前回記事、前々回記事において、TCFD提言附属文書改訂の概要や、同改訂により明確に開示が推奨された「移行計画」について解説した。本稿では、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が2022年3月に公表した「気候関連開示基準」の草案の概要と動向、及び日本企業のTCFD提言対応への影響について概説する。
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)とは
国際会計基準の策定を行っているIFRS財団の下部組織として、2021年11月に設立された審議会である。企業のサステナビリティ関連財務情報の開示に関する国際的なスタンダードを作成することを目的としている。
ISSBの「気候関連開示基準」草案の概要と動向
気候関連開示基準(正式名称は、IFRS S2 “Climate-related Disclosures”)は、ISSBが作成中のサステナビリティ関連財務情報の開示基準のうち、気候関連について定めたものである。本年3月に草案が公表された(2023年に正式に策定・発行予定)。
同草案は、先行するTCFD提言を踏まえて作成されており、同じ4項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)で開示内容を大別しているなど、同提言と整合した内容になっている。一方、全体的に開示要求内容が同提言よりも詳細になっており、同提言には含まれていない(または明示されていない)要素も加わっている(下表参照)
出所:[Draft] IFRS S2 Climate-related Disclosures(ISSB、2022年)、Annex: Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD、2021年)よりブライトイノベーションにて作成
*1 正式な策定・発行の段階では、内容が一部変更される可能性がある
*2 例えば、取締役会に気候関連リスクに精通したメンバーを含めること及びその基準を設定することなどが考えられる
*3 TCFD提言ではリスクについてのみ同様の記述があるが、ISSB気候関連開示基準草案では、リスク・機会の双方について明記されている
日本企業のTCFD提言対応への影響
気候関連財務情報の開示に関し、これまで日本企業は自主的な取組、あるいは、改訂版コーポレートガバナンス・コードへの対応として、TCFD提言に沿った開示を推進してきた。将来においては、金融庁主導の下、日本サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が示す日本企業向けの気候関連開示基準に基づいた開示が求められる可能性がある。このSSBJの基準は、ISSBの基準を踏まえて検討する方針となっているため、今後はISSB基準の動向を注視することが望まれる(下図参照)。
出所:[Draft] IFRS S2 Climate-related Disclosures(ISSB、2022年)、我が国におけるサステナビリティ開示の在り方(金融庁、2022年)よりブライトイノベーションにて作成
【参考資料】
[Draft] IFRS S2 Climate-related Disclosures(ISSB、2022年)
Annex: Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD、2021年)
我が国におけるサステナビリティ開示の在り方(金融庁、2022年)
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