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米国プラスチック関連法案審議入り

2021年3月25日、米国議会に”The Break Free From Plastic Pollution Act”(筆者意訳:”プラスチック汚染脱却法”)の法案が2020年に続き再提出され、環境団体と化学業界の意見が激しくぶつかる議論を呼んでいる。

■法案概要

① 拡大生産者責任の適用

リサイクル性や素材に関わらず、法が指定する範囲に含まれる容器包装製品の生産者は、通常行政負担となっている製品廃棄物の収集と処理を自身で計画・実行し、費用負担も行わなくてはならない。衛生保護局(EPA)の認可の下、同じような製品を生産する事業者は生産者責任団体(PRO)を設立し、共同で製品廃棄物の責任を取り清掃プラグラムを実施するよう推奨されている。

生産者は米国内の堆肥およびリサイクル施設に投資を行い、廃棄物管理と清掃の費用負担のみならず、指定される製品に関する啓発活動も行うよう求められている。

② 全国レベルでの飲料容器へのデポジット制の導入

廃容器返却時に返金される10セント/個のデポジットを素材に関わらず導入する。未返金で溜まったデポジットは飲料メーカーに渡され、飲料メーカーによる回収およびリサイクル設備への投資の補足となる。

③ 特定製品の段階的廃止

2022年1月以降、リサイクルができず代替製品の目途がついている使い捨てプラスチック製品の一部が段階的に廃止される。対象は軽量のプラスチック製買い物袋、発泡スチロール製食品・飲料容器、プラスチック製マドラーやカトラリー。ストローだけが客からの要求がある場合に提供できる。

④ 買い物袋有料化

買い物袋が有料化される。再利用可能な買い物袋の利用を推奨するプログラムを実施する小売業者は買い物袋有料化による収入を自らのものにすることができ、実施しない小売業者の収入は、再利用可能な買い物袋の普及や清掃およびリサイクル施設への投資に回される。

⑤ 再生材利用の義務化

プラスチック製飲料容器には、時間と共に累進する割合で再生材利用が求められる。基準局の技術的実現可能性検証の後に、追加でEPAが他の製品へのPCR材利用義務を課す。

⑥ 標準ラベルの策定

適切な分別廃棄のために、リサイクルや堆肥化に関する標準ラベルを製品や容器用にEPAが開発する。

⑦ 開発途上国へのプラスチック廃棄物の輸出禁止

不十分な廃棄物管理能力のため海洋プラスチックごみ問題の主な原因となっている、多くのOECD未加盟国へのプラスチック廃棄物やスクラップの輸出禁止。

⑧ 新規プラスチック製造施設建設の一次停止

新たな行政許可がプラスチックによる環境汚染を拡大する前に、新規および既存拡張のプラスチック製造施設による大気・水・気候・住民への累積的影響を調べる時間を環境局に与える。

■化学業界の反論

米国化学工業協会のプラスチック部長Joshua Baca氏は、消費財ブランドや清涼飲料メーカーは再生素材の積極利用に前向きだが、その実現にはケミカルリサイクル技術の社会実装が必要なため、新規プラスチック製造施設の一時停止はケミカルリサイクルへの業界投資を鈍化させると反論している。

【参考資料】

‘It’s a pipe dream’: Green groups blast plastic makers’ recycling push

Chemical recycling now at the center of national plastics debate

H.R.5845 – Break Free From Plastic Pollution Act of 2020