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CDP2026フォレスト回答に向けた準備対応

CDP質問書は2024年に従来の形式から大幅に変更し、多くの新規質問設定や質問変更を行った。フォレストをはじめ、自然関連設問においてはTNFDの推奨開示である14の開示項目のうち、13項目は整合が図られた。また、2025年11月、および2026年1月に公開されたCDP2026フォレストの方向性では、「TNFDとの完全整合に向けて、自然関連の対象を拡大させ、新たに海洋を含め、フォレスト分野の質問を強化する」と記載がある。本稿ではCDP2025のフォレストを振り返るとともに、CDP2026の回答に向けて準備しておきたいポイントについて解説する。CDP2026フォレストの対策だけでなく、今後の自然関連の開示の準備にも参考となる内容である。なお、2026年1月時点で公開されているCDPのガイダンス等を基にブライトイノベーションが独自に予想したものである。

目次

  1. CDP2025フォレストの質問の振り返り:エッセンシャルクライテリアの明確化
    1-1.コモディティに関するエッセンシャルクライテリア
    1-2.除外項目に関するエッセンシャルクライテリア
  2. CDP2026フォレストの変更点:7つのコモディティが採点対象に
  3. CDP2026フォレストへの回答準備対応
  4. まとめ

1. CDP2025フォレストの質問の振り返り:エッセンシャルクライテリアの明確化

CDP2025では、スコアリングメソドロジー(採点基準)に大きな変更はなかったものの、フォレストについては主に2つのエッセンシャルクライテリアの基準がより明確化された。エッセンシャルクライテリアとは、一定以上のスコアを取得するために満たなさければならない要件で、今回は明確化された2つのエッセンシャルクライテリアについて解説する。

1-1. コモディティに関するエッセンシャルクライテリア

1つ目は、質問1.22「貴組織が生産および/または調達するコモディティに関する詳細を提供してください」に関連する基準である。採点対象となる4つのコモディティ(木材製品、パーム油、畜牛品、大豆)について「開示する」、あるいは「開示しない場合には正当な理由とともに総量を提示」することがリーダーシップレベルのエッセンシャルクライテリアとしてより明確に位置づけられた。正当な理由として認められる例としては「開示しないコモディティの総量がコモディティ総量の1%未満」等が示されており、企業が調達・生産している4つのコモディティすべてを開示するか、開示しない場合でも総量の把握がA-以上のスコアを目指す上で必須となっている。

1-2. 除外項目に関するエッセンシャルクライテリア

2つ目は、質問8.1.1「除外項目についての詳細」に関連する基準である。コモディティ量のうち、5%を超える部分をスコープ外として除外している場合には、Aリスト基準を満たさなくなる旨がエッセンシャルクライテリアの説明の中で明確化された。また、除外の規模に関するその他の比例データ(例:調達支出の割合や世界的な使用量)は認められないと明記されており、除外する場合でもその量を正確に把握することが求められている。
これらの基準の明確化から、企業の自然への影響を適切に評価するためには、調達・生産量の総量の把握と開示がより重視されていることがうかがえる。

2. CDP2026フォレストの変更点:7つのコモディティが採点対象に

CDP2026回答スケジュールはすでに公開されており、2026年4月に質問およびガイダンスが公開される予定である。また、2025年11月には『企業による開示:CDP2026情報開示サイクルに向けた準備-2026年の質問書変更の方向性および目的に関する初期インサイト-』が、26年1月には「CDP2026情報開示サイクルに向けた準備-CDP2026質問書における主な変更点-」がそれぞれ公開され、CDP2026フォレストの質問の変更方針等が示された。2026年2月27日時点で日本語訳も公開されている。このガイダンスの変更では、海洋分野(Ocean)の追加に加え、これまでスコアリング対象外であったカカオ・コーヒー・天然ゴムについても畜牛品・パーム油・大豆・木材と同一の方法論に基づく評価対象のコモディティとなる方針が示されている。下記にて、本ガイダンスをもとに、CDP2026のフォレストおよび自然関連変更点の概要を整理する。

①TNFDとの整合性を強化
ガイダンスでは「TNFD提言との完全整合に向けて進める中、CDPでは、自然に関する対象範囲を拡大し、新たに海洋を含め、フォレスト分野の質問を強化します。これは、自然へのインパクトと依存についてより完全に把握するための重要なステップです。」とあることから、海洋分野の追加以外にもフォレストの質問が追加、あるいは変更があることが予想される。自然へのインパクトと依存については、TNFDが推奨しているグローバル中核指標が参考となる。これは企業が自然へのインパクトの測定や「指標と目標」項目での開示をする際の推奨指標で、まだCDP質問書と整合されていない中核指標も複数存在する。今後、整合性の強化によって、これまで整合されてこなかった中核指標に関する質問が追加される可能性がある。

②新たに海洋が追加
海洋については、「世界経済の安定とレジリエンスのためには、陸上生態系と海洋生態系の両方が重要である」、「土地資源と海洋資源の持続可能な管理の優先順位が高くなっています。」といった記載があり、将来的には海洋資源の利用に関する質問(例:漁獲量)等が追加されると予想されるが、公開された2026年の方針には「海洋関連の内容はCDPの既存の情報開示の枠組みに統合されます」とあるため、海洋に特化したモジュールは2026年には追加されず、気候変動・水セキュリティ・フォレストと共通した質問に海洋が追加されることが予想される。将来的には、TNFD提言との整合を進める上で、TNFD提言で推奨されている海洋関係の開示推奨項目が、新質問として追加される可能性がある。具体的には、TNFDが公開しているセクター毎のガイダンスのうち、海洋に関わる、漁業(Fishing)や水産養殖(Aquaculture)等に記載されているセクター固有の指標等があげられる。水産養殖のガイダンスでは、セクター固有の指標として、「銅を含む、種類別に海洋に放出された化学汚染物質」や、「野生資源の利用」等が挙げられており、こういった指標に関する質問が今後、追加される可能性がある。

③既存の質問の一部を改良し、適応策とレジリエンスの開示強化
「組織が物理的な環境リスクに対してどのように備え、対応しているかに関する知見への需要が高まっている」と記載があることから、気候関連や自然関連の物理リスクやその対応策についての既存の質問が変更あるいは新規の質問が追加される可能性がある。

④森林コモディティのカカオ・コーヒー・天然ゴムのスコアリング開示
「森林コモディティに関する情報開示の対象範囲を広げる変更の一環として、CDPでは、木材、パーム油、畜牛品、大豆に加えて、カカオ、コーヒー、天然ゴムのスコアリングを開始」と記載されており、これまでスコアリング対象外であった、カカオ、コーヒー、天然ゴムの3つのコモディティについてもCDP2026から対象になることが予想される。

3. CDP2026フォレストへの回答準備対応

公開されたCDP2026フォレストの方針を元に4つの変更を前項で解説した。ここでは、その4つの変更に対して質問が公開される2026年4月下旬までにできる準備について、解説する。

①TNFDとの整合性強化に伴う、新規質問への対応
前述の通り、「TNFD提言との完全整合に向けて進める」とされていることから、これまで整合が取れていない項目についても新規質問が追加される、あるいは既存質問の変更が行われることが予想される。CDPとTNFDはそれぞれ整合している項目についてのマッピングを公開しているため、それらを俯瞰することで、どういった内容の設問が追加されるかどうか予想することができる(図参照)。ただし、広範囲に及ぶ開示推奨項目の中からどこの整合が強化されるか予想することは容易でないことや、今後も完全整合に向けて質問の追加や変更が行われると予想される。そのため、最も有効な対策はTFND提言に沿った開示の準備を始める、あるいは高度化することが最善の対応策であると言える。これからTFND提言への対応を考えている企業はこれを機にTNFD開示の準備を開始することを検討することが望まれる。
なお、TNFDとの整合はフォレスト関連の質問だけでなく、気候変動でも対象の質問でも行われているため、CDPに回答する全ての企業に対して、TFND提言への対応はCDP2026フォレストに向けた回答を準備する上で有効である。詳しくは過去の記事『CDP質問書のTNFDフレームワークとの整合』を参照されたい。

図:CDP2025質問書のTNFDフレームワークとの整合(ブライトイノベーション作成)

②海洋に関する質問への対応
CDP2026では既存の共通質問の中で海洋について回答することになると想定される。モジュール2の「依存、インパクト、リスク、機会の特定、評価および管理のプロセス」、モジュール5の「組織に重大な影響を与えることが見込まれるリスクおよび/または機会」といった質問が対象になることが方針としてでている。2026年はスコア対象外となる方針のため、CDP2026で回答できない場合でもスコアには影響はないと想定されるが、これらの質問について、海洋関連への重大な依存・影響・リスク・機会があるセクターは回答することが求められる。

③自然関連のリスクに対する適応策とレジリエンスの高度化
既存の質問を変更して、リスクへの対応策の開示を強化することが予想されるため、これまでTCFDやTNFDを通じてリスク機会を特定し、対応策まで講じた企業であっても、見直しや、高度化することが望まれる。具体的には、自然関連のリスクについて、シナリオ分析をすることが有効であると考えられる。TNFD提言に沿って開示をすでにしている企業であっても、シナリオ分析まで実施している企業はまだ少数であるが、不確実性やドライビングフォースを考慮した、自然関連課題について複数のシナリオを用いた分析を実施することで、リスクに関する理解の深化やより具体的な対応策を講じることが可能となる。

④カカオ・コーヒー・天然ゴムを調達している企業は情報収集を
採点対象にカカオ、コーヒー、天然ゴムの3つのコモディティが追加される事が予想される。追加された場合、これまで回答が不十分であってもスコアに影響がなかった3つのコモディティにおいても、今後は回答しなければ、スコアに影響がある。そのため、これら3つの調達量や調達先などの情報を集めるのに、時間がかかる場合は、質問が公開される2026年4月下旬までに、早めに収集の準備をしておくことが望まれる。前述したとおり、エッセンシャルクライテリアにおいて調達・生産しているコモディティの総量の把握・開示が求められているため、総量を把握していないだけで、A-以上のスコアを取れなくなる可能性もある。

4. まとめ

本稿では、CDP2025フォレストにおけるエッセンシャルクライテリアの明確化を概観したうえで、CDP2026のフォレストで予定される森林コモディティの7種への拡大と海洋分野追加の方向性等について解説した。 また、TNFD提言に沿った開示の高度化、海洋や新規採点対象の3つのコモディティに関するデータ収集の前倒し、自然関連リスクのシナリオ分析など、CDP2026のフォレスト質問公開前から取り組める準備事項を実務の観点から提案した。CDP2026の質問は4月下旬に公開されるため、それまでの準備として参考になれば幸いである。

【参考資料】
CDP_Scoring_Essential_Criteria_2025_-_Forests.pdf
CDP-TNFD Correspondence Mapping – TNFD
開示基準やフレームワークとの整合 – CDP