気候変動・脱炭素

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2022年10月14日 (金)
TCFD
解説

TCFD提言改訂等への対応とISSBの動向(2/3)

前回の記事において、2021年10月にTCFD提言の附属文書が改訂され、TCFDが企業に推奨する開示内容の一部が明確化・拡充されたことを概説した。本稿では、このうち「移行計画」について改訂版附属文書と同時にリリースされた補助ガイダンス「指標・目標及び移行計画に関するガイダンス」に基づき、その概要について解説する。 

 

「移行計画」とは 

2021年10月改訂版TCFD附属文書において、温室効果ガス(以下GHG」)排出削減を約束・宣言した企業等は低炭素経済への移行に向けた計画を説明すべきであると明記された。これが「移行計画(Transition plans)」である。 

移行計画に必ず含めなければならない情報はルール化されていないが、GHG削減の具体的な施策や戦略等を含む広範な情報が含まれ得る。TCFDは「移行計画」の情報のうち、少なくとも以下の3点を含む主要な情報(key information)を気候関連財務情報の一部として開示することを奨励している。 

 

1.現在のGHG排出量・排出状況 

2.低炭素経済への移行を支える活動・行動(GHG排出削減目標、事業・戦略の計画的変更を含む) 

※TCFDは、GHG排出削減目標には「目標年月日、スコープ、範囲」と「毎年の進捗状況」の情報を含めるべきと説明している。

3.低炭素経済への移行に伴う事業・戦略・財務計画への影響 

 

「移行計画」の開示対応の実際 

2021年に行われたTCFDのアンケート調査の結果では、回答企業の3分の2が移行計画を策定済み、または次年度中に策定予定という結果となっている。現時点(2022年10月現在)では、「移行計画」の開示まで実現できている日本企業はまださほど多くないが、CDP気候変動質問書2022においても「移行計画」の質問が追加されたことも追い風となって、今後は開示が増加することが見込まれる。 

 

現状では、開示されている「移行計画」の内容は、上述の1.及び2.の一部に留まっているケースが比較的多い将来においては、3.の情報も含めた形での開示が進み、TCFDが想定している組織の事業戦略の一環としての移行計画」という色彩を帯びていく可能性があると考えられる。 

 

なお、移行計画の作成・開示に際しては、TCFD補助ガイダンスが紹介する、優れた移行計画の特徴7項目及び移行計画に含めることを検討すべき21項目をそれぞれ参照することが望ましい(リンク先40~42)。 

 

次回は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が本年3月に公表した「気候関連開示基準案」の概要とTCFD提言との関係について解説する(11月掲載予定)  

 

【参考資料】 

Annex: Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial DisclosuresTCFD、2021年) 

Guidance on Metrics, Targets, and Transition Plans(TCFD、2021年) 

METRICS, TARGETS, AND TRANSITION PLANS CONSULTATION -Summary of Responses(TCFD、2021年) 

 

 関連記事はこちら:

TCFD提言改訂等への対応とISSBの動向(1/3)

 

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