の潜在的または実際の悪影響を特定すること

・どの活動によって付加価値を得ているか体系づけ(企業バリューチェーンのマッピング)、機密を考慮しつつ、デューデリジェンスに関連する情報を開示すること

・環境、人権、又は統治機構に対する潜在的または実際の悪影響を停止、防止、又は軽減する措置を採用すること

・事業活動と人権に関する国連指導原則に基づき優先順位を付け、方針を策定すること

 

サプライチェーンについては、以下の対応も必要になる。

 

・サプライチェーン内のリスクに応じてデューデリジェンスを実施すること:例えば、取引を行う相手側が、当事者側のデューデリジェンスに沿った環境、人権、統治機構の方針に従い行動するよう、契約条項を整備し、行動規範を策定し、あるいは認定独立監査人による監査を行うことが要求される。

・サプライヤーや下請け業者がデューデリジェンスに関わる義務を遵守しているか、定期的に確認すること

 

違反時の罰金や制裁:

・事業の売上高に基づき罰金が課される。ただし、公的な調達、国の援助、公的支援は除外する。商品の差し押さえや行政による制裁を行うことができる。

・潜在的又は実際の悪影響から生じる損害について、民事責任を負う。

この件について欧州議会は、強制労働や児童労働などの深刻な人権侵害に関連する製品の輸入禁止を含む、追加措置を求めている。

 

背景と解説:

残念なことだが、現在、森林破壊、児童労働、強制労働等は、世界のサプライチェーンの一部となっている。そして現在、個別企業は、これらの問題の責任を負う立場にない。
欧州政府が制定するデューデリジェンス法は、企業と消費者に対し「公平な競争と法の下の透明性」を確実にすることを狙っている。具体的に言えば、欧州の消費者に商品やサービスを販売する企業は、今後、EU内で違法となる海外での行動や環境被害にも責任を負うことになる。

 

この法律の施行により、企業は、ESGリスクを特定・管理する対策を実施する必要が生じることとなる。
欧州のグリーンディール政策の軸となるエネルギー転換やサーキュラーエコノミーはコストが掛かり、これまで通りの経済活動、競争をすれば、コストで圧倒的に不利になる。
そのため、デューデリジェンス法は、カーボンフットプリント規制、炭素国境調整メカニズムと相互に補完しあい、欧州のグリーンディール政策の行動計画を経済原則の面から支える重要な枠組みと見なされている。

 

【参考資料】
MEPs: Companies must no longer cause harm to people and planet with impunity(European Parliament)

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