企業が影響を及ぼすことのできるScope3排出量の割合は、業種や会社の規模によりますが、Scope1、Scope2排出量よりも圧倒的に多い場合が多く、それら企業はScope3排出量のマネジメントに関する責任があります(本カーボンアドバイザー「バリューチェーンにおける次世代カーボンマネジメントのニーズ」参照)。
そのため、各種環境・サステナビリティ評価制度(例:CDP、Dow Jones Sustainability Indexをはじめとしたサステナビリティインデックス)においても、バリューチェーンのカーボンマネジメントに関する取組み状況が、ますます重要な評価指標の一つになってきています。また、科学的目標を設定する際、Scope3排出量が全温室効果ガス排出量の40%以上を占める場合、Scope3排出量に関する目標も報告することとなっています(本カーボンアドバイザー「Science Based Target(SBT, 科学的目標)の設定の必要性とその枠組み」参照)。
<バリューチェーンの概観>
バリューチェーンのカーボンマネジメントとは、具体的には、自社の排出量はもとより、自社以外のバウンダリー(範囲)であるが、自社が影響を及ぼしているバウンダリーにおける温室効果ガス排出量を管理することです。例えば、製品販売後の、消費者による製品使用段階の排出量の低減や、サプライヤーにおける排出量の低減を行っていくこと等が挙げられます。バリューチェーン排出量の低減を行う場合、単に排出量の把握や削減を要請するだけでは不十分な場合が多く、取引先等との関係性に応じて管理レベルを決め、排出量を削減していくことが必要となります。ここでいう「管理レベル」とは、「取組みの要請」、「取組みの評価・再評価(例:結果が悪ければ取引中止)」、「取組み状況の監査」、「削減の協働」といったレベルが挙げられます。「排出量を削減」していくためには、対象各国・エリアにおける削減目標・関連政策や社会的潮流をふまえた中長期目標、短期目標の設定、カーボンマネジメント体制の構築、目標達成のためのロードマップの策定、具体的な取組みの実施、パフォーマンス(例:排出量、排出原単位)の把握、パフォーマンスをふまえた今後のアクションの立案・実施が必要となります。
さらに、議論が進みつつあるカーボンプライシングの導入を想定し、バリューチェーンを俯瞰した財務影響の分析を行い、これまでの調査・分析を総合して、バリューチェーンにおけるカーボンリスク・機会の特定を行います。
今後、これらの実施概要について、本カーボンアドバイザーで解説していきます。