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TNFD情報開示で差がつくサプライチェーンエンゲージメント対策

近年、企業に求められるサステナビリティへの取り組みは、多様で複雑さを増している。その中で、TNFD提言への対応は重要テーマとして注目されている。この取り組みの中で求められるプロセスの一つが、サプライチェーンにおける自然関連データの収集である。しかし、サプライチェーンエンゲージメントを行う上で、そのデータ収集の困難さは、多くの企業にとって大きな壁となっている。本稿では、企業がTNFD対応・サプライチェーンエンゲージメントを行う上で直面する課題や、その対策について解説する。

目次

  1. TNFD提言への対応・ネイチャーポジティブの枠組みにおける「サプライチェーンのデータ収集の壁」とは?
    1-1.
    自然環境の多様さと複雑さによるデータ収集の難航
    1-2.
    CO2算定との決定的な違い:「場所(Location)」の特定
    1-3.
    サプライヤーの疲弊と「アンケート無視」のリスク
  2. 企業が実践すべき「統合型」サプライチェーンエンゲージメント評価
    2-1.
    既存のCO2データ収集プロセスへの「相乗り」
    2-2.
    優先順位付け(ヒートマップ)による対象の絞り込み
  3. TNFD情報開示のためのデータ収集に行き詰まったら
  4. まとめ

1.TNFD提言への対応・ネイチャーポジティブの枠組みにおける「サプライチェーンのデータ収集の壁」とは?

TNFDやネイチャーポジティブにおける枠組みでは、企業が自然環境に与える影響を正確に評価し、報告するために、サプライチェーン全体の自然関連データを収集する必要がある。自然関連の情報開示において、企業の実務担当者を最も悩ませるのが、サプライチェーン全体(上流・下流)を対象とした自然関連のデータ収集である。GHGのスコープ3算定ですら苦戦する中、なぜ自然関連の対応はさらに難易度が高いのだろうか。

1-1.自然環境の多様さと複雑さによるデータ収集の難航

自然関連におけるデータ収集は、その多様さと複雑さからしばしば困難を極める。生態系は地域ごとに異なる特性を持ち、気候、地形、生物多様性といった要素が絡み合うため、単一の指標やデータセットで把握することは非常に難しいのが現実である。例えば、森林保全のために必要なデータを収集する際、一口に「森林」と言ってもその構成は多岐にわたり、樹種の多様性や土壌の質、降水量や温度変化といった要因が影響する。また、これらのデータは時間とともに変化し、動的な要素を含んでいるため、定期的かつ継続的なモニタリングが求められる。さらに、異なる地域のサプライヤーから一貫したデータを収集する際には、地域特有の環境規制や文化的要因も考慮する必要がある。これにより、データ収集プロセスはさらに複雑化し、サプライチェーン全体での環境影響を正確に評価することが困難になる。

1-2.CO2算定との決定的な違い:正確な「場所(Location)」の特定

サプライチェーンにおける環境負荷の評価において、CO2算定とTNFD対応の取り組みの間の重要な違いとして特に際立つのが、場所の特定に関するアプローチである。GHGのスコープ3算定では、「どこで排出されてもCO2はCO2」として、調達金額ベースの排出原単位などで概算することが可能である。しかし、水資源や生物多様性など自然への影響は「どこで(どの流域・どの生態系で)事業活動が行われているか」に完全に依存する。これは、前項で述べたように、地域ごとに生態系や環境条件が大きく異なるためであり、場所ごとの特性を考慮した上での影響評価が求められるためである。つまり、一次サプライヤーだけでなく、その先の二次・三次サプライヤーの「工場や生産地の正確な位置情報」まで遡らなければ、正確なリスク評価ができない。
自然関連への影響やリスクをもたらす場所を特定するためのプロセスを含むフレームワークである、TNFDのLEAPアプローチについての解説は、『
TNFD「LEAPアプローチ」とは?4つのステップと具体例を解説』を参照されたい。

1-3.サプライヤーの疲弊と「アンケート無視」のリスク

今日の企業は、サステナビリティを求める動きの中で、サプライチェーン全体から詳細なデータを収集することが求められている。しかし、その過程でサプライヤーが直面する負担は無視できない。一例としてサプライヤーに対して「CO2排出量のアンケート」とは別に、生物多様性に関する膨大なアンケートを新たに送ることで、サプライヤーの負担がかかる。ただでさえ人手不足に悩むサプライヤーにとって、複雑な自然資本のデータ要求は負担が大きいと考えられる。また、サプライヤーにしっかりとアンケートの重要性が伝える必要もあり、それができないと結果として、回答率の低下、形骸化したデータしか集まらないという事態を引き起こす。

2.企業が実践すべき「統合型」サプライチェーンエンゲージメント評価

この壁を突破するためには、TNFD対応・ネイチャーポジティブ対応として動くのではなく、既存のサステナビリティ推進体制と「統合」するアプローチが有効である。

2-1.既存のCO2データ収集プロセスへの「相乗り」

サプライチェーンエンゲージメントの鉄則は、負担を最小化することである。新たにアンケートを増やすのではなく、現在実施しているGHG(スコープ3)のヒアリング項目の中に、TNFD要件の必須項目(水使用量や廃棄物など)を組み込み、一度のコミュニケーションで統合的にデータを収集する体制(プラットフォーム)を構築することで負荷を減らすことができる。

2-2.優先順位付け(ヒートマップ)による対象の絞り込み

数千社に及ぶ全サプライヤーの正確な位置情報を把握するのは現実的ではない。まずはENCOREなどのグローバルツールや、自社の調達データ(品目・金額・国・重要性)を考慮して優先順位付けを実施する。これにより、「自然への依存度・影響度が極めて高い、特定の国・品目に関わるトップ数十社」を特定し、そこから優先的に一次データの収集と対話を開始するスモールスタートが有効である。

3.TNFD情報開示のためのデータ収集に行き詰まったら

TNFD提言への対応は、情報収集のフェーズから実務への落とし込みのフェーズへと移行している。ツールを導入したがデータが集まらない、サプライヤーとの協働体制が作れないといった課題は、社内リソースだけで解決するのは困難である。そのような場合、コンサルタント等、第三者の視点を取り入れ、客観的な評価基準を設定し、データ収集の効率を向上させることも有用である。また、サプライチェーンエンゲージメントにおいては、サプライヤーとの信頼関係の構築も重要である。コミュニケーションを密にし、サプライヤーの意見やニーズを積極的に取り入れることで、協力体制の強化が期待できる。最後に、段階的なアプローチを採用することも重要となる。大規模な変革を一度に実施するのではなく、小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体のモチベーションを維持しつつ、確実にプロセスを進めることができる。

4.まとめ

本稿では、TNFD提言への対応のために直面するデータ収集の課題や、サプライヤーとの関係性におけるリスク、そしてそれらの対応策について取り上げた。ネイチャーポジティブへの移行が世界的な潮流となっている中、そこには自然関連の情報開示に向けたデータ収集の難しさや、サプライヤーとのコミュニケーションの課題など、多くの壁が立ちはだかっている。企業がこれらの課題を乗り越えるためには、戦略的かつ協調的なアプローチが不可欠となる。しかし、これらのプロセスを通じて得られるデータは、企業の戦略的意思決定を支える貴重な資産となり、持続可能な未来を築くための確かな道しるべとなる。企業は、これまでの取り組みを一過性のものにせず、真に持続可能なビジネスモデルを追求することが求められている。

【参考資料】
自然関連課題の特定と評価に関するガイダンス:LEAPアプローチ|TNFD

 

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株式会社ブライトイノベーションでは、カーボンニュートラルのスコープ3算定で培った高度なサプライチェーンマネジメントの知見を活かし、TNFD要件に対応した自然資本データの収集、リスク評価(LEAPアプローチ)、そしてサプライヤーエンゲージメントの実行(BPO)までをワンストップで伴走支援します。

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