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CDP2024 変更点〈Part1〉の主なポイント

CDPは最も著名なESG評価制度の1つであり、CDP評価の重要性の高まりを背景に、回答企業が年々増加している。
2024年、CDPの質問書は、従来の形式から大幅なリニューアルが予定されている。
本稿では、CDP2024の変更点の主なポイントについて解説する。

〈目次〉

  1. 主な変更点のポイント
  2. 具体的な統合のレイアウトおよび構造
  3. 質問書の統合とは?
  4. なぜ質問書を統合するのか?
  5. 質問書の統合により、スコアも統合されるのか?
  6. 設問における主な変更点
    -フォレスト(森林)
    -プラスチック
    -生物多様性
    -金融サービスセクター
  7. 回答を求められるテーマはどのように決定されるのか?

 

1.主な変更点のポイント

主な変更点は、以下のとおりである。

2023年まで別々であった気候変動Climate Change)、フォレスト(Forests)、水セキュリティ(Water Security)に関する質問書が1つの質問書に統合される。また、プラスチックや生物多様性に関する質問も統合され、環境問題全般が問われる形式となる

・設問は、IFRS第2号(国際サステナビリティ基準審議会 – ISSB)の気候変動基準に準拠
・自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)など、他の基準やフレームワークとも足並みを揃え、一部準拠
・フォレストに関する質問およびスコアリングの焦点が変更
気候変動、フォレスト、水セキュリティ等各環境テーマの配分も変更

 

2.具体的な統合のレイアウトおよび構造

以下の表にみられるように、2023年までCDP気候変動、フォレスト、水セキュリティで個別に回答をしていた、ガバナンス、事業戦略を含むモジュール1~6およびモジュール13が1つに統合され、2024年からはまとめて一度回答するだけで済むように変更される。モジュール7~11は各環境テーマに特化した環境パフォーマンスに関する質問で、個別のテーマに気候変動、フォレスト、水セキュリティなどがあり、企業は必要に応じて回答することになる。モジュール10および11はプラスチック、生物多様性に関するモジュールとなっており、2024年も引き続き採点対象外である。モジュール12は、金融サービス業向けのセクター固有の質問モジュールとなる。

モジュールのレイアウトおよび構造

モジュール1:イントロダクション

統合モジュール

モジュール2:依存・影響・リスクと機会の特定、評価、管理

モジュール3:リスクと機会の開示

モジュール4:ガバナンス

モジュール5:事業戦略

モジュール6:環境パフォーマンスー総合アプローチ

モジュール7:環境パフォーマンスー気候変動

各環境問題に特化したモジュール

モジュール8:環境パフォーマンスー森林

モジュール9:環境パフォーマンスー水セキュリティ

モジュール10:環境パフォーマンスープラスチック

各環境問題に特化したモジュール
(採点対象外)

モジュール11:環境パフォーマンスー生物多様性

モジュール12:環境パフォーマンスー金融サービス固有のモジュール

セクター固有のモジュール

モジュール13:追加情報&サインオフ

統合モジュール

 

3.質問書の統合とは?

前述のように、気候変動、フォレスト、水セキュリティの既存の3つの質問書は、今回1つの質問書に統合される。これまで、気候変動、フォレスト、水セキュリティを個別に回答してきた企業は、ガバナンス等のモジュール環境テーマごとに類似の情報を入力する必要があったが、今後はこれらのモジュールの重複を回避できるとともに、各環境問題に対して、より全体でバランスの取れた情報開示をすることが可能になる。

統合されることで質問書の形式は変わるが、企業に求める情報や、CDPが推進しようとしている取り組みに関しては、基本的に変更はない。気候変動、フォレスト、水セキュリティといった個別の環境テーマの問題は、各々独立したモジュール内で問われることになる。また、サプライチェーンに関する質問は、CDP側から要請を受けた企業が回答を求められ、質問書の各所で問われることになり、独立したモジュールではなくなる。 さらに、金融サービスセクターには独立したモジュールが設けられる。

 

4.なぜ質問書を統合するのか?

気候危機問題の解決は、自然資本の危機への対応を同時に行ってこそ可能である。炭素排出と気候変動は、環境問題の一部に過ぎず、天然資源の開発によって自然に対する損失は前例のない早さで続いているからである。
このような状況において、水セキュリティと森林破壊に対する企業の行動を加速させ、あらゆる環境問題に対して同時並行的に取り組むことは、これまで以上に重要となっている。

CDPの質問書が統合されることで、ステークホルダーは、直接的な事業活動、サプライチェーン、財務上の意思決定をする際に、あらゆる環境に対する影響をより適切に評価できるようになる。また、質問書の統合により、ガバナンスや戦略に関する回答の重複を避け、生物多様性、プラスチックなどのさまざまな環境問題をより体系的に包含していくという戦略的目標の達成を可能にすることが期待されている。

企業が気候や自然を守ることを事業戦略の中心に据えるために、CDPはこの新たな質問書を通じて企業に対し、環境問題全般でより効果的な行動をとることを求めている。さらに、CDPは、開示企業や投資家に対し、プラスチック、生物多様性の依存影響、およびリスク機会を、相互に関連する課題として評価し、管理するよう求めている。

 

5.質問書の統合により、スコアも統合されるのか?

質問書は統合されるものの、2024年も引き続き気候変動、フォレスト、水セキュリティテーマごとに個別に採点される。また、プラスチックと生物多様性に関する質問は、引き続き採点対象外である。

 

6.設問における主な変更点

リスクと機会に関する質問に関しては、環境に対する影響および依存の評価を含むものに変更される。回答する企業は、バリューチェーン全体のみならず、企業が管理する事業体の可視化を進め、情報を開示していくことが求められる。
さらに、回答企業は、TNFDのガイダンスに基づき、森林、水域、生物多様性において優先的に取り組むべき場所を特定することが求められる。

フォレスト(森林)
森林破壊は、CDPの開示の枠組みの中で一貫して重要な環境問題のひとつとして取り上げられている。2024年のフォレストに関する質問における大きな変更点は、これまでどおり森林と森林伐採に焦点を当てる一方で、その他の自然生態系の転換も重視されるという点である。これらは独立した単一モジュールで環境テーマの1つとして取り上げられ、森林減少と転換フリー(Deforestation/Conversion FreeDCF):森林減少および/または自然生態系の転換がない)の量、DCF達成の方法、およびその進展に関する報告が強化される。

プラスチック
2023年から、水セキュリティの質問書への回答企業は、プラスチックの取り扱いに関する質問にも回答を求められている。プラスチックは水質に強い影響を与えるが、同時により広範な環境問題にも影響を与えているため、2024年は、中小企業と公的機関を除くすべての回答企業が、プラスチックに関する基本的な質問に対する回答が求められる予定である。プラスチックの取り扱いにより、環境に大きな影響を与えるセクターには、より幅広い質問が問われる可能性がある。
また、2024年以降、プラスチックを取り扱う活動は、生産/商業化に関するものから、廃棄物および/または水管理活動、さらにはプラスチック関連活動のための金融商品/サービスの提供に関するものまで、開示の範囲が拡大される。このため、将来的には、プラスチック関連の指標を拡大することで、プラスチックの取り扱いに関する活動をバリューチェーン全体で捉えることが可能となる。

生物多様性
これまで、気候変動の質問書に回答するすべての企業が、生物多様性に関する質問の回答を求められてきた。CDPは、生物多様性、気候変動、そしてすべての自然関連の問題が密接につながっていることを認識しており、2024年には、中小企業や公的機関を除いて、すべてのCDP回答企業に対し、生物多様性に関する基本的な質問の回答を求めていく予定である。

注:ただし、前述のとおりプラスチックモジュールおよび生物多様性モジュールについては、2024年も採点対象外である。

金融サービスセクター
昨年まで金融サービス企業のフォレストと水セキュリティに関する質問は、気候変動に関する質問書に含まれていた。2024年には、金融サービス企業のポートフォリオ活動(財務活動)に関する質問のほとんどが1つのモジュールに統合され、環境テーマに含まれるポートフォリオ活動に関する設問は数問のみになる予定である。また、金融サービス企業のフォレストと水セキュリティは非公開で採点される予定であり、気候変動のスコアは、フォレストや水セキュリティのスコアによって左右されることはない。

 

7.回答を求められるテーマはどのように決定されるのか?

2024年は、これまで気候変動に回答していた企業は、引き続き気候変動に関する質問に回答することが求められ、加えて、プラスチックと生物多様性に関する質問への回答も求められる。
ただ、企業は、全ての環境テーマの質問モジュールに回答する必要はない。フォレストと水セキュリティに関する質問への回答の要否については、これらのテーマが企業の事業活動にどの程度関連しているかに基づいて判断され、これらの環境テーマと密接に関連する事業を展開していると判断された企業に対し、該当する質問モジュールへの回答が求められる予定である。
企業とこれらの環境テーマとの関連性は、過去10年に亘り行われてきたのと同様に、CDP活動分類システム(ACS)の手法を用いて評価され、関連性が高いと判断されると該当モジュールへの回答を要請される。

過去にフォレストと水セキュリティへの回答を求められた企業は、統合されたCDP質問書の一部として、これらのテーマについて該当するモジュールで再び回答を求められる可能性が高い。
これまでは、例えばサプライチェーンのメンバー企業が、自社のサプライヤーがどのテーマについて開示を求められるかを決定してきたが、今後は、CDPによるACSを用いた評価の後、CDPが決定することになる。この方式は、銀行や民間投資家から開示を求められる企業にも適用され、CDPが決定することになる。
CDPのサプライチェーンのメンバー企業、銀行、民間市場投資家は、CDPによる評価に関係なく、ステークホルダーに対して、事業や活動に関連すると考える環境テーマについて開示するよう追加要請することができる。

また、2024年の質問書では、回答企業は、森林と水に関連する依存影響、およびリスク機会を特定したかどうかを回答できるようになる。企業がもしこれらを特定したと回答した場合、フォレストと水セキュリティに関する質問モジュールが表示されることになる。これは、ステークホルダーが、取り組みを促進するために最も関連性の高い情報を開示し、またこういった関連性の高い開示情報を入手していることを確認するための検証の仕組みを強化することにつながる。

以上、CDP Corporate Disclosure Framework をブライトイノベーションが要約・仮和訳)

【参考資料】
CDPウェブサイト ”Corporate Disclosure Framework – Key changes for 2024.” February 2024.


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