2016年9月7日のカーボンアドバイザー記事において、カーボンプライシングとその動向について概要を解説しました。今回は、内部カーボンプライシング(内部炭素価格付け)の枠組みについて解説します。
内部炭素価格付けには、大きく3つの形態があります。1つ目は「シャドープライス(Shadow Price)」、2つ目は「内部炭素課金(Internal Fee)」、3つ目は、「暗示的価格(Implicit Price)」です。
シャドープライス(Shadow Price)とは、政策的に炭素価格が課せられた場合の事業やプロジェクトへの財務影響を把握するとともに、温室効果ガス排出削減を促進することを目的として、温室効果ガスに仮想内部価格を設定するものです(投資判断、財務影響判断に活用)。3つの内部炭素価格付け手法の中で最も採用企業が多い手法です。
炭素価格に関しては、事業やプロジェクトの財務影響を的確に把握するための価格設定が必要であり、今後の中期的な政策動向を見越し、25-50USD/t-CO2程度のレンジが多い状況となっていますが、特に石油・化学等の多量排出業種の場合、将来的な炭素価格動向予測をふまえ、長期的な事業リスクの把握等を目的として更に高い価格設定を行っている企業もあります。
内部炭素課金(Internal Fee)とは、社内において、温室効果ガスの排出に課金することです。具体的には、社内における炭素税や排出量取引制度の導入が挙げられます。この方式の目的は、温室効果ガス排出量を削減するインセンティブを与えるとともに、温室効果ガス排出削減プロジェクトのための資金を調達するものです(例:各部門/グループに課金し、事務局が徴収し、低炭素投資に活用)。
炭素価格に関しては、内部の負担をできる限り少なくすることと、排出削減投資に必要な資金の確保を両立できる価格帯を設定することが必要であり、5-15USD/t-CO2程度の場合が多い状況となっています。
暗示的価格(Implicit Price)とは、温室効果ガス排出量に対する価格設定はしないものの、高い排出削減目標を設定するとともに温室効果ガス排出削減にどの程度コストをかけたかを内部的に算出するものです。
内部炭素価格付けを導入する企業は、他社の炭素価格に惑わされず、導入の目的を明確化し、目的に応じて手法と価格を決定することが重要となります。よくある導入の目的としては、例えば、カーボンプライシングによる影響の把握・投資判断等での活用、排出削減投資のための資金の確保、排出削減目標達成に係るインセンティブの導入、および投資家や評価制度への対応等が挙げられます。
いずれにせよ、中長期的な効果を挙げるためには、各社に合った制度を導入することが重要となりますので、必要に応じて下記「ご質問・お問い合わせ」よりご連絡ください。
尚、内部炭素価格付けについては、今後も本カーボンアドバイザーにて取り上げていく予定です。
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