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SBTi FLAGとは?基礎知識や最新ガイダンスの要件を解説

地球温暖化が進む現代社会において、持続可能な未来を実現するための取り組みが世界各地で進行中であるが、その中でも注目されているのが、SBTiによる企業が地球温暖化対策として掲げる科学的根拠に基づいた目標設定だ。SBTiは、企業が気候変動緩和に向けた具体的な行動を取るための指針を提供する国際的なイニシアティブであり、この取り組みをさらに強化する形で登場したのが、今回取り上げるSBTi FLAGである。企業は、持続可能な未来に貢献するための具体的な行動が求められている。本稿では、そもそもSBTiとは何か、SBTi FLAGの基礎的な内容からFLAG目標設定の対象となる企業、さらに2026年3月に公開されたSBTi FLAGガイダンスの主な要件を解説する。

目次

  1. 基本概念
    1-1.SBTiとは
    1-2.SBTi FLAGとは
    1-3.SBTiのSBTとFLAG目標の違い
  2. FLAG目標設定の対象となる企業
  3. SBTi FLAGガイダンスの主な要件
    3-1.土地関連の排出および除去を算定する
    3-2.短期のFLAG目標を設定する
    3-3.長期のFLAG目標を設定する
    3-4.AFiに整合した森林破壊ゼロ(No-deforestation)のコミットメントを設定する
    3-5.エネルギー・産業分野の排出に関する科学的根拠に基づく目標を設定する
  4. SBTi FLAGまとめ

1.基本概念

1-1.SBTi(Science Based Targets initiative)とは

SBTi(Science Based Targets initiative, 科学に基づく目標設定イニシアティブ、以下、SBTi )は、日本企業を含む世界中の企業が気候変動に対応するために、科学的根拠に基づいた排出削減目標を設定することを支援する国際的な枠組みである。2015年に設立され、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、CDP(旧:Carbon Disclosure Project)によって共同で運営されている。
SBTiの主な目的は、科学に基づく目標(Science Based Targets, 以下、SBT)を通じて、企業の温室効果ガス排出量を削減し、地球温暖化を1.5℃以内に抑えることである。これにより、気候変動の影響を最小限に抑えることを目指している。
SBTiは、企業が自らの事業活動に関連する排出量を正確に把握し、それに応じた削減目標を設定するためのガイドラインを提供している。企業は、スコープ1(直接排出)、スコープ2(間接排出)、およびスコープ3(バリューチェーン排出)のいずれの範囲においても削減目標を設定することが求められる。目標は、最新の気候科学に基づき、具体的かつ測定可能である必要がある。企業は、排出量削減の目標をSBTiに提出し、設定した目標が科学的根拠に基づいていると認証されることで、投資家や消費者に対して信頼性のある情報を提供することが可能となる。多くの企業がSBTiの認定を受けることで、国際的な競争力を高め、持続可能な経済成長を実現することが期待されている。また、SBTiは、他の国際的な環境保護の取り組みとも連携し、企業が一貫した戦略を持って環境目標を達成できるよう支援している。SBTiに関するさらなる解説としては、『SBTi 企業ネットゼロ基準1.3と改訂版2.0への移行』を参照されたい。

1-2.SBTi FLAGとは

SBTi FLAGは、SBTiによるFLAG分野における温室効果ガス排出に特化した科学的根拠に基づく目標設定の指針であり、FLAG分野とは、森林(Forest)、土地・土地利用(Land)、農業(Agriculture)といった土地集約型の活動に関わる分野を指す。これらの分野での温室効果ガス排出削減に向け、企業や組織に対して持続可能な土地利用や農業慣行を採用し、温室効果ガス排出量の削減目標を明確に定めることを推奨している。
SBTi FLAGの誕生背景として、特に森林減少や土地利用の変化が及ぼす影響が、温室効果ガス排出に大きく寄与していることが挙げられる。FLAG分野は気候変動による影響を最も強く受ける分野とされる一方で、世界の温室効果ガス排出の22%を占めている。エネルギーシステム、産業に次いで3番目に排出量の多い分野とされ、特に森林破壊や土地利用の変化は、CO2の吸収機能を低下させ、気候変動を加速させる要因となる。世界におけるセクター別の温室効果ガス排出割合

図:世界におけるセクター別の温室効果ガス排出割合
(出典:WWFジャパン)

1-3.SBTiのSBTとFLAG目標の違い

SBTとFLAG目標は、どちらも企業が科学的根拠に基づいて温室効果ガス削減目標を設定するための目標だが、対象やアプローチに違いがある。SBTは、日本企業を含む幅広い業界に対応し、企業が科学的根拠に基づいた排出削減目標を設定する際の標準的なガイドラインである。主に製造業やサービス業など、多様な業種の温室効果ガス排出全体を対象としている。一方、FLAG目標とは、企業が森林、土地、農業に関連する温室効果ガス排出を削減するために設定する具体的な目標を指す。特に土地利用の変化(LUC=Land Use Change)や森林減少、農業活動に起因する排出や炭素吸収について、より詳細な目標設定基準とガイダンスを提供する。FLAG目標の導入により、これまで包括的なフレームワークでは捉えきれなかったセクター特有の課題にも対応できるようになった。この目標は、SBTiによって提唱される科学的根拠に基づいた目標設定の一環として位置付けられ、特に土地利用の変化や農業活動に関連する排出を包括的に捉える。

2.FLAG目標設定の対象となる企業

FLAG目標の設定は、すべての企業が必須となるものではなく、企業のスコープ1・2・3全体の排出量において、FLAG関連の排出が20%以上を占める企業、もしくは以下のFLAG指定セクターに属する企業に対して必須とされる。

  • 森林・紙製品(林業、木材、パルプ・紙、ゴム)
  • 食品生産(農業生産)
  • 食品生産(畜産由来)
  • 食品・飲料の加工
  • 食品および生活必需品小売業
  • たばこ

企業のスコープ1・2・3全体の排出量に対してFLAG関連の排出が20%未満の企業については、FLAG目標の設定は推奨とされている。

3.SBTi FLAGガイダンスの主な要件

2026年3月にV1.2が公開されたSBTi FLAGガイダンスには、企業が気候変動対策の一環として、森林、土地利用、農業に関連する温室効果ガスの排出を削減し、吸収を促進するための科学的に裏付けられた目標を設定する際の指針が示されている。2026年以降に目標を提出する企業は、この新たに公開された要件への対応が求められている。その主な要件を、以下に整理する。

3-1.土地関連の排出および除去を算定する

この要件は、企業が自らの活動がどの程度環境に影響を与えているのかを理解し、適切な対策を講じるための基盤となるといえる。森林破壊や土地転換、土地利用に関連する企業活動による排出に加えて、自然生態系の回復、森林管理の改善、林間放牧の導入、牧草地や農地における土壌炭素貯留の強化といった生物起源CO2の除去も含むことが求められる。

3-2.短期の目標を設定する

5〜10年の排出削減目標として、科学的根拠に基づくFLAG目標を設定する。

3-3.長期の目標を設定する

SBTiが提供するコーポレート・ネットゼロ基準に基づき、遅くとも2050年までに少なくとも72%の排出削減を達成する長期FLAG目標を設定することが推奨される。なお、この要件は必須ではなく推奨事項であり、現時点で対象となるのは農業分野に限られる。

3-4.AFiに整合した森林破壊ゼロ(No-deforestation)のコミットメントを設定する

森林や自然生態系、人権を保護しながら倫理的なサプライチェーンを実現するためのロードマップを提供する枠組みであるAccountability Framework Initiative(AFi)に整合したコミットメントを設定する。SBTiでは「森林破壊ゼロを宣言すること(およびターゲット年を設定すること)」が必要であるが、その宣言の内容や運用プロセスが「AFiが定める12原則に100%合致していること」までは、現時点では必須の条件とはなっていない。しかし、実務上はSBTiの基準がAFiをベースに構成されているため、「AFiを参照せずに、妥当性のある森林破壊ゼロの定義や検証方法をゼロから構築するのは困難」という側面がある。
【AFiが定める12原則】
1.森林と自然生態系の保全
2.人権の尊重
3.コミットメントの明確化
4.効果的な実施を推進する企業の体制
5.サプライチェーンの評価とトレーサビリティ
6.サプライチェーンの適合管理
7.土地利用計画
8.土地管理と長期的保護
9.是正措置と環境回復
10.ランドスケープおよびセクターの持続可能性に向けた協働
11.モニタリングと検証
12.報告、開示および主張

3-5.エネルギー・産業分野の排出に関する科学的根拠に基づく目標を設定する

FLAG目標に加えて、エネルギー・産業分野におけるスコープ1・2・3すべての排出を対象とする科学的根拠に基づく目標を設定する。

4.SBTi FLAGまとめ

本稿では、SBTiとその一環であるSBTi FLAGの基本概念から、FLAG目標設定の対象となる企業、そしてSBTi FLAGガイダンスの主な要件に至るまで解説してきた。SBTi FLAGは、特に土地利用や森林管理に関連する企業にとって重要な枠組みであり、持続可能な発展と温室効果ガスの削減を同時に達成するための指針を提供している。FLAG目標設定においてSBTiが提供しているガイダンスは、企業がどのように土地関連の排出を管理し、持続可能な方法で事業を展開するかを詳細に示している。今後、より多くの企業がこの指針を取り入れ、積極的にコミットメントを果たすことが期待されている。

【参考資料】
Forests, Land and Agriculture – Science Based Targets Initiative|SBTi
SBTi FLAG Guidance V1.2|SBTi
SBTi FLAG Guidance in Brief|SBTi
Core Principles|Accountability Framework
Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)とは|WWFジャパン
SBTi FLAGで求められる森林破壊ゼロの確認方法とは?|WWFジャパン