プラスチック資源循環促進法(プラスチック新法、以下プラ新法)が4月1日に施行された。同法では、①設計・製造、②販売・提供、③排出・回収・リサイクルの各ライフサイクルにおいて、プラスチックの資源循環を促進するための措置事項が定められている。今回は、③排出・回収・リサイクルのうち、市区町村の再商品化計画に関して解説する。
〈目次〉
1.市区町村の分別収集・再商品化の概要
市区町村による分別収集・再商品化に関する措置には、市区町村が分別収集したプラスチック使用製品廃棄物については(1)容リ法ルート:容器包装リサイクル法に規定する指定法人(公益財団法人日本容器包装リサイクル協会)に委託し再商品化を行う方法、(2)大臣認定ルート:市区町村が単独で又は共同して再商品化計画を作成し、国の認定を受けることで、認定再商品化計画に基づいて再商品化実施者と連携し再商品化を行う方法の2つがある。市区町村は状況に応じて選択することができ、2つの制度を併用することも可能である。
図 市区町村による分別収集・再商品化に関する2通りの措置
出所:環境省ウェブサイト
上記のうち(1)は、容器包装リサイクル法に基づき家庭からプラスチック容器包装廃棄物を分別収集・再商品化している市区町村にとってメリットが大きい。市区町村が製品プラスチックの分別収集・再商品化を新たに行う際、これまでのプラスチック容器包装廃棄物に加えて、製品プラスチックもまとめて指定法人に引き渡すことができるからである。引き渡された分は容器包装リサイクル法に基づき入札となるため、市区町村が自ら再商品化事業者を見つける必要がない。自前の指定保管施設がある場合は、設備利用や雇用を継続できる点もメリットである。一方で、容器包装リサイクル法に基づく分別収集を行っておらず、プラスチックを燃えるごみ・燃えないごみとして処理していた市区町村にとっては、(2)を活用することで選別・梱包・保管等の中間処理を省略できるため、自前の指定保管施設を持つ必要がなく、あるいは中間処理を外部に委託する必要もなくなる点がメリットである。
上記それぞれのルートに関しては、環境省から手引きが公開されている。(1)については、本サイト2月8日の記事「プラスチック新法」の概要と分別収集の手引きのポイントをご覧いただきたい。今回は、(2)の「再商品化計画の認定申請の手引き」のポイントを下記に紹介する。
2.「再商品化計画の認定申請の手引き」におけるポイント
再商品化計画を認定する際の基準は以下のとおりである。
- 基本方針との適合性
基本方針に照らして適切であること - 再商品化の効率的な実施に資するものとして省令で定める基準との適合性
プラスチック容器包装廃棄物の再商品化の実施に要する費用が抑制されたものであること 等 - 計画期間
3年以内であること - 再商品化事業者の能力に係る基準との適合性
再商品化を適確に行うに足りる知識・技能を有すること 等 - 運搬施設(車両等)・積替施設に係る基準との適合性
飛散、流出、悪臭防止等に必要な措置が講じられていること - 処分施設に係る基準との適合性
再商品化その他分別収集物の処分に適した施設であること - 再商品化実施者の適格性
再商品化実施者が法第33条第3項第4号に規定する欠格要件に該当しないこと
ポイント①対象
再商品化計画の認定は、プラスチック容器包装廃棄物(いわゆる軟質プラスチック)及びそれ以外のプラスチック使用製品廃棄物(いわゆる硬質プラスチック)の両方を収集している場合、またはどちらか一方のみを収集している場合のいずれのパターンであっても対象となる。なお、分別収集物にプラスチック容器包装廃棄物を含むか含まないかによって、収率基準、分別収集物の品質調査、再商品化製品の品質検査などの必要条件が異なる。
対象 |
収率基準 |
分別収集物の品質調査(組成調査) |
再商品化製品の品質検査 |
分別収集物にプラスチック容器包装廃棄物を含む場合 |
再商品化手法ごとの収率基準を設定 |
必須(プラスチック容器包装廃棄物、それ以外のプラスチック使用製品廃棄物、異物の割合を調査・算出) |
認定市区町村が専門の測定機関に委託して実施(再商品化製品のすべての種類からサンプリング) |
分別収集物にプラスチック容器包装廃棄物を含まない場合 |
市区町村が再商品化事業者と調整して設定 |
任意 |
ポイント②収率基準
収率は、再商品化製品製造量から他材料寄与分を除いた量と、認定市区町村から再商品化事業者に引き渡された分別収集物の量から異物量を除いた量により算出する。なお、異物量は品質調査結果から算出する。手引きでは、再商品化手法ごとの収率の算出式及び基準値が定められている。例えば、マテリアルリサイクル(材料リサイクル)の場合は、45%以上の収率が求められる。
出所:環境省「再商品化計画の認定申請の手引き」
ポイント③再商品化製品の品質検査
再商品化手法ごとに再商品化製品の品質基準が定められている。例えば、マテリアルリサイクルの品質基準は以下のとおりである。なお、再商品化により得られた物の利用事業者(再生ペレット等の販売先)は、「自主回収・再資源化事業」で求められている条件と同様で、「国内で製品等に加工(マテリアルリサイクルの場合は成形等の可塑化を行う)する製造事業者等」に限られる。
出所:環境省「再商品化計画の認定申請の手引き」
3.解説
プラスチック新法の施行に伴い、家庭から排出されるプラスチックの資源循環の促進が見込まれるが、容リ法ルート、大臣認定ルートの2つの方法が機能するには、量的、技術的な課題を克服する必要がある。容器包装リサイクル協会によると、令和3年度の容リ協登録再生処理事業者(マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル)の実能力は約72万トンとなっており、市区町村申込量の約68万トンを引くと、約4万トンしか余力がない状況となっている。容リ法ルートでは、処理能力の増強、プラスチック容器包装廃棄物以外のプラスチック使用製品廃棄物を受け入れるための設備投資やオペレーションの変更等が求められる。また、容リ法ルートを補完する意味でも、大臣認定ルートによる一体的・合理的な選別・再商品化を可能とする高度な技術を有する再商品化実施者の存在も必要である。
【参考資料】
「『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』の普及啓発ページ」環境省
「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律に係る再商品化計画の認定申請の手引き」環境省
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