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TNFD(ベータ版v0.4)の概要と動向 (3/3)

前稿では、TNFD提言の「一般要求事項」及び「開示推奨事項」を、最新のTNFDフレームワーク(ベータ版v0.4)に基づいてご紹介した。「開示推奨事項」は、企業が特定・評価した自然関連課題(依存・影響、リスク・機会)の内容や対応戦略等について情報開示することを推奨するものであった。

では、各企業はどのような手順で自社の自然関連課題を特定・評価し、対応していけばよいのか。こうした企業の問いに対し、TNFDは「LEAPアプローチ」を提案している。本稿では、LEAPアプローチの概要を、TNFDフレームワーク(ベータ版v0.4)及びTNFD公式ウェブサイトの情報に基づき、解説する。

Ⅰ LEAPアプローチとは

LEAPアプローチは、TNFDが作成した手順書であり、自然関連課題(依存・影響、リスク・機会)の特定・評価・対応・情報開示を進めるプロセスを企業向けに提案したものである。TNFDに対応する企業の多くは、このLEAPアプローチに沿って自然関連課題の特定・評価・対応を進め、開示情報を把握・整理していくものと考えられる。
LEAPアプローチは、下表のNo.1~5のフェーズに大別される。

No.

フェーズ名

概要

1.

Scoping

自社の重要事業やその活動場所など基本的な情報整理を整理するとともに、分析の方針・方向性を確認する。

2.

Locate

自社や自社バリューチェーン上の活動が自然と近接しているエリアを洗い出すとともに、優先すべきエリアを特定する。

3.

Evaluate

“2. Locate”で特定した優先エリアに関し、依存(自社や自社バリューチェーン上の活動がどのように自然に依存しているか)・影響(自社や自社バリューチェーン上の活動がどのように自然に影響を与えているか)の内容を特定し、その大きさや規模を評価する。

4.

Assessment

“3. Evaluate”で特定・評価した自社及び自社バリューチェーンの自然への依存・影響の状況に基づいて、自社の自然関連リスク・機会を特定・評価する。

5.

Prepare

“4. Assessment”で特定・評価した自然関連リスク・機会へ対応していくための戦略、目標、指標等を検討するとともに、TNFDの推奨事項を踏まえて、どのように自社の自然関連情報を開示していくかを検討する。

 

Ⅱ 各フェーズを構成する内容

LEAPアプローチの各フェーズは、企業が実施するアクションごとに、3~4つのコンポーネント(要素)に分かれている。
各コンポーネントの概要は、以下1.~5.のとおり。

1. Scoping
(一般企業向け(C)と金融機関向け(F)の2種類が存在。下表では、Cの内容をご紹介)

 

コンポーネント名

企業のアクション(概要)

C1

Type of organization

自社の特に重要な事業・製品・資産を確認するとともに、それらに関する自社やバリューチェーン上の活動が実施されている場所を確認する。

C2

Entry points

上記の活動がどのようなバイオーム(例:熱帯雨林、河川)で実施されているかを確認のうえ、自社にとって特に重要である可能性が高い(または、特に重要になる可能性が高い)自然関連の課題に目星を付ける。

C3

Type of analysis

自社の優先事項や重要ステークホルダーの関心事を確認するとともに、分析のタイムラインやレベル(リソースや実現可能性を踏まえて、どこまで精緻に実施するか)等を設定する。

 

2. Locate

 

コンポーネント名

企業のアクション(概要)

L1

Business footprint

自社や自社のバリューチェーン上の活動が実施されている場所を把握する。

L2

Nature interface

上記の活動が接している自然(生物群や生態系)の場所、重要性及び健全性を確認する。

L3

Priority location
identification

以下の観点から、自社の「優先エリア」を特定する。
・生態系の重要性
・生態系の健全性
・生態系の健全性低下の状況
・水ストレス
・自社・自社バリューチェーンの依存の状況
・自社・自社バリューチェーンの影響の状況

L4

Sector identification

優先エリアにおいて自然に接している自社の事業セクターや事業部門等を把握・整理する。

 

3. Evaluate

 

コンポーネント名

企業のアクション(概要)

E1

Identification of relevant
environmental assets
and ecosystem services

“2. Locate”で特定した優先エリアに関する自社や自社バリューチェーン上の活動内容を把握し、各優先エリアの環境資産・生態系サービスを把握する。

E2

Identification of
Dependencies & Impacts

各優先エリアにおける、自社・自社バリューチェーンの自然への依存・影響の内容を特定する。

E3

Dependency analysis

依存の大きさや規模を評価する。

E4

Impact analysis

影響の大きさや規模を評価する。

 

4. Assess

 

コンポーネント名

企業のアクション(概要)

A1

Risk & Opportunity
identification

“3. Evaluate”で特定・評価した自然関連の依存・影響に基づき、自社の自然関連リスク・機会を特定する。

A2

Existing risk mitigation
and Risk & Opportunity
management

リスク低減や機会実現のために自社が実施している既存の取組を確認する。

A3

Additional risk mitigation
and Risk & Opportunity
management

リスク低減や機会実現のために自社が実施すべき追加的な取組を検討する。

A4

Risk & Opportunity
materiality assessment

特定した自然関連リスク・機会の重要性を評価するとともに、TNFD開示推奨事項に沿って開示すべき重要なリスク・機会を検討・確認する。

 

5. Prepare

 

コンポーネント名

企業のアクション(概要)

P1

Strategy and
resource allocation

“4. Assess”までの分析結果を踏まえて、自然関連リスク・機会に対応するためのマネジメントの仕組み、戦略、資源配分等を検討・準備する。

P2

Performance
measurement

自然関連リスク・機会を評価・管理するために用いる目標・指標を検討・準備する。

P3

Reporting

TNFD開示推奨事項に沿って、自然関連情報の開示内容を検討・準備する。

P4

Presentation

自然関連情報の開示をどの媒体でどのように表現するかを検討・準備する。

 

以上が「LEAPアプローチ」の概要である。

TNFD提言の公表(2023年9月予定)以降は、自然関連の情報開示を含めたTNFD対応が本格化していくことが予想される。各企業が必要に応じてLEAPアプローチを活用し、準備・対応を進めていくことが期待される。

【参考資料】
The TNFD Nature-related Risk and Opportunity Management and Disclosure Framework Final Draft – Beta v0.4(TNFD、2023年3月)

LEAP – the risk and opportunity assessment approach(TNFDウェブサイト、2023年7月31日アクセス)

【関連記事】
TNFDの概要と動向(1/3)

TNFDの概要と動向(2/3)

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