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TNFD(ベータ版v0.4)の概要と動向 (2/3)

前稿(TNFDの概要と動向 (1/3))では、TNFD提言に企業が対応する意義やその最新動向について解説した。
本稿では、TNFDが企業に推奨する内容について、2023年3月28日に公開された最新のTNFDフレームワーク(ベータ版v0.4)に基づき、ご紹介する。

全セクター対象のTNFDの推奨内容は、「一般要求事項(General requirements)」と「開示推奨事項(Recommended Disclosures)」で構成されている。それぞれの要点は、以下Ⅰ、Ⅱのとおりである。

Ⅰ  一般要求事項

「一般要求事項」は、自然関連情報の開示の準備及び実施に際し、企業が考慮・留意すべき事項であり、ベータ版v0.4では計6項目が挙げられている(下表)。

  項目名 内容(要約)

1

マテリアリティへのアプローチ

マテリアリティ(重要課題)へどのように取り組むかを提示する。

2

開示のスコープ

開示情報が、自社の事業・バリューチェーンのどの範囲をカバーしているかを説明する。

3

自然関連課題に関する検討

自然への依存*・影響**の評価に基づいて、リスク・機会を特定する。

4

ロケーション

自然への依存・影響の評価の際、自然と接している具体的な場所を考慮する。

5

他のサステナビリティ課題との統合

他のサステナビリティ課題との関係を特定し、可能な範囲でサステナビリティ情報開示を統合する。

6

ステークホルダーエンゲージメント

情報開示全体を通じて、ステークホルダーとの協働を考慮に入れる。

*自然への依存:自社や自社バリューチェーンが自然にどのように依存しているか
**自然への影響:自社や自社バリューチェーンが自然にどのように影響を及ぼしているか


Ⅱ 開示推奨事項

「開示推奨事項」は、TNFDが企業に開示を推奨する自然関連情報であり、ベータ版v0.4では、「ガバナンス」、「戦略」、「リスクと影響の管理」、「指標と目標」の4カテゴリーの下、計13項目が挙げられている(下表)。

  ガバナンス 戦略 リスクと影響の管理 指標と目標

A

自然への依存・影響、自然関連リスク・機会に関する取締役会の監督

特定された短・中・長期の自然への依存・影響、自然関連リスク・機会

i) 直接操業に関する、自然への依存・影響、自然関連リスク・機会を特定、評価するプロセス
ii) バリューチェーンや資産等に関する、自然への依存・影響、自然関連リスク・機会を特定する方法

戦略とリスクマネジメントのプロセスに沿って重要な自然関連リスク・機会を評価・管理するために使用する指標

B

自然への依存・影響、自然関連リスク・機会を評価・管理する上での経営層の役割

自然関連リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす、または及ぼし得る影響

自然への依存・影響、自然関連リスク・機会を管理するプロセスとアクション

組織が自然への依存・影響を評価・管理するために使用する指標

C

 

様々なシナリオを考慮に入れた、自然関連リスク・機会に対する戦略のレジリエンス

自然関連リスクを特定・評価・管理するプロセスが、組織全体のリスクマネジメントにどのように統合されているか

自然への依存・影響、自然関連リスク・機会を管理するための定量的目標・定性的目標、及び目標の進捗状況 

D

 

優先エリア*内に存在する、直接操業の/上流の/下流の/資金提供を受けている、活動・資産の場所

自然への依存・影響、自然関連リスク・機会の評価と対応において、ステークホルダーとどのようにエンゲージしているか

 

*優先エリア:優先度の高いエリア(生物多様性の重要性、健全性、水ストレス、及び自社・自社バリューチェーンの依存・影響の観点から、各企業が特定する。)

各カテゴリーの開示推奨事項の概要は、次のとおりである。

-「ガバナンス」では、自然関連課題に対する取締役会の監督や経営層のマネジメントについての情報開示を推奨している。
-「戦略」では、主に、自社の自然への依存・影響、自然関連リスク・機会の内容や影響、及びそれらへの対応戦略についての情報開示が推奨されている。
-「リスクと影響の管理」では、自然関連の依存・影響、リスク・機会をどのようなプロセスで特定・評価・管理し、どのようなアクションで対応しているかを説明することを推奨している。
-「指標と目標」では、自然関連の依存関係・影響、リスク・機会を評価・管理するうえで使用している指標や目標についての情報開示が推奨されている。

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以上が、TNFDフレームワーク(ベータ版v0.4)における、企業に対する「一般要求事項」及び「開示推奨事項」である。
本年9月公表予定の確定版において、これらに細かい修正が施される可能性はあるものの、概ねベータ版v0.4と近い内容となる可能性が高い。

企業が今後の開示に備えるために対応すべき課題は多い。そこで、次稿では、TNFDが提案している「LEAPアプローチ」という手法に基づき、自然への依存・影響、自然関連リスク・機会を特定・評価・対応(管理)・情報開示する手順についてご紹介する。

 

【参考資料】
「The TNFD Nature-related Risk and Opportunity Management and Disclosure Framework Final Draft – Beta v0.4」(2023年3月、TNFD)
「生物多様性民間参画ガイドライン(第3版)―ネイチャーポジティブ経営に向けてー」(2023年4月、環境省)

【関連記事】
TNFDの概要と動向 (1/3)

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