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CDP2024スコアリング基準の解説

5月22日、CDP2024のScoring methodologies(以下「スコアリング基準」)が公表された。
本稿では、スコアリングの全体像、統合モジュールのテーマ横断型の質問における採点の仕組み、および昨年との主な違いについて、解説する。
CDP2024質問書本体の前年からの主な変更点については、「CDP2024変更点<Part1>の主なポイント」、「CDP2024変更点<Part2>の主なポイント【前編】」、「CDP2024変更点<Part2>の主なポイント【後編】」をご参照ください。)

〈目次〉

  1. CDP2024スコアリング基準の全体像
  2. テーマ横断型質問への回答はどのように採点されるか
    2-1.回答欄がテーマ別に分かれるパターン
    2-2.回答欄がテーマ別に分かれないパターン
  3. CDP2023のスコアリング基準との主な違い
  4. まとめ

 

1. CDP2024スコアリング基準の全体像

本年から質問書は統合されたが、スコアリング(=採点)は昨年と変わらず、気候変動、フォレスト、水セキュリティの各環境テーマに対して別々に行われる。昨年までと同様に、各設問にはDisclosureレベル(以下「Dレベル」)、Awarenessレベル(以下「Aレベル」)、Managementレベル(以下「Mレベル」)、Leadershipレベル(以下「Lレベル」)の4つのレベルの配点が設定されている(注1)
採点時は、各環境テーマに対する各レベルの得点率が集計される。例えば、気候変動のDレベルで配点の合計値が120点のところ、合計で60点獲得した企業の気候変動のDレベルの得点率は50%となる(注2)。その後、4つのレベルの得点率に応じて、図表1に基づき、Score band(=総合スコア)が決定される。

注1:採点対象外の設問や、一部のレベルについてのみ配点が設定されている設問も存在する。
注2:Dレベル・Aレベルは集計結果がそのまま得点率となるが、Mレベル・Lレベルでは集計後に質問カテゴリごとに設定されているウェイトを加味して得点率が決定する。

総合スコアの決定方法図表1:総合スコアの決定方法
(注:2024年6月14日現在。今後、各レベルの閾値が調整・更新される可能性あり。)
(出所:CDP Full Corporate Scoring Introduction 2024 ver.1.0)

総合スコアの決定の仕組みはやや複雑であるため、ここでは架空の企業Xを例に説明したい。仮に、水セキュリティのテーマにおいて、企業Xの得点率がDレベル 90%、Aレベル 85%、Mレベル 50%、Lレベル 40%であった場合、総合スコアの決まり方は次のようになる。判定は、下位のレベルから順に、すなわち、Dレベル、Aレベル、Mレベル、Lレベルの順番で行われる。まず、企業XのDレベルの得点率は90%であり、Dレベルの閾値79%を上回っているため、Dレベルの判定はクリアとなる。次に、Aレベルの判定に進む。Aレベルの得点率は85%であり、Aレベルの閾値79%を上回っているため、Aレベルもクリアとなり、Mレベルの判定に進む。Mレベルの得点率は50%であり、Mレベルの閾値79%以下であるため、Mレベルはクリアできないことが分かる。このとき、図表1の一番右の列(Score band=総合スコア)を見ると、Mレベルの得点率が45-79%の場合、「B」であることが分かる。以上のプロセスの結果、企業Xの水セキュリティの総合スコアは「B」と判定される。
以上の例からも分かるとおり、下位のレベルの得点率が閾値をクリアできない場合、上位のレベルの得点率の多寡に関わらずに総合スコアが決定される仕組みとなっている(2023年と同様の仕組み)。

2. テーマ横断型質問への回答はどのように採点されるか

上記にて、「質問書は統合されたが、スコアリングは2023年と変わらず、気候変動、フォレスト、水セキュリティの各環境テーマに対して別々に行われる。」と述べた。では、気候変動、フォレスト、水セキュリティの3テーマ共通質問のように複数テーマ横断型質問となっている場合、どのようにしてテーマ別に採点されるのだろうか。細かい点を省くと、以下の2パターンに大別される。

2-1.回答欄がテーマ別に分かれるパターン

まず、テーマ横断型質問であるものの、テーマごとに行を分けて回答するパターンである。このパターンの場合、気候変動について回答した行、フォレストについて回答した行、水セキュリティについて回答した行が、それぞれ気候変動の採点対象、フォレストの採点対象、水セキュリティの採点対象となる。


質問3.1 報告年に貴組織に重大な影響を及ぼした、または将来的に貴組織に重大な影響を及ぼすと考えられる何らかの環境リスクを特定していますか。

環境課題(環境テーマ) 重大な環境リスクの特定 ・・・ 説明してください
気候変動 選択肢から選択* ・・・ 文章で記入
フォレスト 選択肢から選択* ・・・ 文章で記入
水セキュリティ 選択肢から選択* ・・・ 文章で記入
プラスチック 選択肢から選択* ・・・ 文章で記入
生物多様性 選択肢から選択* ・・・ 文章で記入

*選択肢:「はい、直接操業とバリューチェーン上流/下流の両方において特定しています」、「はい、直接操業のみにおいて特定しています」、「はい、バリューチェーンの上流/下流のみにおいて特定しています」、「いいえ、特定していません」


図表2:回答欄がテーマ別に分かれるパターンの例
(出所:CDPコーポレート完全版質問書 日本語仮訳 ver.1.1)

上記の図表2はその1つの例である。質問3.1は、テーマ横断型の質問であり、重大な環境リスクの特定をしているかどうかを全ての環境テーマについて回答企業に問う内容だが、回答する行は環境テーマごとに分かれており、各テーマの採点は対応している回答行に対して別々に行われる。

2-2.回答欄がテーマ別に分かれないパターン

2つ目は、テーマ横断型質問であり、かつ、テーマ別に分けずに統合的な回答を記載するパターンである。この場合、気候変動の採点、フォレストの採点、水セキュリティの採点に使用される回答内容は同じものとなる。


質問2.2.7 環境への依存、影響、リスク、機会間の相互関係を評価していますか。

環境への依存、影響、リスク、機会間の
相互関係の評価の有無
相互関係の評価方法
についての説明

・・・

・・・
選択肢から選択* 文章で記入 ・・・ ・・・

*選択肢:「はい、評価しています」、「いいえ、評価していません」


図表3:回答欄がテーマ別に分かれていないパターンの例
(出所:CDPコーポレート完全版質問書 日本語仮訳 ver.1.1)

上記の図表3はその1つの例である。質問2.2.7は、テーマ横断型の質問であり、各環境テーマ同士や各環境テーマ内の環境関連課題(環境への依存、環境への影響、環境関連リスク、環境関連機会)が互いにどのように関係しているか、それを回答企業がどのように評価・分析しているかを問う内容となっている。全てのテーマに対する包括的な評価・分析を求めている背景から、回答欄はテーマごとに分かれていない。
質問2.2.7の場合、気候変動、フォレスト、水セキュリティのスコアリング基準は、全て同じ内容になっている(図表4)。表の全ての回答欄を入力して、かつ、一番左の列(「環境への依存、影響、リスク、機会間の相互関係の評価の有無」)に「はい、評価しています」と回答している場合、結果的に、3つの環境テーマ全てに関して、Dレベルで 3点、Aレベルで 1点、Mレベルで1点が獲得できる。

  気候変動 フォレスト 水セキュリティ
Dレベル基準 回答が入力された欄の数と回答欄の総数の比率に応じて得点が得られる(3点満点) 同左 同左
Aレベル基準 表の全ての回答欄が入力されている場合、1点獲得 同左 同左
Mレベル基準 Aレベルが満点で、かつ、「環境への依存、影響、リスク、機会間の相互関係の評価の有無」の列に「はい、評価しています」と回答している場合、1点獲得 同左 同左
Lレベル基準 採点対象外 同左 同左

図表4:質問2.2.7における、各環境テーマ・各レベル別のスコアリング基準
(出所:CDP Full Corporate Scoring Methodology – Climate Change ver.1.0, CDP Full Corporate Scoring Methodology – Forests ver.1.0, CDP Full Corporate Scoring Methodology – Water security ver.1.0)

3. CDP2023のスコアリング基準との主な違い

CDP2023スコアリング基準との主な違いとしては、以下の2点が挙げられる。
第一に、CDP2024スコアリング基準は前年と比べて、文章で記述した内容に対する採点項目の割合が減った。例えば、CDP2023スコアリング基準では、特定した重大な気候関連リスクを文章で説明する回答欄に関し、なぜそれが回答企業にとって重大なリスクなのかを自社固有の事情を交えながら説明できている場合にMレベルの得点が獲得できる採点項目があった。今年も同様の回答欄は設けられているものの、この採点項目は削除された。記述形式の回答に対する採点項目の割合が減った分、相対的に選択肢形式の回答に対する採点項目の割合が増えたとも言える。
第二に、フォレストの総合スコアが、コモディティ別ではなく単一となったことである。2023年までは、木材の総合スコア「B」、パーム油の総合スコア「A-」というように、回答したコモディティごとに総合スコアが与えられる形式であった。CDP2024スコアリング基準は、コモディティ横断型のスコア(General score)とコモディティ別のスコアの集計値(Combined commodity score)を組み合わせて、フォレスト全体のスコア(Single forests score)として、Dレベル・Aレベル・Mレベル・Lレベルの各得点率が決定する形式に変更されていると考えられる(図表5参照)。これらの得点率に応じて、上記1. CDP2024スコアリング基準の全体像で説明した仕組みにより、フォレストの総合スコアが決定する方式となっている。

CDP2024におけるフォレストのスコアリングの構造

図表5 CDP2024におけるフォレストのスコアリングの構造
(出所:CDP Full Corporate Scoring Introduction 2024 ver.1.0)

4. まとめ

CDP2024の総合スコアの決定方法はCDP2023以前と同様に、Dレベル・Aレベル・Mレベル・Lレベルの得点率に応じて決まる仕組みとなっている。CDP2024から導入された環境テーマ横断型の質問は、環境テーマ別の回答を入力するパターンとテーマ別ではなく共通の回答を入力するパターンに分けられるが、いずれも気候変動・水セキュリティ・フォレストのそれぞれのスコアリング基準に照らして別々に採点される。
また、CDP2023からの主な変更点は、記述形式の回答に対する採点項目の割合が減ったこと、及びフォレストの総合スコアがコモディティ別ではなく単一となったことである。

【参考資料】
CDP Full Corporate Scoring Introduction 2024 ver.1.0(CDP、2024年6月14日)
CDPコーポレート完全版質問書 日本語仮訳 ver.1.1(CDP、2024年5月16日)
CDP Full Corporate Scoring Methodology – Climate Change ver.1.0(CDP、2024年5月22日)
CDP Full Corporate Scoring Methodology – Forests ver.1.0(CDP、2024年5月22日)
CDP Full Corporate Scoring Methodology – Water security ver.1.0(CDP、2024年5月22日)

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