「TCFD提言とは(1/2)」で述べた通り、TCFD提言の重要性が高まる中、TCFD提言の核となる要素である「気候シナリオ分析」の実施に関する企業のニーズが増えている。気候シナリオ分析を実施し、その結果を開示する企業は国内外で少しずつ増えている。既にシナリオ分析実施結果を積極的に開示している企業は先進的であり、素晴らしいといえる。一方、一部企業を除き、気候シナリオ分析はまだ初期段階である。
本カーボンアドバイザーでは、2回にわたり、初めて気候シナリオ分析を実施する際の進め方のポイントについて解説する。
初めて気候シナリオ分析を行う場合、事業部門側としては、そもそも「気候関連リスク・機会」のイメージがわかない場合や、シナリオ分析の範囲(どこからどこまでの分析を指しているのか)の認識が、人により異なる場合が多い。そのため、初期段階で、気候関連リスク・機会とはどのようなものを指すか、また、「シナリオ分析」とは何を実施することなのかについて、関連する方々が共通認識を持つことが重要である。
また、複雑な分析プロセスにするのではなく、可能な限りシンプルなプロセスで実施するとともに、重要なものが漏れない方法で実施することが必要である。さらに、各事業部門に対して多大な作業負荷をかけなくて良いよう、事業分野ごとの特性をふまえたリスク・機会のたたき台等を整理した資料を事務局側で作成し、それに基づいて検討するのも一案である。初めは細かく分析しすぎず、年々、範囲を広げる、またはより深く分析するほうがスムーズに進む場合もある。
気候シナリオ分析の大きな枠組みは下記の通りである。
Step1:シナリオ分析対象分野の選定
Step2:重要な気候関連リスク・機会の特定
Step3:既存の参照シナリオの選定と社会シナリオの検討
Step4:社会シナリオに対する、リスク・機会とその財務影響の検討・明確化
Step5:今後の対応の方向性・方針・戦略の検討
気候シナリオ分析において特に検討が必要な項目(=難しい項目)は、上記Step3である。
次回以降、気候シナリオ分析の全体像と上記各プロセスの実施ポイントを解説する。