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CDP2024変更点〈Part2〉の主なポイント【前編】

〈目次〉

  1. CDP2024変更点〈Part2〉の主な内容
  2. 統合されたモジュールの主な変更点
    -モジュール1:イントロダクション
    -モジュール2:依存・影響・リスク・機会の特定、評価、管理
    -モジュール3:リスクと機会の開示
    -モジュール4:ガバナンス
    -モジュール5:事業戦略
    -モジュール6:環境パフォーマンス-統合アプローチ

 

1.CDP2024変更点〈Part2〉の主な内容

CDPは4月30日の質問書の公開に先立ち、3月下旬に、2024年版の各統合モジュール、各環境テーマモジュール、金融サービス業およびスコアリングフレームワークにおけるより詳細な変更点(Part II)を発表した。主な内容は以下のとおりとなっている。

  • ・これまで各環境テーマで問われていた類似の質問が統合され、より効率的に構成される
  • 全モジュールを通じて、TCFDISSBIFRS S2)、SBTイニシアチブ等の国際的な基準との整合化が強く打ち出されている
  • ・「依存・影響・リスク・機会の特定、評価、管理」が重視され、依存と影響の評価プロセスの詳細も回答することになる
  • 気候変動の質問は、全回答者が回答することになっているが、気候変動以外の環境問題を考慮しているかについても重視される
  • ・フォレストに関して、コモディティごとのスコアリングが、フォレスト全体としてスコアリングされるようになることに伴い、質問も大幅に変更が加えられる
  • ・金融サービス業の回答者は、モジュール12の金融サービス業固有の質問のみならず、他のモジュールの質問にも回答を求められ
  • ・Aレベル要件の変更が見込まれている

前回の記事「CDP2024変更点〈Part1〉の主なポイント」では、全体をとおした変更点や今年のCDPの概観について説明した。本稿では、統合されたモジュールのうち、モジュール1~6における具体的な変更点について解説していく。
なお、各環境テーマおよび金融機関のモジュール(モジュール7~12)における変更点については、次回の【後編】にて解説予定である。

 

2.統合されたモジュールの主な変更点

モジュール1:イントロダクション

報告バウンダリ

• 財務諸表と同じ報告バウンダリを使用しているかどうかを⽰すことが可能
• 環境パフォーマンスデータ (GHG排出量など) を統合するために使用される統合方法の詳細については、モジュール6で開示

バリューチェーンマッピング

• 環境への依存、影響、リスク、機会を効果的に特定、評価、管理するための、バリューチェーン内のさまざまなステークホルダーおよびその相互関係についての理解を明示
• 従来は、バリューチェーンマッピングの情報はフォレストの質問書でのみ求められていたが、今回からは全ての環境テーマで回答

モジュール2:依存・影響・リスク・機会の特定、評価、管理

•          「依存・影響・リスク・機会の特定、評価、管理」は、主要モジュールの1つ
•          複数の新たな質問
•          変更は主にTNFD推奨事項との整合性の強化を反映

時間軸

•   従来、気候変動の質問書においては時間軸に関する開示が求められていたが、⽔セキュリティフォレスト⽣物多様性の各環境テーマでも新たに時間軸を開示
• 報告企業は依存、影響、リスク、機会の特定、評価、管理に関連して、短期、中期、⻑期の時間軸を定義するだけでなく、時間軸と事業戦略や財務計画との関連性を開示する必要

依存および/または影響の特定、評価、管理のプロセス

• 依存と影響を特定、評価、管理するプロセスがあるかどうか、またプロセスが導入されていない場合はその理由を説明

依存、影響、リスク、機会の特定、評価、管理のプロセスの詳細

• リスクと機会に関する評価プロセスに関する回答に加え、環境への依存と影響に関する評価プロセスの詳細も回答
• 報告企業は、すべての環境への依存、影響、リスク、機会を統括したプロセス、または個別のプロセスを開示することが可能
• 気候変動に関しては、評価に使用されるツールなど、質問がより具体的に。また、評価で考慮されるリスクの種類はドロップダウン選択肢から選択でき、記述による説明は不要
• ⽔セキュリティに関して、評価プロセスの各段階の根拠の

環境への依存、影響、リスク、機会の相互関係の評価(新規)

 

• すべての環境問題を総合的に検討し、相乗効果、関連性を評価して企業がどの段階にあるかを判断

優先地域(フォレスト⽔セキュリティ⽣物多様性で回答)
• 影響を受けやすい地域(生物多様性にとって重要な地域や、利用可能な水が限られている地域など)に基づき、優先的な地域を特定したかどうか、また、企業が重大な依存や影響を持つ場所を特定したかどうかを回答
• バリューチェーンのどの段階で優先順位の⾼い地域が特定されているかを回答

モジュール3:リスクと機会の開示

• IFRS S2、ESRS、およびTNFDに合わせた内容にするために変更
• 報告年度に企業に影響を及ぼした主要なリスクの詳細に関する質問の一部は、本モジュールに移動

リスク開示

• リスクが企業に影響を及ぼすと予想される短期・中期・長期など各時間軸において、財務的影響を定量的または定性的に説明
• 物理・移行リスクに対して脆弱な関連財務指標の金額と比率を開示することで、リスクの影響に対する、資産および事業活動の脆弱性を定量化
• リスクにどのように対応しているかを示すべく、報告年にリスクに対して投入した設備投資額を開示

機会開示

• 機会に関する質問の変更点は、上記リスクの内容とほぼ同様
• 機会が企業に影響を与えると予想される短期・中期・長期など各時間軸において、財務的影響を定量的または定性的に説明
• 機会との整合性を定量化するため、関連する財務指標の金額と比率を開示

モジュール4:ガバナンス

• 環境への依存、影響、リスク、機会のコーポレート・ガバナンスに関する情報は、IFRS S2ESRS、およびTNFDの要件に沿って強化
• 外部との関与の効果的なガバナンスの重要性を強調するべく、外部との協働と公共政策への関与に関する質問は、本モジュールに集約

環境問題に対するガバナンス構造、監督、適正

• 取締役会を設置している企業は、環境問題に関して最終的な責任を有する取締役会の役職を回答し、当該責任が、取締役会に適用される方針に文書化されているか否かを回答
• また、取締役会が全体として環境問題に対する能力を有しているかどうかを回答。有している場合は、取締役会レベルの環境問題に対する能力がどのように維持されているかの詳細も回
• 取締役会の有無にかかわらず、引き続き環境問題に対する経営責任を問われるが、取締役会のない企業も環境問題に関する経営レベルの能⼒があるかどうか回答

環境問題に対するインセンティブ

• 環境問題に対する金銭的インセンティブの詳細を回答し、環境問題の管理に関する金銭的インセンティブの総額に占めるその割合も開⽰
• 非金銭的インセンティブに関する質問は削除

環境方針

• 環境方針の有無、方針の対象範囲、内容、公開状況などの詳細を回答
• 本テーマは従来、フォレスト水セキュリティの質問書だけにあったが、気候変動にも拡⼤
• 金融サービスの回答者は、方針の枠組みに、顧客/投資先に対する環境要件や、生物多様性、気候変動、森林、水に関連した除外事項が含まれているか否か、また、これらの方針を反映し、実施するために融資契約で使用される特約の詳細も回答
• 金融サービスの回答者は、気候変動関連の基準に加え、森林や水関連の基準を保有資産に組み込んだ年金プランを提供しているかどうかも開示

公共政策への関与

• 気候や水関連の政策、法律、規制に加えて、森林関連の政策、法律、規制に関する政策立案者、業界団体、その他の組織や個⼈との関与の詳細の開示が可能

モジュール5:事業戦略

• 今回から、1.5℃目標に沿った気候移行計画の開示、レジリエンスを評価するためのシナリオ分析の使用、炭素と水の価格設定、バリューチェーンエンゲージメント、低炭素研究開発投資、および設備投資に関する詳細情報を回答

シナリオ分析

• シナリオ分析の使用、選択したシナリオのパラメータと分析結果の詳細を回答
• 以前はフォレストにはなかったが、今回から全ての環境テーマに拡大
• 今回から、評価の頻度考慮したリスクの種類と要因対象期間シナリオ選定の理由を説明
• 水セキュリティを回答する企業は、定性的か定量的かなど、シナリオパラメータをより体系的な方法で指定できるようになり、これまで要求されていなかった対象範囲を開示
• 全ての回答企業は、シナリオ分析によって影響をうけたビジネスプロセスの選択、結果の要約、他の環境問題への影響を説明。これまでの記述式に比べ、より体系的

移行計画

• 1.5℃の世界に整合していない移行計画も開示が可能に
• 化石燃料の拡大に関連する活動を停止することを約束したか否か、移行計画における主要な仮定と依存関係、および移行計画に対する進捗状況を説明
• 気候変動以外の環境問題について考慮しているかどうかも開示

戦略と財務計画に対するリスクと機会の影響

• 財務計画や戦略計画、移行計画などの意思決定において、環境リスクと機会を考慮することによって、企業が、環境問題を単に運用レベルだけでなく、ビジネスの戦略レベルで検討し、行動したか否かを開示

CAPEX/OPEXの整合

• EU Taxonomy for Sustainable Activities(EUの持続可能な活動に関する分類法)を用いて、気候変動への対応とその支出・収益の整合性を開示する場合、2023年の改正に伴い、対象となる新たな活動に関する適格性情報を開示することが可能

環境外部性への価格設定

• 質問は主に炭素価格と水価格の設定に関するものに変更
• 名称が「Pricing Environmental Externalities(環境外部性の価格設定)」へと変更となり、その他の環境外部性に関する内部価格設定の開示も可能
• 内部炭素価格に関しては、価格を算定する際に使用した方法と主な前提条件、また、価格が目的を達成しているかどうかを監視・評価しているか、などの詳細を回答
• 内部水価格に関しては、以前は記述式だったが、今回から炭素価格と同じ方式で開示。価格の種類、目的、考慮される要素、適用範囲、空間的・時間的変化、ビジネス上の意思決定の際にどのように適用されるか、および価格自体も回答

バリューチェーンエンゲージント

• エンゲージメントの影響を評価するために、成功の定量的な尺度を確立する必要性
• サプライヤーの依存/影響を評価、分類するためのアプローチと、サプライヤーによる環境要件の不遵守に対応するための方針を開示。取引停止や除外を検討する前に、遵守していないサプライヤーを可能な限り維持し、遵守を促進する方策を回答
• 森林伐採やその他の自然生態系の転換が起こりやすい地域から商品を調達する企業は、サプライヤーと積極的に協力し、事業活動全体にわたって森林破壊をしないというコンプライアンスの達成を開示

サプライヤーの評価と優先順位付け

• 企業が環境への依存/影響に応じてサプライヤーを評価しているか、重大な依存/影響のあるサプライヤーを特定したかを開示
• 特定した場合、このプロセスの一環として使用される評価基準や分類の閾値などの追加情報を開示
• 重大な依存/影響のあるサプライヤーのうち、特定の環境要求事項の遵守を義務付けられているサプライヤーの割合と、環境活動を推進するために直接関与しているサプライヤーの割合を開示
• 企業が特定のサプライヤーを優先して環境問題に取り組んでいるかどうかを開示。優先順位をつけている場合、その基準の詳細も開示

環境要件
• サプライヤーの環境要件への不遵守に対する方針の有無を回答
• また、特定された不適格サプライヤーの割合、そのサプライヤーへのエンゲージメントとしてどのような手順をとったかを含め、サプライヤーへの対応に関する詳細を開示

株主投票(金融セクターのみ)
• 投資企業は、投資先へのエンゲージメント活動と並行して、環境問題に関する株主議決権をどのように行使しているかを開示
• 議決権⾏使やエンゲージメント活動の結果が投資意思決定プロセスにどのように影響するかを説明

モジュール6:環境パフォーマンス ー 統合アプローチ

環境パフォーマンス統合アプローチ

• これまで、モジュール1「イントロダクション」で環境パフォーマンスデータの報告に使用される統合アプローチを開示していたが、今回から、環境問題ごとの「環境パフォーマンス」モジュールの直前に回答
• IFRS S2に沿って、統合アプローチの選択の根拠を回答

その他の変更点:

サプライチェーンの質問

• 顧客(CDPサプライチェーンメンバー)を通じて要請された企業のみを対象とした質問は、質問書全体に包含

その他の変更点:

鉱山を運営する組織に対する生物多様性の質問

• 以前は、フォレスト質問書と並⾏して、生物多様性に焦点を当てた金属と鉱⼭、石炭に関する質問書があったが、今回から、鉱⼭を運営する組織に対する特定の質問およびデータ項目として、完全版の質問書全体に組み込まれる予定

 

(以上、CDP『Corporate Disclosure - Key changes for 2024: Part II』をブライトイノベーションにて要約・仮和訳)

CDP2024変更点〈Part2〉の主なポイント【後編】

【参考資料】
CDP Webサイト ”Corporate Disclosure – Key changes for 2024: PartⅡ”, March 2024


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