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リサイクル表示とグリーンウォッシュ規制:表示根拠の管理体制構築

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リサイクル表示を行う企業は、2026年に日本の環境表示ガイドライン改定とEUのEmpCo(ECGT)適用開始が重なる局面を迎えている。日本では、景品表示法に基づき、根拠のない環境表示に対して事業者に是正を求める行政処分(措置命令)が出される仕組みがあり、生分解性プラスチックの表示では2022年に実際に10社がこの措置命令を受けた。本稿では、リサイクル材の使用や資源循環への貢献を謳う表示(以下、リサイクル表示)について、日本の環境表示ガイドラインとEUのEmpCo(ECGT)という構造の異なる二つの制度が、独立に同じ論点へ収斂していく様を整理し、根拠データを管理する社内体制の設計まで解説する。

リサイクル表示とグリーンウォッシュ規制の収斂

リサイクル表示は、配合比率、環境優位性、資源循環への貢献度といった定量的・比較的な主張を伴いやすい。この定量性・比較可能性という特性は、日本の環境表示ガイドラインとEUのEmpCo(ECGT)がともに問題視する表示類型と直接重なり、両制度の適用時期は2026年に集中している。

環境省およびEUR-Lexの資料に基づく、2025年6月から2026年9月までの日本(環境表示ガイドライン改定)およびEU(EmpCo指令)における環境表示規制のタイムラインを示した年表図
図1:2026年における日本・EUの環境表示規制タイムライン

日本の環境表示ガイドラインとEUのEmpCo(ECGT)は、法律としての位置づけも規制の手法もまったく異なるが、両者は、リサイクル材の配合比率のような数値表示をどう検証可能な形で示すか、という同じ技術的な論点に独立して行き着いている。

観点日本(景品表示法・環境表示ガイドライン)EU(EmpCo/指令2024/825)
法的性質景品表示法(法律)に加え、法的拘束力のない環境表示ガイドライン(指針)UCPD(不公正取引慣行指令)を改正する形で法制化された確定済みの指令
規制方式事後摘発型(措置命令・課徴金)5つの行為を列挙し、無条件に不公正取引とみなす
根拠資料の扱い資料を提出しない、または合理的根拠と認められない場合は優良誤認表示(実際より品質や内容が優れていると誤認させる表示)とみなす規定あり加盟国が指定する執行機関が監視・摘発
適用開始・実績景品表示法は制定時から運用されており、2022年には生分解性表示で措置命令の実績がある(環境表示ガイドライン自体は令和8年3月に改定)2026年9月27日に事業者への適用開始

温室効果ガス削減の表示と異なり、リサイクル表示は製品にどれだけリサイクル材が含まれるか、という一見明快な数値を扱う。リサイクル材の配合比率は、原料調達のロットによって実際の含有量が変動することがあり、継続的な確認が必要になる。加えてマスバランス方式を用いる場合、表示される数値は特定の製品に物理的に含まれる量ではなく、生産量全体でみた配分上の数値になるため、消費者が表示から連想するイメージと数値の意味がそもそも異なる。日本の改定ガイドラインは比較主張にLCA評価や数値データの裏付けを求め、EUのEmpCo(ECGT)は認証に基づかないサステナビリティラベルを禁止している。いずれも、こうした数値表示の分かりにくさに対応したものである。

環境省『環境表示ガイドライン』改定とリサイクル表示への影響

改定ガイドラインはISO・JIS Q14021の要求事項を5つの基本項目に再整理しており、リサイクル材の配合比率表示や環境優位性の比較主張は、この5項目に沿った説明が求められる。5項目とは、曖昧な表現や根拠のない環境主張を行わないこと、環境主張の内容に説明文を付すこと、製品のライフサイクル全体を考慮すること、検証に必要なデータおよび評価方法へのアクセスを確保すること、比較主張をLCA評価や数値データに基づいて行うことである。
各項目の逐語的な要件は、環境省ガイドライン原文を参照されたい。リサイクル表示との関係では、ライフサイクル全体の考慮と比較主張の数値的根拠がとくに重なりが大きく、次章のマスバランス方式、および5章の実務チェックポイントに直結する。

マスバランス方式におけるリサイクル材の論点

リサイクル材の配合比率をマスバランス方式(物質収支方式)で算定している場合、実際の配合率と表示上の数値が一致しない可能性を明示した説明が改定ガイドラインで求められている。
マスバランス方式は、リサイクル原料とバージン原料を製造工程で混合し、投入量と産出量の収支計算によって特定製品への配合比率を割り当てる手法である。ISCC PLUSなどの国際認証制度でも採用されている一方、消費者が製品から連想する、製品に直接含まれるリサイクル材の量とは一致しない場合がある。

環境省資料等に基づく、リサイクル材の配合表示における物理的分離型(セグリゲーション)とマスバランス方式(物質収支方式)の製造工程および表示方法の違いを示した対比構造図
図2:リサイクル材の配合表示における物理的分離型とマスバランス方式の違い

環境省は2024年9月26日、マスバランス方式の考え方をまとめた文書『プラスチック資源循環におけるマスバランス方式の活用に関する基本的な考え方』を公表し、環境効果の把握、環境価値の適正な管理、適切な表示・コミュニケーションという3つの要素を満たすことを事業者に求めている。この3要素は、広告やパッケージの文章をどう書くかではなく、社内でどのような業務プロセスを回すかへの要求であり、リサイクル表示の中でも特に問題を指摘されやすい部分である。

EUのEmpCo(ECGT)が禁止する5つの行為のひとつは、 独立した第三者認証スキームに基づかないサステナビリティラベルであり、マスバランス方式による配合表示についても、ISCC PLUSのような国際認証を取得しているかどうかが、この要件を満たす上での実務上の分かれ目になる。自社内の算定ロジックだけで配分比率を示す場合と、独立した認証機関による検証を経た数値として示す場合とでは、規制に抵触するリスクの大きさが異なる。

EUのEmpCo(ECGT)がUCPD改正で追加した5つの禁止行為とグリーンクレーム指令との違い

EmpCo(ECGT)は不公正取引慣行指令(UCPD)を改正し、環境・社会・循環性に関する表示のうち5つの行為を、いかなる場合も不公正取引とみなす形で禁止する。この規制は、2025年に撤回方針が示されたグリーンクレーム指令とは別の、確定済みのものである。
禁止される5つの行為は、認証制度や公的機関の裏付けがない自主的な持続可能性ラベルの表示、優れた環境性能を実証できないままの一般的で曖昧な環境性能の主張、製品や事業の特定の側面にしか関係しないのに全体について行う環境主張、温室効果ガスの排出の相殺のみに基づく環境への中立性や削減効果の主張、そして製品分野内の全ての製品に法律で課されている要件を際立った特徴として提示することである。このうち特定の側面にしか関係しない主張を全体に広げる行為は、リサイクル表示に特に関係が深い。製品の一部にのみリサイクル材が使われているにもかかわらず、製品全体があたかも環境配慮型であるかのように訴求する行為を指しており、日本のガイドラインが定める製品のライフサイクル全体の考慮という要件とも重なる。

日本の5項目とEmpCoの禁止行為は、法制度の構造は異なるものの、実務上は対応関係が深い。曖昧な表現や根拠のない環境主張の禁止は、EUの一般的で曖昧な環境性能の主張の禁止に対応する。ライフサイクル全体の考慮は、一部の側面のみに関係する主張の全体化の禁止に、比較主張の数値的根拠は、オフセットのみに基づく中立性主張の禁止に、説明文の付記とデータへのアクセス確保は、認証に基づかないラベルの禁止に、各々対応する。法律で課された要件を際立った特徴として提示する行為には、日本の5項目に直接対応する規定はない。

欧州委員会は2025年6月、より踏み込んだ内容を含むグリーンクレーム指令案の撤回方針を表明し、2026年に入ってからも結論は示されていない。実務ではこの指令とEmpCo(ECGT)が同一視されることがあるが、2026年9月27日から適用されるのは確定済みのEmpCo(ECGT)のみである。EU向けにリサイクル製品を展開する企業は、確定しているEmpCo(ECGT)の要求事項を優先して確認することをお勧めする。

リサイクル材の使用をどう適法に表示するか:実務チェックポイント

リサイクル材使用の表示で問われるのは表現の巧拙ではなく、根拠データが実際の使用条件と整合しているかどうかであり、この点は生分解性プラスチックをめぐる過去の措置命令事例からも読み取れる。
消費者庁は2022年12月、「土に返り分解され、環境に優しい」といった生分解性プラスチック製品の表示について、10社に景品表示法(優良誤認表示)に基づく措置命令を出した。各社は表示の根拠となるデータを提出したものの、その内容が生ゴミを高温発酵させる産業用コンポストなど特殊な環境での実験結果であり、一般消費者が想定する自然環境下での分解を裏付けるものではなかった点が問題視された。この事例は生分解性表示に関するものであり、リサイクル材表示に直接適用される先例ではないが、データを保有していても、実際の使用条件と乖離していれば合理的根拠と認められないという判断の枠組みは、リサイクル材使用の訴求にも当てはまりうる。

確認すべき点は、資源循環の実態、配合率の分母、算定条件、第三者認証の4つに整理できる。資源循環の実態では、原料調達からリサイクル材の投入までを担う仕組みが実際に設計・運用されているかを確認する。配合率の分母では、表示する比率が製品全体の重量に対するものか、特定の部材のみに対するものかを明確にする。環境省ガイドラインは、製品重量の1%にも満たないリサイクル部品の使用を誇張して主張するケースを不適切としている。算定条件では、年間平均値か特定ロットの実績値かを示し、流通後の実態との乖離を防ぐ。第三者認証では、マスバランス方式を用いる場合に自社算定のみに依拠せず、ISCC PLUS等の国際認証で裏付ける。第三者認証の取得は、EmpCoが禁止する認証に基づかないサステナビリティラベルへの対応にもなる。

根拠データを管理する社内体制:3つの類型と設計のポイント

個々の表示の書き方以前に、根拠を管理する仕組みの有無が対応の分かれ目になる。現場で共通して見られる課題は、担当者交代で算定根拠が再現できないこと、マスバランス方式の配分ロジックが更新・保管されていないこと、比較優位性の主張がLCA・CFPと接続していないことの3類型に集約される。
環境省が示す3要素(環境効果の把握、環境価値の適正な管理、適切な表示・コミュニケーション)を運用に落とし込むと、対応策は次の3点に整理できる。

ポイント1:表示レビューの役割分担を三段階で明文化する

マーケティング部門が広告やパッケージの文章を作成し、サステナビリティ部門が算定根拠を確認し、法務部門が景品表示法・EU規則双方への該当性を最終確認する。この役割分担は、策定中のISO 59001が示す方向性も参考にしつつ制度設計すると、担当者が変わっても運用が継続しやすくなる。

ポイント2:更新サイクルを規制改定ではなく原料調達サイクルに合わせる

マスバランス方式による配分比率は原料調達のロットが切り替わるたびに変動しうるため、原料調達計画・生産計画のサイクルに合わせて算定根拠を更新する頻度を設計する必要がある。

ポイント3:LCA・CFP算定やGCPと表示根拠データベースを接続する

比較優位性の主張やリサイクル材の環境価値は、法務向けには守りの証跡であると同時に、開示資料では攻めの実績データにもなる。定量指標管理と表示根拠のデータソースを分けて運用すると、同じ数値について部門ごとに異なる説明をしてしまうリスクが生じる。

まとめ

リサイクル表示は、配合比率や環境優位性という定量的な主張を伴いやすい構造的な理由から、日本とEUのグリーンウォッシュ規制が重なる位置にある。日本の環境表示ガイドラインとEUのEmpCo(ECGT)は適用時期も要求内容も異なるが、根拠データを管理する体制がなければ、どちらの基準にも対応できない点は共通している。個々の表示の妥当性は専門家に確認しつつ、まず自社がどのデータを、どの頻度で、誰が管理しているかを棚卸しすることが、規制対応の出発点になる。

参考資料

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ブライトイノベーションでは、方針・戦略策定から、目標・KPIの設定、ISO 59000シリーズやGCPへの対応、広域認定やISCC PLUS認証の取得まで、企業のフェーズと現場の実態に合わせた実務化・情報開示を一貫して支援しています。

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この記事の監修者

清水 貴代
コンサルタント
清水 貴代 Takayo Shimizu
包装業界において、リサイクルを軸としたサステナビリティ戦略の企画・開発に従事。現在は、循環型社会の実現をテーマに、企業のサーキュラーエコノミーモデル構築を支援。
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