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カーボンプライシングとその動向

カーボンプライシングとは、排出する炭素に価格を付けることであり、具体的には、炭素税(気候変動税)や排出量取引制度等が該当します。既に一部の国や地域で炭素税や排出量取引制度は導入されていますが、その炭素価格や仕組みの改善、及び世界的なリンクが課題となっています(炭素税と排出量取引の特徴は、図表1参照)。


【図表1:炭素税と排出量取引の特徴】

 

炭素税/気候変動税

排出量取引

概要

・エネルギー使用または温室効果ガス排出量に課税

・上流工程(化石燃料輸入・精製会社)に課税し下流工程に転嫁されるパターンと、下流工程(化石燃料を最終消費者に販売する業者)にも課税するパターンが挙げられる

・一定規模以上の企業(例:原油換算1,500kl以上使用する事業者)の目標(排出枠)を定め、それを超えたら排出枠を貨幣で取引させる

・EUが移行しているように、排出枠を全量オークションで買い取る方式もあり、その方向に向かうことも想定される

価格

・決定した炭素価格

・排出枠のマーケットプライス

排出削減の
実現

・炭素価格による

・ Cap & Trade(用語集参照)の場合、上限以内で抑えられる

システムの
複雑性

・比較的導入しやすい(ただし、課税方法にもよる)

・排出枠の割り当て、排出削減量の算定、検証、排出量取引等、システムが比較的複雑

カーボンプライシングの導入が活発に議論されている背景として、COP21で決定された「産業革命前からの気温上昇幅を2℃未満目標に抑える」という目標の達成のために、社会経済システムの転換が必要であることが挙げられます。具体的には、温室効果ガス排出削減に経済的インセンティブを与える仕組み及び低炭素・脱炭素技術や製品のニーズが高まる(売れる)仕組みが挙げられます。カーボンプライシングにより、政策的に最小の社会費用で、温室効果ガス排出削減の実現が可能といわれています。

COP21の初日に発足したカーボンプライシングリーダーシップ連合(Carbon Pricing Leadership Coalition)の加盟組織を中心として、企業のCEO及び政府機関等が徹底してカーボンプライシングの導入が主張されています。最近では、石炭・重電大手14社(例:BHP Billiton Shell, BP, Alstom, Siemens, Schneider Electric, HP, Alcoa)が、カーボンプライシングの導入を求める等、企業の活動が活発になりつつあります。日本国内でも重要な戦略的対策の1つとしてカーボンプライシングが挙げられており、議論が開始されています。

図表2は、欧州をはじめとした炭素価格付けに関する計画です。スウェーデン、スイス、及びフランスを中心として、大幅な価格の上昇が見込まれています。日本は現時点において、炭素価格の見込みは低くなっていますが、海外の動向の影響を少なからず受ける可能性は高いものと想定されます。

出所:諸外国における炭素税の導入状況(平成28年1月、環境省)


将来的なカーボンプライシングの導入を想定して、2016年6月末時点で約450の企業が内部炭素価格付け(内部カーボンプライシング)を実施しており、その他、550以上の企業が2年以内の実施を表明しています。内部炭素価格付けについては、今後、本カーボンアドバイザーにて取り上げていきます。