Carbon &
Circular Portal

カーボン&サーキュラーポータル

CARBON &
CIRCULAR
PORTAL

カーボン&サーキュラーポータル

CO2排出量を減らすためのカーボンフットプリントの算定方法

環境問題やサステナビリティへの関心が高まる中、日常生活やビジネス活動がどれほどの温室効果ガスを排出しているのか、その「見える化」を目的としたカーボンフットプリントの重要性が増している。しかし、カーボンフットプリントとは何か、どのように計算するのかについてはあまり知られていない。本稿では、カーボンフットプリントの基礎知識から、注目される背景、算出方法までを分かりやすく解説する。

目次

  1. カーボンフットプリントとは
  2. カーボンフットプリントが注目される背景
  3. カーボンフットプリント算定の流れ
  4. 主な算出方法と基準
  5. まとめ

1.カーボンフットプリントとは

カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products, CFP)は、ISO 14067(温室効果ガス-製品のカーボンフットプリント)において「気候変動への影響に関するライフサイクルアセスメント(LCA)に基づき、当該製品システムにおける GHG の排出量から除去・吸収量を除いた値を、CO2排出量相当に換算したもの」と定義されている。すなわち、製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(CO2、メタンなど)を二酸化炭素換算量(CO2e)に換算し、製品に表示された数値もしくは数値を表示する仕組みを指す。
この概念は、地球温暖化の主要因であるCO2をはじめとする温室効果ガスの排出量を定量化し、環境への影響を数値で表現するものである。具体的には、製品やサービスのライフサイクル全体にわたるCO2排出量を算出することで、その製品が環境に与える影響を把握する。これには、原材料の採取から製造・流通・使用・廃棄に至るまでのすべての段階が含まれる。
カーボンフットプリントを把握することにより、ライフサイクルの各段階ごとの温室効果ガス排出量を見える化できる。これにより、排出削減に優先的に取り組むべきライフサイクル段階の特定や、温室効果ガス排出削減の目標値の設定が可能になる。さらに、その目標に基づいて、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーの導入など、具体的かつ効果的なCO2排出量削減対策を講じ、その効果を計ることを可能にする。
さらにカーボンフットプリントが製品やサービスに表記されることにより、消費者は自ら選択した製品やサービスがもたらすCO2e排出量をより具体的に把握しやすくなることが可能になる。

2.カーボンフットプリントが注目される背景

日本政府は、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ、いわゆるカーボンニュートラルを実現することを目指す方針を掲げている。これに伴い、企業には自社の事業活動だけでなく、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出削減への取り組みが求められつつある。パリ協定などの国際的な枠組みのもとで、各国は長期的な排出削減目標を掲げ、持続可能な未来を実現するための方策を進めている。
特に企業においては、持続可能な経営の一環として、投資家や取引先、消費者など様々なステークホルダーからカーボンフットプリントの算定と削減への取り組みが求められるようになっている。消費者の環境意識の高まりに加え、SDGs(持続可能な開発目標)に代表される国際的な動きも、カーボンフットプリントの重要性を押し上げる一因となっている。これにより、製品やサービスの環境負荷を評価し、環境に配慮した選択を行うことが、企業のブランド価値や競争力に一定の影響を与えるようになってきている。そのため、カーボンフットプリントは、環境負荷の低減に取り組む際の参考指標の一つとして活用されている。

3.カーボンフットプリント算定の流れ

カーボンフットプリントを正確に計算するためには、体系的な手法が必要である。このプロセスを効率よく進めるための流れを以下に説明する。
① 算定方針の検討まず、算定の目的と範囲を明確にする。対象とする製品やサービス、ライフサイクルの段階を決定し、算定結果をどのように活用するかを整理する。算定対象を選定する際には、候補リストを作成し、「算定インパクト」と「算定可能性」の二軸で評価し絞り込む。その後、対象のライフサイクルステージを原材料調達から廃棄・リサイクルまで決定する。B2C製品とB2B製品ではステージが異なることが多いが、ここではB2C製品を例に説明する。
②算定範囲の設定決定したライフサイクルステージを基に、バウンダリー(領域)を設定する。この時、「ライフサイクルフロー図」を作成して、対象製品・サービスのGHG排出源を網羅的に洗い出し、算定の対象範囲を可視化する。次に、シナリオ・カットオフの検討を行う。影響が小さく算定が難しいプロセスはカットオフ可能であるが、ISO 14067ではカットオフは望ましくないとされている。避けられない場合でも、最小限に留めるべきである。
③カーボンフットプリントの算定実施算定ルールを設定し、算定手順書を作成する。これは社内情報共有や第三者検証、将来の再算定にも利用できる。手順書には使用するシナリオを記入する。次に、使用するツールやデータを準備する。算定用アプリケーションや表計算ソフトを用いて、算定手順書で決めた活動量と排出係数を入力し、カーボンフットプリントを算出する。これらのツールは、第三者検証時に必要な資料となる。
このように、体系的な手順を踏むことで、カーボンフットプリントの算定を効率的かつ正確に行うことが可能である。

CFPが削減対象とする排出量
図:カーボンフットプリント算定の仕方(ブライトイノベーションにて作成)

4.主な算出方法と基準

カーボンフットプリントの算定は、活動量データ(原材料の使用量など)に排出係数(活動量の単位あたりのGHG排出量)を掛けて算出する方式が一般的であり、多くの国際的な基準に採用されている方式である。製品のカーボンフットプリント算定に関する代表的な国際規格としては、ISO 14067が挙げられる。この規格は、製品のライフサイクル全体を通じて排出される温室効果ガスの量を算定し、その結果を報告するための要求事項と指針を提供するものである。
一方、企業や組織全体の温室効果ガス排出量の算定・報告には、GHGプロトコルが広く利用されている。GHGプロトコルには組織向けの基準に加え、製品ライフサイクルを対象とした基準も用意されており、目的に応じて使い分けることができるのが特徴である。
カーボンフットプリントの算定は、ライフサイクルアセスメント(LCA)の考え方をベースとしており、原材料の採取から生産、流通、使用、廃棄・リサイクルに至るまでの全過程を対象とする。このアプローチにより、製品の全ライフサイクルを通じた温室効果ガス排出を包括的に評価することができるのである。
算定の精度を高めるうえで、一次データの活用が重要となる。一次データとは、実際の生産現場やサプライヤーから直接収集されたデータのことであり、このデータを二次データ(公的統計やLCAデータベースなど)と組み合わせて用いることで、より実態に近いカーボンフットプリントの算定が可能になるのである。一方で、一次データの収集が困難な場合には、代表的なプロセス条件や業界平均などにもとづいて妥当なシナリオを設定し、その前提を明示したうえで算定に用いることも行われる。

項目 特徴の概要
ISO 14067 ・製品のカーボンフットプリント(CFP)の算定および報告に関する国際規格で、ライフサイクル全体の温室効果ガス排出量をCO2換算で評価するための要求事項と指針を定めている。​
・ISO 14040/14044に基づくLCAの枠組みを前提としつつ、GHGに特化したルール(機能単位、システム境界、データ品質、配分、カーボンストック・土地利用変化など)を詳細に規定している。​
​ ・製品レベルのCFP算定結果を、環境ラベリングや顧客・取引先への開示、削減施策の検討などに活用することを想定している。 
GHGプロトコル ・ 企業や組織が温室効果ガス排出量を算定・報告するための国際的な枠組みで、世界資源研究所(WRI)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が策定。​
・​排出源をScope1(直接排出)、Scope2(購入エネルギーに伴う間接排出)、Scope3(サプライチェーン全体のその他の間接排出)の3区分に分類し、体系的な排出量管理を可能にしている。
・​企業全体のGHGインベントリ構築を目的としており、必要に応じて製品・プロジェクトレベルの算定基準(GHG Protocol Product Standardなど)も利用できる。

 

5.まとめ

カーボンフットプリントは、日常生活や企業の事業活動の中で、どれだけの温室効果ガス排出量を伴っているかを示す重要な指標である。本稿では、カーボンフットプリントの概要から、その概念が求められる背景、具体的なの流れや主な算定基準までを解説してきた。カーボンフットプリントの算定を通じて温室効果ガス排出量を把握・管理することは、環境負荷を減らし、持続可能な社会を実現していくうえで欠かせない取り組みである。
製品やサービスのライフサイクル全体での温室効果ガス排出量を最小化するためには、自社の取り組みだけでなく、サプライヤーとの連携も重要になる。一方で、消費者の環境意識も高まりつつあり、カーボンフットプリントが明示された製品を選ぶことを通じて、より持続可能な選択を行おうとする動きも見られる。
企業にとっては、環境に配慮した取り組みを行うことがブランド価値を高め、中長期的な競争力の向上につながる要素の一つになっている。そのため、カーボンフットプリントに関する情報開示の透明性を確保し、継続的な改善サイクルを回していくことが一層重要になりつつある。
さらに、政府や国際機関による気候変動対策や情報開示に関する政策も、温室効果ガス排出削減の取り組みを後押ししている。企業には、こうした規制や要請に対応するだけでなく、より主体的に環境負荷の低減に取り組む姿勢が求められている。このような背景から、企業の環境・サステナビリティ戦略の一環として、カーボンフットプリントの算定と削減に取り組むことの重要性は、今後も一層高まっていくと考えられる。
【参考資料】
カーボンフットプリント全般 | グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省
『カーボンフットプリント表示ガイド 概要』| 環境省
『カーボンフットプリント ガイドライン(別冊)CFP 実践ガイド』| 経済産業省、環境省
『サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けた カーボンフットプリントを巡る動向』| 経済産業省