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ネットゼロとは?サステナビリティ時代における重要キーワードを解説

地球温暖化を防ぐための取り組みが世界各国で進められている中、「ネットゼロ」という言葉が注目されている。本稿では、まずネットゼロの基本的な概念を明らかにし、次にその重要性と背景について詳しく解説する。また、カーボンニュートラル脱炭素といった関連用語の意味の違いにも触れ、ネットゼロ達成に向けた具体的な取り組みについても考察する。本稿を通じて、ネットゼロに関する理解を深め、個人や企業がどのようにこの目標に貢献できるのかを考えるきっかけとなれば幸いである。

目次

  1. ネットゼロ(Net Zero)とは?
  2. ネットゼロが重要視される背景と必要性
    2-1.パリ協定で掲げられた1.5℃目標
    2-2.日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言
  3. ネットゼロと関連用語の意味の違い
    3-1.カーボンニュートラル
    3-2.脱炭素
  4. 2050年ネットゼロ達成に向けた日本における取り組み
    4-1.地域・暮らしの脱炭素化の取り組み
    4-2.GX(グリーントランスフォーメーション)の推進
    4-3.バリューチェーン全体での脱炭素化に向けた取り組み
    4-4.再生可能エネルギーの導入拡大
  5. まとめ:ネットゼロの達成に向けて

 

1.ネットゼロ(Net Zero)とは?

ネットゼロとは、特定の期間における温室効果ガス(GHG)の排出量と吸収量を相殺し、実質的に排出ゼロの状態を実現することを指す。ここでいう「ネット」は、「正味の、最終的な」という意味を持っている。つまりネットゼロとは、人間活動によって排出される温室効果ガスの量を、森林や海洋といった自然の吸収源、または技術的な手法を用いて相殺することで、実質的にゼロにすることを指す。
ネットゼロは、企業や国家、地域などの単位で目指される目標であり、特に2050年までに達成することが多くの国で政策目標として掲げられている。これは、気候変動に対する科学的な根拠に基づき、地球の平均気温上昇を産業革命前から1.5℃以内に抑えるために必要なこととされている。また、企業にとっては、ネットゼロは単なる環境対策を超えたビジネスチャンスにもなり得る。持続可能な製品やサービスの開発、効率的なエネルギー使用の推進、サプライチェーン全体での排出削減などにより、新たな市場を開拓することは、企業の競争力を高めることにもつながる。
このような背景から、ネットゼロは持続可能な未来を築くための重要な指標となっており、経済活動や社会全体の在り方を大きく変える可能性を持っている。

2.ネットゼロが重要視される背景と必要性

ネットゼロが重要視される背景には、地球温暖化という深刻な問題がある。温室効果ガスの増加により、地球の気温は上昇し続けており、このままでは生態系への影響や気候変動による災害が頻発することが懸念されている。これを受けて、国際社会は持続可能な未来を確保するために、温室効果ガスの削減を急務としている。ネットゼロは、地球温暖化の進行を抑制し、気候変動の影響を緩和するために不可欠な目標となっており、特に化石燃料の使用や産業活動によって多くの温室効果ガスが放出されている現代社会において、ネットゼロの達成は環境保護の観点から非常に重要である。本稿では、以下の二つの視点からネットゼロの重要性を詳しく見ていく。

2-1.パリ協定で掲げられた1.5℃目標

まず、パリ協定で掲げられた1.5℃目標である。2015年に締結されたパリ協定は、地球の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃未満、できれば1.5℃以内に抑えることを目指している。この1.5℃目標を達成するためには、世界規模での温室効果ガス排出の大幅な削減が不可欠である。ネットゼロは、この目標を実現するための具体的な手段として位置づけられ、各国が積極的に取り組むべき重要な課題となっている。
気候変動に関する科学的評価を行う国際機関であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、1.5℃目標を達成するためには、2050年頃までにネットゼロを達成する必要があると報告している。このような科学的根拠を背景に、ネットゼロへの取り組みは気候変動の影響を最小限に抑えるための国際的な共通目標として位置づけられている。

2-2.日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言

次に、日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言である。2020年、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。これは、パリ協定の目標に沿ったものであり、日本が国際的な気候変動対策の一端を担う決意を示したものである。特に日本は、エネルギーの多くを化石燃料に依存しているため、この目標を達成するためには再生可能エネルギーの導入や省エネルギー技術の革新が重要となる。この宣言に基づき、経済成長と環境保護を両立する新たな産業構造の構築が進められている。これにより、エネルギー使用の効率化や技術革新が促進され、経済成長の新たなチャンスが生まれると期待されている。さらに、企業や自治体の取り組みも活発化しており、持続可能なビジネスモデルやコミュニティづくりが進行中である。

3.ネットゼロと関連用語の意味の違い

ネットゼロとは、温室効果ガスの排出量を削減し、残る排出量を吸収または相殺することで、実質的に排出をゼロにする状態を指すと述べた。ここでは、そのネットゼロとよく似た関連用語の意味の違いを解説し、それぞれの概念が持つ特有の意味を探っていく。

3-1.カーボンニュートラル

ネットゼロと最も近い考え方が、カーボンニュートラルである。日本において両者はほぼ同義で用いられることが多いが、そこには微妙な違いがある。環境省によると、カーボンニュートラルとは、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることとしている。どちらも気候変動への対応として重要な概念であることに変わりはないが、カーボンニュートラルはその名の通り「カーボン=炭素」を中心に据えた表現であり、CO2を中心とした温室効果ガスで語られる傾向がある。一方、ネットゼロはより包括的で、CO2のみでなくメタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)など、すべての温室効果ガス排出量を対象とした文脈で使われることが多い。

3-2.脱炭素

脱炭素とは、主にCO2排出の削減に焦点を当てており、再生可能エネルギーの利用拡大やエネルギー効率の向上、技術革新を通じて、CO2の排出を大幅に削減する社会変革全般を指す広義の概念である。ゼットゼロやカーボンニュートラルが相殺を含むのに対し、脱炭素は排出削減そのものを重視する。このプロセスは、エネルギー生産や消費の方法を抜本的に変えることから始まる。具体的な手段としては、化石燃料に頼らない再生可能エネルギーの導入、エネルギー効率の向上、そして電気自動車や水素燃料電池車の普及などが挙げられる。また、産業部門においても、低炭素技術の開発と導入が求められている。さらに、脱炭素社会の実現には、CO2排出を直接削減するだけでなく、CO2を吸収する自然の能力を増強することも重要である。これには、森林の保護や植林活動、土壌のCO2吸収力を高める農業技術の導入などが含まれる。脱炭素の取り組みは、技術革新だけでなく、政策、経済、社会全体の協力が不可欠となる。ネットゼロは、その取り組みの結果として最終的に達成すべき目標といった位置づけである。

4.2050年ネットゼロ達成に向けた日本における取り組み

日本は、2050年のネットゼロ達成に向け様々な取り組みを進めている。本稿では、第69回総合資源エネルギー調査会の環境省説明資料を参考に解説する。まず、日本政府は2030年度までに2013年度比で温室効果ガスの排出を46%削減、2035年度・2040年度においては、2013年度からそれぞれ60%・73%削減することを目指しており、最終的には2050年までにネットゼロを実現するといった目標を掲げている。日本を含むパリ協定の加盟国は、自国の温室効果ガス削減目標を示すNDC(Nationally Determined Contribution, 国が決定する貢献)を国連に提出する義務があり、その後も提出した目標に対する進捗を確認し、公表することが求められている。さらに、NDCは5年ごとに見直し、更新することが義務付けられている。

日本の排出・吸収量の状況および新たな削減目標

図:日本の排出・吸収量の状況および新たな削減目標(NDC)
(出典:環境省)

4-1.地域・暮らしの脱炭素化の取り組み

日本各地では、地域ごとの特性を活かしつつ、生活のあらゆる側面で温室効果ガス排出を削減する取り組みが進められている。例えば、一部の地方自治体は太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーの導入を積極的に推進している。公共交通機関を用いた例では、鉄道の線路沿いに太陽光発電などを設置し、電気代を40%削減しつつ路線の維持確保を図るなど、脱炭素と地域課題を同時に解決するといった例も挙げられる。さらに、住宅の断熱性能向上や、省エネ家電の普及促進、自家消費型太陽光発電の導入促進も、家庭レベルでのエネルギー効率改善に寄与する。これらの取り組みは、住民の意識改革と地域全体の協力が不可欠であり、教育や啓発活動を通じて、持続可能なライフスタイルの普及が求められる。加えて、地域の特産品を活用した地産地消の推進は、輸送に伴うエネルギー消費を削減し、地域経済の活性化にもつながる。これらの地域脱炭素の取り組みは、地域の特性に応じた柔軟な対応を可能にし、全国的なネットゼロ目標の達成に向けた基盤を築くものである。地域ごとの成功事例は、他の地域への波及効果を生むことが期待され、全国的な脱炭素化のムーブメントを加速させる一助となる。日本全体でのネットゼロ達成を目指すには、このような地域レベルでの具体的かつ現実的な取り組みが求められている。

4-2.GX(グリーントランスフォーメーション)の推進

GXとは、化石燃料中心の経済・社会、産業構造を再生可能エネルギーや新技術を活用した持続可能なものへと転換するための包括的な戦略である。日本政府はGXの推進を通じて、企業の技術革新や産業の脱炭素化を強力に支援している。具体的には、企業が再生可能エネルギーを導入しやすくするための制度改革や、低炭素技術の開発への補助金提供などが挙げられる。また、GX製品・サービスの需要創出の推進は、企業の競争力を高めるだけでなく、消費者の選択肢を拡大し、持続可能な社会の実現を後押しする。産業界だけでなく、地域社会との連携を強化することで、GXの波及効果を最大化し、社会全体での脱炭素化を加速させることも期待されている。

4-3.バリューチェーン全体での脱炭素化に向けた取り組み

日本企業が、バリューチェーン全体で脱炭素化を進めることは、各企業が持続可能な未来を実現するために不可欠な要素である。日本は、企業の脱炭素化と競争力の強化を図るべく、 中小企業を含むバリューチェーン全体での企業の脱炭素経営の普及と高度化を目指している。また、バリューチェーンにおけるサプライサイドでの脱炭素投資、デマンドサイドでの消費・調達の好循環に向けた検討会も開催されており、企業間の連携強化や技術革新などによって、バリューチェーン全体の脱炭素化を推進している。バリューチェーン全体での脱炭素化には、製品の設計から廃棄に至るまでの各段階での包括的なアプローチが求められる。協力体制を築くことで、共にネットゼロ社会の実現に向けて歩みを進めることが期待されている。バリューチェーン全体での脱炭素化は、企業の競争力を高めるだけでなく、環境への責任を果たす重要なステップとなる。

4-4.再生可能エネルギーの導入拡大

再生可能エネルギーの導入と省エネルギーの推進は、ネットゼロ達成に向けた鍵となる要素である。日本では、再生可能エネルギーとして太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどが注目され、政府や企業が積極的に導入を進めている。特に、太陽光発電は設置が比較的容易であり、住宅や工場の屋上に設置することで自家発電が可能となり、エネルギーの自給自足を促進する。また、環境省では脱炭素化を促進するため、公共部門での太陽光発電の積極的な導入を推進しており、各省庁間で協力しながらその取り組みを進めている。

5.まとめ:ネットゼロの達成に向けて

ネットゼロの達成は、地球規模の気候変動に立ち向かうために不可欠な目標であり、企業のサステナビリティ活動においても重要な課題である。ネットゼロは、単なる理想ではなく、企業が持続可能性を実現するための現実的な目標となっている。ネットゼロ達成への取り組みは容易ではないが、企業の責任として、そして持続可能な未来を築くために、企業もその一翼を担うことが求められている。また、企業や自治体を含むあらゆるセクターが連携し、脱炭素化に向けた具体的なアクションを取ることが求められる。個々の努力だけでなく、業界全体での協力体制の構築が不可欠といえる。最終的な目標である2050年の目標達成に向けて、国際的な協力とともに、地域レベルでの具体的な取り組みを加速させていくことが期待されている。

【参考資料】
ネット・ゼロ | ecojin(エコジン)|環境省
第69回総合資源エネルギー調査会基本政策分科会資料|環境省
令和7年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書 (概要)|環境省
カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省
GX(グリーントランスフォーメーション)|経済産業省