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GHGとは?基礎知識と排出量削減の取り組み方

地球温暖化の原因として注目されるGHG(Greenhouse Gas, 温室効果ガス、以下、GHG)。気候変動がもたらす影響は私たちの日常生活にも及んでおり、喫緊の課題として行動を起こす必要がある。本稿では、GHGとは何かという基礎知識から、排出量削減がなぜ重要なのか、そして削減に向けた具体的な取り組みまでをおおまかに解説する。政府や企業がどのようにしてGHG排出量を減らそうとしているのか、またビジネスにおいてどのような削減目標を設定すべきかについても触れていく。

目次

  1. GHGの定義
    1-1.GHGとは?
    1-2.7ガスとは?
  2. GHG排出量の削減が求められる背景
    2-1.地球温暖化とは?
    2-2.CO2の与える影響
  3. GHG排出量削減に向けた取り組み
    3-1.政府の取り組み
    3-2.企業の取り組み
  4. 企業のGHG排出量削減目標の設定
  5. 排出量の算定方法:GHGプロトコルとは
  6. まとめ

1.GHGの定義

1-1.GHGとは?

GHGとは「Greenhouse Gas」の略称であり、地球の大気中に存在して熱を閉じ込める性質を持つガスの総称である。これらのガスは、太陽からのエネルギーは通過させる一方で、地表から放出される赤外線(熱)を吸収し、地球の気温を上昇させる効果を持つ。この現象を「温室効果」と呼ぶ。
GHGは地球の気候を維持する上で重要な役割を果たしているが、人間の活動により排出量が増加すると、過剰な温室効果が生じて地球温暖化の原因となる。したがって、GHGの排出量を正しく把握し、適切に管理・削減することが環境保全や持続可能な社会の実現に求められている。GHGには複数の種類があり、それぞれ特性や影響の度合いが異なる。次の節で詳しく解説する「7ガス」が代表的なものであり、これらを中心に排出量の把握や削減活動が行われている。

1-2.7ガスとは?

GHGは複数の種類が存在し、特に国際的に認知されている「7ガス」が排出量の把握や削減目標策定の対象となっている。7ガスはそれぞれ異なる特性と温暖化への影響度を持ち、それぞれに対応した環境対策を行うことが重要である。7ガスは、国際的なGHG排出量報告や削減目標の設定において基準とされており、企業の環境戦略やScope3排出量の管理にも関連している。各ガスの排出量削減に向けた取り組みは、その特性を理解した上で効果的に行うことが求められている。
7ガスの種類、主な特徴、人為起源の代表的な排出源は以下の通り。

ガス名 特徴・用途 主な人為排出源
二酸化炭素(CO2) 化石燃料の燃焼や森林破壊により発生。最も多く排出され、地球温暖化の主因。 発電所、工場、車両、森林伐採
メタン(CH4) 農業(特に畜産)、廃棄物処理、天然ガスの採掘で排出。CO2より温暖化効果が高い。 家畜の消化過程、埋立地、石油・ガス採掘
一酸化二窒素(N2O) 農業の肥料使用や工業プロセスから排出。温暖化効果が強い。 肥料散布、化学工場、排気ガス
ハイドロフルオロカーボン(HFCs) 冷媒やエアコン、発泡剤に使用。オゾン層破壊は少ないが温暖化影響が大きい。 冷凍・空調機器の漏出
パーフルオロカーボン(PFCs) 半導体製造やアルミ精錬に使用。大気中での分解が非常に遅い。 半導体工場、アルミ精錬
六フッ化硫黄(SF6) 電気絶縁ガスとして使用。温暖化効果は非常に高い。 変電所、電力設備
三フッ化窒素(NF3) 液晶や太陽電池製造に使用される比較的新しいガス。 電子機器製造

 

2.GHG排出量の削減が求められる背景

2-1.地球温暖化とは?

地球温暖化とは、平均気温が長期的に上昇する現象であり、主にGHGの排出量増加がその主な原因とされている。GHGは大気中で熱を閉じ込める性質があるため、地球の温室効果を強め、結果的に気温が上昇する。温暖化のメカニズムとしては、まず太陽から地球に届くエネルギーは、大気や地表に吸収される。地球は吸収したエネルギーを赤外線として放出するが、GHGがこの赤外線を吸収して再び放射するため、熱が大気中に閉じ込められる(温室効果)。この温室効果によって地球の表面温度が上昇し、それが気候変動を引き起こすとされている。
地球温暖化による影響は以下のように多岐にわたる。
・氷河や極地の氷が融解し、海面が上昇する
気候変動による異常気象の頻発(豪雨、干ばつ、熱波など)
・生態系のバランスが崩れ、動植物の生息地が減少し多様性が失われる

2-2.CO2の与える影響

CO2は、GHGの中で最も排出量が多く、地球温暖化の主な原因となっている。化石燃料の燃焼や森林破壊などの人間活動により大気中に大量に排出されており、その影響は地球環境に深刻な影響を及ぼしている。CO2は大気中での滞留期間が長く、排出量の増加が地球温暖化を加速させる大きな要因となる。GHGの中でも特に温暖化に関する影響が大きく、世界全体のGHG排出量の約70%以上、日本においては約75%を占めているとされる。そのため、CO2排出量の削減は地球温暖化対策の最優先課題であり、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーの導入、森林の保全・再生など多角的な取り組みが求められる。企業やビジネスにおいても、CO2排出量の把握と削減は重要な課題として注目されている。

温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量
図:温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量
(出典:JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター)

3.GHG排出量削減に向けた取り組み

GHG排出量の削減に関しては、政府や企業が主体となって多様な取り組みを進めている。ここでは、政府の政策や企業の具体的な活動例を中心に、GHG削減の効果や意義について解説する。

3-1.政府の取り組み

政府の取り組みは法制度の整備や支援策の提供を通じて、企業や市民の排出削減行動を促進している。代表的な施策には、再生可能エネルギーの普及促進、排出量取引制度の導入、低炭素技術の研究開発支援などがある。これらはGHG排出量削減に対する社会的な基盤を築くものであり、技術革新の加速や経済の低炭素化といった、企業のビジネス活動にも大きな影響を与えている。
主な政府の取り組み内容は以下の通り。

取り組み内容 具体例・説明 期待される効果
法制度の整備 GHG抑制に関する法律の制定・改正。排出基準の設定や報告義務の導入など。 企業や産業の排出削減行動の促進と透明性の向上。
カーボンプライシング 排出量に価格を付け、排出削減を市場メカニズムで促進。日本では排出量取引市場の整備が進む。 効率的な排出削減と経済的負担の最適化。
再生可能エネルギーの普及促進 太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギー導入支援。固定価格買取制度(FIT)など。 化石燃料依存の低減と温室効果ガス排出削減。
低炭素技術の研究開発支援 省エネ技術やCO2回収・貯留技術(CCS)などの開発を補助。 革新的技術による長期的な排出削減効果。
国際的な気候変動対策への参加 パリ協定などの国際枠組みに基づく目標設定と報告。 国際社会との連携強化とグローバルな排出削減貢献。
環境保全の規制強化 森林保全や土地利用規制、水質・大気汚染防止の強化。 自然吸収源の保護と温暖化抑制への寄与。

これらの政策は、GHG排出の「Scope1(自社の直接排出)」「Scope2(エネルギー起源の間接排出)」「Scope3Scope2以外の間接排出)」それぞれの排出源に対応した取り組みを促進し、企業や自治体、個人の行動変容を支援している。政府の役割は、技術革新を促進するとともに、経済活動と環境保護の両立を図ることにある。

3-2.企業の取り組み

企業は自社の事業活動におけるGHG排出量削減を積極的に進めており、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーの導入、廃棄物削減やリサイクルの推進など、多角的なアプローチを採用している。特にScope3排出量を含むサプライチェーン全体の排出量把握と削減に取り組む企業が増え、ビジネスの持続可能性確保に寄与している。
主な企業の取り組み内容は以下の通り。

取り組み内容 具体例・説明 期待される効果
エネルギー効率の改善 設備の省エネ化や運用の最適化によるエネルギー消費削減。 GHG排出量の削減とコスト削減。
再生可能エネルギーの導入 太陽光や風力などのクリーンエネルギーの利用拡大。 化石燃料依存の低減とGHG排出量削減。
廃棄物削減・リサイクル推進 廃棄物の発生抑制とリサイクル率の向上。 資源の有効活用と環境負荷軽減。
Scope3排出量の管理 サプライチェーン全体の排出量把握と削減に取り組む。 ビジネス全体の環境負荷把握と持続可能性向上。

 

4.企業のGHG排出量削減目標の設定

企業がGHG排出量の削減目標を設定するにあたり、サプライチェーン全体を対象にすることが近年重要視されている。特にScope3排出量は、Scope1Scope2排出量に比べて対象範囲が広く、サプライチェーンに関わる取引先や流通過程で発生するGHG排出量を含むため、企業の環境負荷を正確に把握し、効果的な削減策を講じるうえで欠かせない。
GHG排出量削減目標の設定の流れとしては、まず、企業はサプライチェーン全体のGHG排出量を把握する必要がある。これには、取引先や製品・サービスのライフサイクルに関するデータを収集し、分析する作業が含まれる。Scope3排出量の算定では、GHGプロトコルに基づくガイドラインが活用される。
次に、企業は削減目標を明確に設定する。目標は定量的かつ達成可能なものであり、企業の中長期的な環境戦略に整合していることが重要である。同目標を設定するに際し、科学的根拠に基づく目標設定、例えばSBTi(Science Based Targets initiative)などによる認証を取得することも推奨される。
続いてサプライチェーン全体で排出削減を進めるためには、取引先企業と協力し、情報を共有しながら改善活動を推進することが求められる(エンゲージメント)。
最後に、目標達成状況を適切に情報開示することで、ステークホルダーの信頼を得ることにつながるとともに、企業の社会的責任(CSR)やESG評価の向上といった成果にもつながる可能性がある。

5.排出量の算定方法:GHGプロトコルとは

GHG排出量の把握に際して、GHGプロトコルに基づいて行うことが推奨されている。GHGプロトコルとは、GHGの排出量を正確に把握するための体系的な算定方法と国際的に認められた基準を提供する枠組みである。環境管理やビジネス戦略において重要な役割を果たしており、正確な排出量の算定は、持続可能な環境対策や企業のカーボンマネジメントに欠かせない基礎知識となっている。
GHGプロトコルの特徴は、その体系的な構造にある。排出源をScope1Scope2Scope3の三つに分類し、それぞれの排出量を明確に区分して管理する方法を提供している。企業は自社の直接的な排出に加え、購入電力やサプライチェーン全体にわたる間接排出も把握しやすくなる。GHGプロトコルに基づく排出量の算定では、以下のポイントが重要となっている。

・正確な活動データの収集と管理:燃料使用量やエネルギー消費量など、排出量計算に必要なデータを正確に集める
・排出係数の適切な適用:地域やエネルギー種類に応じた信頼性の高い排出係数を使用する
・透明性と一貫性の確保:算定過程や結果を明確にし、社内外に報告することで信頼性を高める
・定期的な見直しと更新:算定方法やデータの精度を継続的に改善し、最新の基準や技術を反映させる

6.まとめ

本稿では、GHGについての基礎知識からGHG排出量削減の重要性、そして政府や企業による主な取り組み、さらに排出量の算定方法であるGHGプロトコルについて概要の解説を行った。企業はまず自社のGHG排出量の算定から着手し、削減方針を定め具体的な目標の設定、削減策の実行に着手することが求められる。これらの取り組みは、企業の環境関連の責任を果たすだけでなく、コスト削減やブランド価値の向上、法規制への対応強化といったビジネスメリットももたらすのである。今後も企業は技術革新や新たな環境戦略を取り入れながら、積極的にGHG排出削減に取り組むことが期待されている。

【参考資料】
温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量 | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
サプライチェーン排出量 概要資料|環境省
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