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「プラスチック新法」の概要と分別収集の手引きのポイント

「プラスチック資源循環促進法(プラ新法)」施行に向けた環境省の動き

環境省は2022年4月の新法施行に向けて、プラスチック資源循環促進法(正式名称:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律、以下「プラ新法」)の普及啓発を目的とした特設サイト(https://plastic-circulation.env.go.jp/)を1月14日に開設した。同サイトには事業者・自治体、消費者を対象とした制度の詳細説明や、支援措置、広報ツール、よくある質問・資料等に関する情報がまとめられている。現在(2022年2月8日時点)は準備中となっているが、今後、各種手引きや認定申請のページなどが追加で公開される予定である。また、1月19日には「プラスチック使用製品廃棄物の分別収集の手引き」が公開された。これは市区町村の分別収集・再商品化において、市区町村が同法第32条に基づき、容器包装リサイクル法の指定法人(公益財団法人日本容器包装リサイクル協会)に委託し、リサイクルを行う方法(容器包装リサイクル法ルート)を活用する場合における分別収集物の基準について、環境省令を補完して説明するものである。市区町村は法第31条及び当該手引きに基づき、分別の基準を定めることになる。なお、認定再商品化計画に基づくリサイクルを行う方法(大臣認定ルート)の場合は、環境省令の分別収集物の基準の適用はない。

プラスチック資源循環促進法の概要

プラ新法では①設計・製造、②販売・提供、③排出・回収・リサイクルの各ライフサイクルにおいて、プラスチックの資源循環を促進するための措置事項が下記のとおり定められている。

制度概要と手引きの公開状況

ライフサイクル 法での措置事項 対象 対象者 認定/評価の内容 手引きの公開状況
設計・製造 プラスチック使用製品設計指針 プラスチック使用製品 プラスチック使用製品製造事業者等 プラスチック使用製品設計指針に基づく設計
販売・提供 使用の合理化 特定プラスチック使用製品(12品目) 特定プラスチック使用製品提供事業者(小売・サービス事業者等) 特定プラスチック使用製品の使用の合理化への取り組み
排出・回収・リサイクル 市区町村の分別収集・再商品化 プラスチック使用製品廃棄物 市区町村 再商品化計画
  •  ・プラスチック使用製品廃棄物の分別収集の手引き(2022年1月19日)
  • ・再商品化計画の認定申請の手引き(未公開)
製造・販売事業者等による自主回収 自らが製造・販売・提供したプラスチック使用製品 プラスチック使用製品の製造・販売・提供事業者 自主回収・再資源化事業計画
  • ・自主回収・再資源化事業計画の認定申請の手引き(未公開)
排出事業者の排出抑制・再資源化等 プラスチック使用製品産業廃棄物等 排出事業者 再資源化事業計画
  • ・再資源化事業計画の認定申請の手引き(未公開)

出所:環境省「『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』の普及啓発ページ」の「制度の概要」を基に作成

①設計・製造においては、「プラスチック使用製品製造事業者等のプラスチック使用製品設計指針」がすでに公開されており、この指針に即した製品設計のうち、特に優れたものが認定される仕組みである。
②販売・提供では、特定プラスチック使用製品提供事業者(小売・サービス事業者等)の特定プラスチック使用製品(12品目)の使用の合理化に関する判断基準・取り組み内容が示されており、主務大臣が必要に応じて指導及び助言を実施し、取り組みが著しく不十分な場合(多量提供事業者のみ)には勧告・公表・命令を行う仕組みである。
③排出・回収・リサイクルには、下記の3種類がある。


(1)市区町村の分別収集・再商品化:市区町村がプラスチック使用製品廃棄物の分別の基準を策定し、その基準に従って収集を行い、前述の2つのルートで再商品化することが可能になる。
(2)製造・販売事業者等による自主回収:プラスチック使用製品の製造・販売・提供事業者が、自ら製造・販売・提供したプラスチック使用製品を自主回収・再資源化する計画を策定し、主務大臣の認定を受けることで廃棄物処理法上の廃棄物処理業の許可を不要とし、店頭回収等を促進する仕組み。
(3)排出事業者の排出抑制・再資源化等:小規模企業者等を除くすべての排出事業者(事務所、工場、店舗等で事業を行う多くの事業者が対象)にプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制・再資源化等に取り組むことを求めるもので、判断基準・取り組み内容が示されている。②と同様、主務大臣が必要に応じて指導及び助言を実施し、取り組みが著しく不十分な場合(多量排出事業者のみ)には勧告・公表・命令を行う仕組みである。排出事業者は再資源化事業計画を作成し、主務大臣の認定を受けることで、廃棄物処理法上の廃棄物処理業の許可がなくても再資源化事業を行うことができる。

「プラスチック使用製品廃棄物の分別収集の手引き」の運用面での検討ポイント

当該手引きは環境省令の分別収集物の基準を補完して説明するものであり、市区町村が分別の基準を定める際のガイダンスである。したがって、市区町村は手引きに定める範囲からさらに対象を絞って収集する(例:プラスチック素材100%のものに限定する)こともできる。手引きによると、分別収集物に含めてよいものは、以下の2種類である。

(1)原材料が主としてプラスチックであるプラスチック容器包装廃棄物

…容器包装リサイクル法が規定する容器包装廃棄物のうち、その原材料が主としてプラスチックであるもの。
(2)原材料の全部または大部分がプラスチックであるプラスチック使用製品廃棄物

…内部部品を含めて、ほとんどがプラスチックで構成されるもの。

手引きには(2)に該当する例として157品目が記載されているが、これらはあくまで例であり、実際には市区町村が分別の基準を策定する。家庭からのプラスチック資源の回収量を増やすためには、幅の広い品目を対象にして間口を広げることが効果的だが、一方でリチウムイオン電池をはじめとする禁忌品等の混入リスクの増加が懸念されるため、分別の基準をどの範囲までとするかは、市区町村にとって悩ましい問題である。市区町村が分別の基準を定めるにあたり、特に検討が必要と思われるポイントを以下に3つ挙げる。

ポイント①ベール化のための設備更新やオペレーション変更
「圧縮されていること」の定義は「単品で圧縮されていることではなく、保管、運搬時の効率性を確保する観点から、一般的な圧縮機(ベーラー等)で圧縮され、結束又はこん包等による形態の維持、小さい製品の飛散対策が図られていること」とあるが、プラスチック使用製品廃棄物(硬質プラスチック)は固く、嵩張ることなどから、容器包装廃棄物の圧縮機ではうまくベール化(圧縮・梱包)できないことが予想される。仮に市区町村がプラスチック製容器包装の中間処理施設でプラスチック使用製品廃棄物の選別・圧縮・梱包を検討する場合は、現行の処理ラインで対応可能かを確認する必要がある。場合によっては、プラスチック使用製品廃棄物も受け入れができるように既存設備をアップグレードすることや、オペレーションを変更するなどの対策が必要と考えられる。

ポイント②発火のおそれのある危険物混入への対策
「リチウムイオン蓄電池を使用する機器その他分別収集物の再商品化の過程において火災を生じるおそれのあるもの」が混入していないことが分別収集物の基準の条件となっているが、プラスチック使用製品廃棄物の回収を開始した場合、これらの混入リスクが高まることが予想される。実際に、プラスチック製容器包装廃棄物の回収においても、リチウムイオン蓄電池(加熱式タバコ、モバイルバッテリーなど)の混入による火災発生のリスクが問題になっており、発火場所は収集運搬時のパッカー車、中間処理施設の破袋機・ベルトコンベア、再商品化事業者によるベール解砕時など様々である。現時点では多くの場合、手選別による危険物除去が有効な手段であり、危険物の混入が増えると、処理の生産性、安全性に影響を与えると考えられる。したがって、この問題にいかに対応していくかが重要なポイントの一つとなる。

ポイント③市民への「排出方法」の周知
3つ目のポイントは個別具体的な内容となるが、分別基準の市民への周知の問題である。手引きの157品目のうち、以下に記載の品目は「50cm未満に切断」することが求められている。市区町村がこれらの品目を回収する場合、排出段階でいかに市民の協力を仰ぐか、どのように周知を徹底していくかが課題となる。また、仮にこれらの品目が「50cm以上」のサイズで排出されてきた場合、市区町村側の選別の手間や処理コストの増加が予想される。

雨合羽、網戸の網、浮き輪・浮袋、カセットテープのテープ、カラオケのテープ、修正テープ、人工芝、波板、荷造り紐、ネガフィルム(フィルム、ネガ)、ネット袋、PPバンド(梱包用バンド)、ビデオテープ、ビニールクロス、ビニールシート、ビニールふろしき、ホース類、ロープ

市民にとって分かりやすく、なるべくたくさんのプラスチック資源を回収でき、かつリサイクルする際の手間・コストが許容範囲となるような分別の基準を策定することが理想だが、実際には上記をはじめ考慮すべき様々なポイントがあり、また市区町村によって状況も異なるため、基準の策定は簡単ではない。

2022年4月のプラ新法施行に向けて、残り3つの手引きも順次公開されると考えられる。プラ新法への取り組みを検討している事業者にとっては、それらは認定計画を作成するための具体的な情報になる。

【参考資料】

「『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』の普及啓発ページ」環境省

「プラスチック使用製品廃棄物の分別収集の手引き」環境省