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CDP2024変更点〈Part2〉の主なポイント【後編】

前回の記事「CDP2024変更点〈Part2〉の主なポイント【前編】」では、統合されたモジュールのうち、前半のモジュール1~6における変更点について説明した。本稿では、続きとなるモジュール7~12における具体的な変更点と、スコアリングフレームワークの主な変更点について解説していく。

〈目次〉

  1. 環境テーマ固有のモジュールの主な変更点
    -モジュール7:環境パフォーマンス-気候変動
    -モジュール8:環境パフォーマンス-フォレスト(森林)
    -モジュール9:環境パフォーマンス-水セキュリティ
    -モジュール10:環境パフォーマンス-プラスチック
    -モジュール11:環境パフォーマンス-生物多様性
    -モジュール12:環境パフォーマンス-金融サービス(FS)セクター
  2. スコアリングフレームワークの主な変更点

 

1.環境テーマ固有のモジュールの主な変更点

モジュール7:環境パフォーマンス ― 気候変動

変更点の概要

• 新たにScope1Scope2の排出量の内訳を回答
• 排出量、目標、炭素クレジットに関する質問が改訂
• 「Beyond Value Chain Mitigation」プロジェクトに合わせた改訂を実施し、SBTiとの連携を強化

モジュール8:環境パフォーマンス ― フォレスト(森林)

• フォレスト全体にわたり、アカウンタビリティ フレームワーク (AFi) の最新の基本原則と、定義の整合性を強化

コモディティの質問を統合

• 各コモディティごとの質問から、各コモディティを1つにまとめた質問項目へと変更
• 個別のコモディティスコアでなく、単⼀のフォレストスコアに変更 

コモディティ量

• 質問書全体でどのコモディティ量に関するものかを明確化、透明化し、包括的で⽐較可能な開示データを作成
• イントロダクションモジュールで、⽣産/調達された「コモディティの総量」をメートルトンで開示
• 以降の質問では、企業の開⽰に含まれる量(「開⽰量」)に応じた数量の内訳と、「⽣産量」および/または「供給量」に関連する割合を開示
• 数量の⼀部を除外することが可能

組み込み(生産・製造に使用された)⼤⾖
*畜産物(食肉、養殖魚、乳製品、卵、その他の畜産物を原材料とするものなど)を生産する際の飼料に使用した、間接的に調達された大豆のこと

• 透明性の向上、企業の⾏動と進捗状況を詳しく開示できるようにするために、組み込み大豆に関する新たな質問を導入
• ⼤⾖に関する情報開⽰の⼀部として開⽰され、組み込み大豆に関する量とその算出⽅法、原産地の可視性、森林破壊と転換のない状態について回答
• 畜産物を調達している企業は、バリューチェーンに⼤⾖を組み込んでいる可能性が⾼く、関連する情報を⼤⾖の「開⽰量」に含めて開⽰が必要

森林減少や転換を⾏わない⽬標

• 森林破壊や他の⾃然⽣態系の転換を⾏わないという⽬標に関するデータ項目はこれまで質問F4.6bにあったが、今後は⽬標に関する質問で開示
• 企業が開⽰コモディティについて森林減少/転換なしを達成するための⽬標を設定しているか否か、また、関連する⽬標日、基準日(カットオフ日)、⽬標範囲、使用した定義を開示

森林減少と転換なし(DCF)のコモディティ量

 

• 直接事業と上流のバリューチェーンにおいて、森林減少を伴わない(DF)または森林減少と転換を伴わない(DCF)と評価・決定されたコモディティ量の割合を開示
• DF/DCFを決める際、どの⽅法が使⽤されたか、またその詳細も開示
• 次のいずれかの⽅法を使⽤し評価される
- 完全なDF/DCF保証を提供するスキームによる認証
- ⽣産単位レベルの監視
- 調達地域レベルの監視

トレーサビリティ

 

• 開示するデータ項目数を減らし、他のイニチアチブとの整合を促進
• 調達量のトレーサビリティポイントの内訳(国、調達地域、⽣産単位まで追跡)と、不明な起源からの調達量の割合を開示

管轄区域およびランドスケープに関する取り組み

 

• 他のイニシアチブとの整合性を考慮し、管轄区域およびランドスケープのイニシアチブに関する質問が変更に
• ISEAL(国際社会環境認定表示連合)の新たなガイダンスに基づき、投資、⾏動、結果に関して申し立てがあったかどうか、その申し立ての詳細も開示

モジュール9:環境パフォーマンス ― 水セキュリティ

• ⽔セキュリティ固有のデータ項目にはほぼ変更なし
• 除外対象、⽔ストレス地域、農産物に関する質問が改訂
• 施設レベルの情報と⽔関連の⽬標に関する質問の更新

施設レベルの情報

• これまで施設レベルの情報(W4.1b および W5.1)は、事業に重⼤な影響を与える可能性のある⽔リスクのある施設に焦点が当てられていたが、今回から、⽔関連の重大な依存、影響、リスク、機会が特定された施設に関する情報を開示
• ⽔関連の重大な依存、影響、リスク、機会が特定された施設の総数を開示
• 施設を特定した企業は、施設レベルの⽔会計質問において、その施設を直接操業または上流のバリューチェーンと区別し、施設に取水や排水があるかどうかを開示

⽔関連の目標

• フォレスト気候変動に合わせて、水関連⽬標でも同等の開示レベルに変更
• 目標と地球環境関連条約との整合性、⽬標達成するための計画、⽬標の達成または維持に最も貢献した⾏動を評価したか否かを開示

モジュール10:環境パフォーマンス ― プラスチック

• 採点対象外

変更点の概要

• 以前は水セキュリティを開示する企業のみが対象であったが、今回は、中⼩企業と公的機関を除くすべての回答企業に、プラスチックに関する基本的な質問が提示
• プラスチックの影響が大きい業種では、より幅広い質問が提示される可能性
• プラスチックの利用に関する特定は、生産/商業化から、廃棄物や水の管理活動、プラスチック関連の金融商品/サービスの提供へと拡大。これにより、将来的にプラスチック関連の指標を拡大し、活動のバリューチェーン全体を捉えることが可能

モジュール11:環境パフォーマンス ― 生物多様性

• 採点対象外

変更点の概要

• 以前は気候変動への回答企業のみであったが、今回は、中⼩企業および公的機関を除くすべての回答企業に、基本的な⽣物多様性データ項目が提示

モジュール12:環境パフォーマンス ― 金融(FS)サービスセクター

変更点の概要

• 持続可能な金融分類法に沿った資金調達と保険に関する新たな質問が追加
• FS企業のポートフォリオ活動(財務活動)に関連する質問のほとんどが、気候変動フォレスト水セキュリティ全体にわたって統合
• このためテーマ横断のモジュール1~5もこのセクターに関連し、FSセクター固有のデータ項目を開示
• 該当する場合には、生物多様性とプラスチックの質問も出題(いずれも採点対象外)
• グラスゴー・ネット・ゼロのための金融アライアンス(GFANZ)の下でのコミットメントの進捗を実証するための適切な報告メカニズムを金融機関が有することを確実にするために、質問を更新
• PCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)スタンダードとの整合化強化

 

2.スコアリングフレームワークの主な変更点

2024年のスコアリングのフレームワークは、気候変動、フォレスト、水セキュリティは個別のモジュールでスコア付けされる。気候変動の質問に関しては、大きな変更は加えられないものの、必須基準が拡大される。また、プラスチックおよび生物多様性の質問に関しては、独立したモジュールとして質問が用意されるが、より多くの企業がこれらの環境問題について開示できるようにするべく、採点対象外となる。

大きな変更点が加えられるモジュールとその概要は以下のとおりとなっている。

【フォレスト】
2024年のフォレストのスコアについては、昨年までのようにコモディティごとにスコア付けされるのではなく、フォレスト共通の質問群とコモディティ別の質問群の2つの質問群への回答を考慮し、フォレストとして単一のスコアが導入される。調達または生産する全ての商品(木材製品、パーム油、大豆、畜牛製品)についての開示が推奨される。さらに、これら4つのコモディティの使用および依存に関する情報が求められるが、関連する場合において全て開示しないことを選択すると、最終的なフォレストスコアに影響を与える可能性がある。

金融サービスセクターについては、融資活動に対する水のコンテンツが今回から採点されることになるが、森林と水の融資活動に対するスコアは2024年は非公開となる見通しである。

気候変動
気候変動は、全ての回答企業が回答をする必要があり、気候変動モジュールでは、開示、認識、マネジメント、リーダーシップの各レベルをクリアするための必須基準が設定される。必須基準の設定は、今回は主に気候変動のみの適用だが、数年後には環境テーマ全体に拡大されるが予定されている。

気候変動モジュール内のガバナンス
ガバナンスモジュールでは、認識レベル以上の基準として、取締役会レベルの監督(取締役会が設置されていない場合は経営陣レベルの責任)が気候関連問題に関して適切なレベルの能力を保有していることが求められる。

リーダーシップレベルの基準は以下のとおりである:

・上級管理職レベルで気候関連の金銭的報酬制度の導入
・企業の公共政策協働が気候に影響を与える可能性があるか否かを理解した、透明性をもった開示
・5℃に整合した移行計画を策定(従来はAリスト要件)

気候変動モジュール内の評価プロセス
認識レベル以上の基準として、気候変動をリスク評価プロセスに組み入れ、その結果を戦略策定に活用することになる。

気候変動モジュール内の野心気候変動におけるAリスト要件およびリーダーシップレベル基準)

Aリスト要件は以下のとおりである:

  • SBTi承認、または5℃に整合した短期目標の設定
  • ・金融セクターは、ポートフォリオ目標の設定
  • スコープ1・2の排出量データ100%の検証をし、少なくともスコープ3カテゴリの1つで70%の検証
  • ・燃料消費またはエネルギー⽣成活動の詳細を開示

リーダーシップレベルの基準は以下のとおりである:

  • スコープ1・2排出量の95%以上が検証されていて、関連するスコープ3の排出量の検証が開始されていること
  • ・影響力の大きいセクターはセクター固有の指標に対するパフォーマンスを開示

※重要な評価基準の変更の詳細は、スコアリングメソドロジーを参照のこと。


【フォレストおよび水セキュリティのAリスト要件】
スコアリングメソドロジーとともに公表が予定されている(6月)。

以上のように、2024年のCDP質問書は国際的基準との整合性を求めつつ、統合モジュール、環境テーマごとのモジュールという形で問われることになる。また、Aリストの要件にも変更が見込まれている。

なお、CDPウェブサイトによると、英文の質問書は4月30日に、スコアリングメソドロジーは5月下旬に、回答書は6月上旬に発表される予定である。

(以上、CDP『Corporate Disclosure - Key changes for 2024: Part II』をブライトイノベーションにて要約・仮和訳)

【参考資料】
CDP Webサイト ”Corporate Disclosure – Key changes for 2024: PartⅡ”, March 2024


当社では今後、さらなる情報提供やウェビナー開催を予定しています。

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